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もう婚約なんて……
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「今日は婚約破棄記念日! ぱーっとやろ?」
わたしは居酒屋で笑っていました。
向かいの席に座っているのは、婚約時代からずっと相談に乗ってくれていた親友です。
「あなた、毎月それ言ってるじゃない。月記念日ってやつなの? 身体だいじょうぶ?」
「毎日飲んでるから慣れちゃった」
「それほんとダメよ」
わたしは、心配してくれるのが嬉しくて、ついつい彼女に甘えてしまいます。
今も、真剣な顔でわたしに向かって、
「心のために身体をぼろぼろにしてると、結局また心もつらくなるわよ」
なんて本気で忠告してくれているし……。
わたしにはもったいないくらいの友だちです。
ほんと、わたしにはもったいない。
彼女がわたしと同じ、独身のままでいるのが不思議でなりません。
「ねえ、なんで結婚しないの? モテないわけないよね?」
「え、あたし? あたしはしないよ~」
モテないわけない、は否定しませんでした。
酔ったわたしがさらに絡むと、彼女は、
「そりゃね、親密になったりはするよ? でもなんか、『この人、あたしとじゃなくても生きていけるな』って思うと結婚なんて考えられなくなるんだ」
「そんなもの?」
「んー、あたしの場合の話。あっ、ダメンズが好きってわけじゃないのよ? ちゃんとした人が好きなのにこれだから、相手が見つからないわけ」
わたしは酔った頭で、大変だなーと思いました。
そこまで深く物ごとを考えたことはありません。
わたしは男の人に「好きだ」と言われたら、なんだかぽ~っとなってしまい、わたしじゃなくてもいいなんてことは絶対に思いつかないでしょう。
「あ、わたしと友だちでいてくれるのも、わたしがあなたなしでは生きられないから?」
「うわ、そうなん?」
「うん、いないと死んじゃう!」
言って、ジョッキを持つ彼女の手を握ります。
彼女もわたしも、にこにこ。
もちろんじゃれあっているだけですが、いてくれて嬉しいのは本当のことです。
「あんたと初めて会ったときは、完っぺきに『箱入り娘!』って感じだったけど、最近だいぶいい感じに崩れてきたわよね」
「体型のこと?」
「そうかそうか、体型も崩れてきたか。これはますますあたし好みになってきたぞ」
「やだー」
なんだか幸せを感じてしまいました。
思えば、婚約していたときはずっと「ちゃんとしなきゃ」と気を張っていて、わたしがわたしじゃなくなっていたのかもしれません。
だから、彼の浮気が発覚したときも、心のどこかで「これで楽になれる」と感じていたのかも……。
半年経ってもまだつらいけど。
わたしがわたしとして生きているだけ、マシなのかもしれません。
「あっ、着信だよ?」
彼女のスマホが震えているのを教えました。
「あー、べつにいいやつ。迷惑電話的な」
「そっか。結構あるもんね~」
一瞬見えたのは彼の名前だったような気がしましたが、業者の人がたまたま似た名前だったのでしょう。
わたしは、彼女とこうやって楽しく飲んでいるときが、いちばん幸せです。
わたしは居酒屋で笑っていました。
向かいの席に座っているのは、婚約時代からずっと相談に乗ってくれていた親友です。
「あなた、毎月それ言ってるじゃない。月記念日ってやつなの? 身体だいじょうぶ?」
「毎日飲んでるから慣れちゃった」
「それほんとダメよ」
わたしは、心配してくれるのが嬉しくて、ついつい彼女に甘えてしまいます。
今も、真剣な顔でわたしに向かって、
「心のために身体をぼろぼろにしてると、結局また心もつらくなるわよ」
なんて本気で忠告してくれているし……。
わたしにはもったいないくらいの友だちです。
ほんと、わたしにはもったいない。
彼女がわたしと同じ、独身のままでいるのが不思議でなりません。
「ねえ、なんで結婚しないの? モテないわけないよね?」
「え、あたし? あたしはしないよ~」
モテないわけない、は否定しませんでした。
酔ったわたしがさらに絡むと、彼女は、
「そりゃね、親密になったりはするよ? でもなんか、『この人、あたしとじゃなくても生きていけるな』って思うと結婚なんて考えられなくなるんだ」
「そんなもの?」
「んー、あたしの場合の話。あっ、ダメンズが好きってわけじゃないのよ? ちゃんとした人が好きなのにこれだから、相手が見つからないわけ」
わたしは酔った頭で、大変だなーと思いました。
そこまで深く物ごとを考えたことはありません。
わたしは男の人に「好きだ」と言われたら、なんだかぽ~っとなってしまい、わたしじゃなくてもいいなんてことは絶対に思いつかないでしょう。
「あ、わたしと友だちでいてくれるのも、わたしがあなたなしでは生きられないから?」
「うわ、そうなん?」
「うん、いないと死んじゃう!」
言って、ジョッキを持つ彼女の手を握ります。
彼女もわたしも、にこにこ。
もちろんじゃれあっているだけですが、いてくれて嬉しいのは本当のことです。
「あんたと初めて会ったときは、完っぺきに『箱入り娘!』って感じだったけど、最近だいぶいい感じに崩れてきたわよね」
「体型のこと?」
「そうかそうか、体型も崩れてきたか。これはますますあたし好みになってきたぞ」
「やだー」
なんだか幸せを感じてしまいました。
思えば、婚約していたときはずっと「ちゃんとしなきゃ」と気を張っていて、わたしがわたしじゃなくなっていたのかもしれません。
だから、彼の浮気が発覚したときも、心のどこかで「これで楽になれる」と感じていたのかも……。
半年経ってもまだつらいけど。
わたしがわたしとして生きているだけ、マシなのかもしれません。
「あっ、着信だよ?」
彼女のスマホが震えているのを教えました。
「あー、べつにいいやつ。迷惑電話的な」
「そっか。結構あるもんね~」
一瞬見えたのは彼の名前だったような気がしましたが、業者の人がたまたま似た名前だったのでしょう。
わたしは、彼女とこうやって楽しく飲んでいるときが、いちばん幸せです。
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