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第28話:めまぐるしくもない三日間
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全員が転生者の世界――
その衝撃で思わず脱線してしまったが、話をプリハピ会に戻す必要がある。
わたしはみんなの転生トークが落ち着いた頃合いを見計らって、エスティークに会議の目的を告げた。
「じゃあ、みんなでプリンスちゃんの幸せを考えてくれていたの?」
「はい、この国の王子ですから」
「へえ~。
コトダマ先生もそうなのかしら?」
エスティークのじろりとした視線に、コトダマは「教師だから当然だ」と心にもないことを言う。
「うふふ、ありえないわねえ。
まあでも……うんうん、なるほど。
モブリンちゃん」
「あっ、は……はい!」
「さっきも言ったように、ワタシはプリンスちゃんにとって無害な婚約相手なら誰でもいいの。
あなたみたいな平凡娘でもいいかと思ったけど、よく考えたら、転生して普通を願うとか、相当な激ヤバ物件だわ。
利害は一致したから、ビューティを推しましょう」
「ありがとうございます!」
激ヤバ扱いされてお礼を言うわたし。
でも、いいんだ。
プリンスとの婚約を回避できるなら、今は激ヤバも甘んじて受け入れよう。
「それじゃあ、プリンス先輩に、ビューティ先輩を選ぶように言ってもらえますか?」
「それだと弱いから、あなたに対してだけ、プリンスちゃんに使っているワタシのスキルを無効化するわ。
今は『なんだこの普通な子は!』という感動が持続しているけど、すぐに見慣れて飽きるから。
本当はあの子、すごく飽きっぽいの」
つまり、普通に飽きられるということだ。
ひどいことを言われているような気もするが、モブならこれが本来の姿。
忘れてはいけない、モブ道の求道者だということを。
――で、えーと、あれ?
「もしかしてこれで、作戦完了?」
エスティークのスキルと性格はアレだったが、利害が一致したおかげで、あっけなく話がついてしまった。
拍子抜けしたわたしに、ターコが言う。
「ほとんど完了だが、ビューティ先輩のほうにも根回しが必要だな。
頭が……その、あまりよろしくないと言われているにしても、当日になって嫌だと言われても困るわけだし」
「あー、そうだよね」
頭がよろしくないも、先輩に対しては充分に失礼な言葉である。
が、ビューティをよく知るエスティークは言う。
「あの子のほうに根回しなんて必要ないと思うわ。
嫌だなんて言うわけがない。
毎日褒めてもらえて居心地のいいプリンスちゃんのそばを、自分から離れることなんてないんだから。
下手に会うと、あんたたちのほうがあの子に惚れて面倒なことになる」
「そうなんですか」
と、いうことは。
「本当にこれで作戦完了ってことね」
「はい、お嬢様。
おめでとうございます」
マッスリーヌがようやく会議に戻ってきた。
いや、いたのはいたのだけど、エスティークが登場してからというもの、彼女のスキルに取り込まれないために《マッスル・ヒーリング》に専念していたのだ。
輝く汗をほとばしらせて、落ち着いたいい顔をしている。
そんなわたしたちの喜びを目にして、エスティークが皮肉っぽい笑顔で言う。
「プリンスちゃんの幸せを願っている、ねえ……。
まあ、どうしてそういう名目になったかは想像つくから、訊かないけど。
当日はあんまり露骨にはしゃがないようにしなさい。
プリンスちゃんがおかしいと思ったら、それでおしまいなんだから」
「はーい」
わたしたちは下級生らしく素直な返事をして、これで会議は終了ということになった。
しかし、
「婚約パーティは金曜日の放課後だから、あと丸々三日もあるんだよね。
こんなすぐに話がまとまるとは思ってなかったから、逆に緊張しちゃう。
なにかボロが出ないかとか、それこそビューティ先輩と話すなんて余計なことしちゃわないかとか」
ついこぼしたわたしの言葉を、リリィが聞き逃さなかった。
「あ、モブリンもそう思う?
