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03 これがホントのざまぁだポン
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婚約破棄から一週間――
わたしはテトラネの森に小屋を建て、ポンポコリーナだけでなく、彼の友達の動物たちと一緒に暮らしていた。
作戦は大成功だった。
あの翌日に戻ってきたポンポコリーナに聞いたところによると、スティーブはわたしと別れるまえも別れたあとも、毎晩のように彼の玉袋を求めてきたらしい。
「皮が擦り切れるかと思ったよ。
あいつは森の猿よりずっと知能が低いみたいだ」
わたしなんかとは比べものにならない美女が手に入ったのだから、無理もないとは思うけれど。
あまりの節操のなさに苦笑せざるをえない。
「で、さよならを告げたとき、あいつどんな顔してた?
聞かせて聞かせて」
「ぽかんとして、わけがわからないって顔してたよ。
おいらがこの姿に戻ってみせたら、『コリーナはどこへいった?』なんて慌てて屋敷じゅうを探して回ってるんだ。
たぶん馬鹿なんじゃないかな」
ふたりで大笑いする。
これまでさんざん嫌な思いをさせられてきたのだから、このくらいは許されるだろう。
「それで、あなたがあげた宝石は?
どうせ偽物だったんでしょう?」
「馬の糞だよ。
部屋に敷き詰めたり舌で舐めたりしてたから、おいらもう見てて気持ち悪くって。
そろそろ糞に戻ってるころだから、掃除が大変だろうと思うよ」
「気の毒にね」
ひと晩、思いっきり笑って、そしてわたしはスティーブのことを頭から追いやった。
これからはポンポコリーナと、そして森の仲間たちと幸せに暮らしてゆくのだから。
そして一週間が経った今日。
朝から小屋の扉が激しく叩かれる音で起こされると、そこには見る影もなくげっそりしたスティーブがいた。
「や、やあ、キャロル。
森での暮らしはどうかな?
元気にしているかい?」
「おかげさまでね。
じゃあ、ごきげんよう」
「ま、待ってくれ!」
すぐに扉を閉めようとするわたしに、スティーブはしがみついてきた。
着ている服もなんだか臭う。
もしかして、馬の糞がまた宝石に戻るかもしれないと思って大事にしているのかもしれない。
「へ、へへ……。
その……ぼくが悪かった。
戻ってきてくれないか」
「は? 絶対いや。
お金も森も返さないからあしからず」
「この……!」
わたしがすげなくあしらうと、スティーブはかつての本性をあらわした。
「おまえなんかな、コリーナに比べると女とも思えないようなブサイクなんだよ!
夜だって全然よくなかった。
ぼくのコリーナの身体は最高で、いつもぼくのモノを温かく包み込んでくれてたんだ」
「あらそう。
……どう思うポンポコリーナ?」
部屋のなかを振り返って、わたしはにやにやして眺めているポンポコリーナを呼んだ。
スティーブが目をひん剥いて部屋を覗き込む。
その股間は、コリーナとの熱い夜を思い出したのか、ギンギンにみなぎっているのが服の上からでもわかった。
「コリーナかい?
そこにコリーナがいるってのか?」
「ああ、おいらがポンポコリーナさ」
「え?」
くるりんぱっ、とコリーナに変身する。
「おお、コリーナ! 愛してる!」
「気持ち悪いな~。
おいらは愛してなんかないやい。
そんなにおいらのココ、よかったのか?」
コリーナの姿でドレスをたくし上げ、股の部分をあらわにする。
「おおお、そうさ、最高だった。
コリーナ、帰ってきておくれ」
「これでもかい?」
股のところが玉袋に戻った。
豆狸の、身体と比べて大きすぎる、座布団のような玉袋に。
「へ……?
コリーナ、それはなんだ?」
「玉袋。
あんたがちんぽこを出し入れしていたのは、この玉袋のしわの隙間さ。
……そらよっと」
くるりんぱっ、と豆狸に戻る。
それを見て、ようやくスティーブも理解したようだ。
股間の膨らみはすっかり萎え、がっくりと肩を落として無言で去っていった。
「これにてぇ、あ、一件落着ぅ~」
「それなに? ニホンの文化?」
わたしも真似て口をへの字にし、ポンポコリーナと一緒に見栄を切った。
風の噂では、宝石で気が大きくなってわたしに慰謝料を渡しすぎたスティーブは、その後、没落したらしい。
ショックを受けた股間のモノも二度と動くことはなく、子孫を残すことも叶わなかったそうだ。
(終)
わたしはテトラネの森に小屋を建て、ポンポコリーナだけでなく、彼の友達の動物たちと一緒に暮らしていた。
作戦は大成功だった。
あの翌日に戻ってきたポンポコリーナに聞いたところによると、スティーブはわたしと別れるまえも別れたあとも、毎晩のように彼の玉袋を求めてきたらしい。
「皮が擦り切れるかと思ったよ。
あいつは森の猿よりずっと知能が低いみたいだ」
わたしなんかとは比べものにならない美女が手に入ったのだから、無理もないとは思うけれど。
あまりの節操のなさに苦笑せざるをえない。
「で、さよならを告げたとき、あいつどんな顔してた?