私もちょうど、『じれったいな』と思っていたところ。
せっかく話をつけたエスティーク先輩の心が変わらないともかぎらないし、飛ばしちゃおう」
「ちょっ、リリィ……!」
慎重なくせに決断は早い。
慌てて止めようとしたときには、彼女はすでに《スキップ・オブ・ザ・ワールド》を発動させていた。
その衝撃で思わず脱線してしまったが、話をプリハピ会に戻す必要がある。
わたしはみんなの転生トークが落ち着いた頃合いを見計らって、エスティークに会議の目的を告げた。
「じゃあ、みんなでプリンスちゃんの幸せを考えてくれていたの?」
「はい、この国の王子ですから」
「へえ~。
コトダマ先生もそうなのかしら?」
エスティークのじろりとした視線に、コトダマは「教師だから当然だ」と心にもないことを言う。
「うふふ、ありえないわねえ。
まあでも……うんうん、なるほど。
モブリンちゃん」
「あっ、は……はい!」
「さっきも言ったように、ワタシはプリンスちゃんにとって無害な婚約相手なら誰でもいいの。
あなたみたいな平凡娘でもいいかと思ったけど、よく考えたら、転生して普通を願うとか、相当な激ヤバ物件だわ。
利害は一致したから、ビューティを推しましょう」
「ありがとうございます!」
激ヤバ扱いされてお礼を言うわたし。
でも、いいんだ。
プリンスとの婚約を回避できるなら、今は激ヤバも甘んじて受け入れよう。
「それじゃあ、プリンス先輩に、ビューティ先輩を選ぶように言ってもらえますか?」
「それだと弱いから、あなたに対してだけ、プリンスちゃんに使っているワタシのスキルを無効化するわ。
今は『なんだこの普通な子は!』という感動が持続しているけど、すぐに見慣れて飽きるから。
本当はあの子、すごく飽きっぽいの」
つまり、普通に飽きられるということだ。
ひどいことを言われているような気もするが、モブならこれが本来の姿。
忘れてはいけない、モブ道の求道者だということを。
――で、えーと、あれ?
「もしかしてこれで、作戦完了?」
エスティークのスキルと性格はアレだったが、利害が一致したおかげで、あっけなく話がついてしまった。
拍子抜けしたわたしに、ターコが言う。
「ほとんど完了だが、ビューティ先輩のほうにも根回しが必要だな。
頭が……その、あまりよろしくないと言われているにしても、当日になって嫌だと言われても困るわけだし」
「あー、そうだよね」
頭がよろしくないも、先輩に対しては充分に失礼な言葉である。
が、ビューティをよく知るエスティークは言う。
「あの子のほうに根回しなんて必要ないと思うわ。
嫌だなんて言うわけがない。
毎日褒めてもらえて居心地のいいプリンスちゃんのそばを、自分から離れることなんてないんだから。
下手に会うと、あんたたちのほうがあの子に惚れて面倒なことになる」
「そうなんですか」
と、いうことは。
「本当にこれで作戦完了ってことね」
「はい、お嬢様。
おめでとうございます」
マッスリーヌがようやく会議に戻ってきた。
いや、いたのはいたのだけど、エスティークが登場してからというもの、彼女のスキルに取り込まれないために《マッスル・ヒーリング》に専念していたのだ。
輝く汗をほとばしらせて、落ち着いたいい顔をしている。
そんなわたしたちの喜びを目にして、エスティークが皮肉っぽい笑顔で言う。
「プリンスちゃんの幸せを願っている、ねえ……。
まあ、どうしてそういう名目になったかは想像つくから、訊かないけど。
当日はあんまり露骨にはしゃがないようにしなさい。
プリンスちゃんがおかしいと思ったら、それでおしまいなんだから」
「はーい」
わたしたちは下級生らしく素直な返事をして、これで会議は終了ということになった。
しかし、
「婚約パーティは金曜日の放課後だから、あと丸々三日もあるんだよね。
こんなすぐに話がまとまるとは思ってなかったから、逆に緊張しちゃう。
なにかボロが出ないかとか、それこそビューティ先輩と話すなんて余計なことしちゃわないかとか」
ついこぼしたわたしの言葉を、リリィが聞き逃さなかった。
「あ、モブリンもそう思う?
私もちょうど、『じれったいな』と思っていたところ。
せっかく話をつけたエスティーク先輩の心が変わらないともかぎらないし、飛ばしちゃおう」
「ちょっ、リリィ……!」
慎重なくせに決断は早い。
慌てて止めようとしたときには、彼女はすでに《スキップ・オブ・ザ・ワールド》を発動させていた。
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