聞かせて聞かせて」
「ぽかんとして、わけがわからないって顔してたよ。
おいらがこの姿に戻ってみせたら、『コリーナはどこへいった?』なんて慌てて屋敷じゅうを探して回ってるんだ。
たぶん馬鹿なんじゃないかな」
ふたりで大笑いする。
これまでさんざん嫌な思いをさせられてきたのだから、このくらいは許されるだろう。
「それで、あなたがあげた宝石は?
どうせ偽物だったんでしょう?」
「馬の糞だよ。
部屋に敷き詰めたり舌で舐めたりしてたから、おいらもう見てて気持ち悪くって。
そろそろ糞に戻ってるころだから、掃除が大変だろうと思うよ」
「気の毒にね」
ひと晩、思いっきり笑って、そしてわたしはスティーブのことを頭から追いやった。
これからはポンポコリーナと、そして森の仲間たちと幸せに暮らしてゆくのだから。
そして一週間が経った今日。
朝から小屋の扉が激しく叩かれる音で起こされると、そこには見る影もなくげっそりしたスティーブがいた。
「や、やあ、キャロル。
森での暮らしはどうかな?
元気にしているかい?」
「おかげさまでね。
じゃあ、ごきげんよう」
「ま、待ってくれ!」
すぐに扉を閉めようとするわたしに、スティーブはしがみついてきた。
着ている服もなんだか臭う。
もしかして、馬の糞がまた宝石に戻るかもしれないと思って大事にしているのかもしれない。
「へ、へへ……。
その……ぼくが悪かった。
戻ってきてくれないか」
「は? 絶対いや。
お金も森も返さないからあしからず」
「この……!」
わたしがすげなくあしらうと、スティーブはかつての本性をあらわした。
「おまえなんかな、コリーナに比べると女とも思えないようなブサイクなんだよ!
夜だって全然よくなかった。
ぼくのコリーナの身体は最高で、いつもぼくのモノを温かく包み込んでくれてたんだ」
「あらそう。
……どう思うポンポコリーナ?」
部屋のなかを振り返って、わたしはにやにやして眺めているポンポコリーナを呼んだ。
スティーブが目をひん剥いて部屋を覗き込む。
その股間は、コリーナとの熱い夜を思い出したのか、ギンギンにみなぎっているのが服の上からでもわかった。
「コリーナかい?
そこにコリーナがいるってのか?」
「ああ、おいらがポンポコリーナさ」
「え?」
くるりんぱっ、とコリーナに変身する。
「おお、コリーナ! 愛してる!」
「気持ち悪いな~。
おいらは愛してなんかないやい。
そんなにおいらのココ、よかったのか?」
コリーナの姿でドレスをたくし上げ、股の部分をあらわにする。
「おおお、そうさ、最高だった。
コリーナ、帰ってきておくれ」
「これでもかい?」
股のところが玉袋に戻った。
豆狸の、身体と比べて大きすぎる、座布団のような玉袋に。
「へ……?
コリーナ、それはなんだ?」
「玉袋。
あんたがちんぽこを出し入れしていたのは、この玉袋のしわの隙間さ。
……そらよっと」
くるりんぱっ、と豆狸に戻る。
それを見て、ようやくスティーブも理解したようだ。
股間の膨らみはすっかり萎え、がっくりと肩を落として無言で去っていった。
「これにてぇ、あ、一件落着ぅ~」
「それなに? ニホンの文化?」
わたしも真似て口をへの字にし、ポンポコリーナと一緒に見栄を切った。
風の噂では、宝石で気が大きくなってわたしに慰謝料を渡しすぎたスティーブは、その後、没落したらしい。
ショックを受けた股間のモノも二度と動くことはなく、子孫を残すことも叶わなかったそうだ。
(終)
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ぽんぽこタグ…だと…(゚o゚;;
婚約破棄、ざまぁ、もふもふ…定番のはずなんだけどな?
とにかくポンポコリーナと楽しそうでほっこりはした(*´꒳`*)
ありがとうございます〜。
他のひとにも書いてほしくてタグにしてみましたw
書くのが楽しいだけなので、流行りませんね……。