22 / 33
第22話:間違いなく世界一の美女
しおりを挟む
「よし、ビューティとやらを婚約相手に仕立て上げましょう。
バカのほうが扱いやすくて簡単ですから」
「こらー!」
即断するマッスリーヌに、わたしが怒る。
プリンスを幸せにするという話はどうなったのだ。
もっと言うなら、将来の王妃がそんなバカでは国が傾きかねない。
「ちゃんとプリンスのことを考えて決めようよ。
それがこの会の目的でしょう?
せっかくさっきまで賢いことを言っていたのに、脳筋バカって思われるわよ」
「はっ、そうでした。
お嬢様のメイドとあろうものが、脳の筋肉が足りず申し訳ありません。
今後は脳筋もしっかりと鍛えますので」
もっと脳筋になるよ!
って、そうじゃない真面目にやろう。
「わたしたち、プリハピ会なんだよ。
もっとプリンスの親のような気持ちになって、彼の本当の幸せを考えてあげよう。
あんたが親だったらどうしてあげたい?」
「そうですね……。
まずは、《ラッキー・スター》の常時発動をやめさせますね。
自分に都合のいいことしか起こらない人生では、ろくなおとなになりませんから。
スキルは一日一時間です」
「そんな、ゲームじゃないんだから」
まあでも、言っていることは正しい。
この流れで婚約相手を検討しよう。
「婚約相手はどっちがふさわしいと思う?」
「ビューティとエスティーク……。
うーん、選ぼうにも情報が足りませんね。
教師殿、先ほどの話よりも詳しい情報を聞かせてもらえませんか?」
マッスリーヌの質問に、コトダマは「見たほうが早いんだがなあ」と話し渋る。
と、ゼファーがそこで立ち上がり、みんなに見えるように一枚の写真を取り出した。
「ふっ……こんなこともあろうかと、この疾風のゼファーがビューティ先輩の写真を用意してある。
見るがいい。
これが、この学校……いや世界一美しいとされるビューティ先輩のご尊顔だ」
「食堂で上級生から売りつけられてるの見てたけどな」
ターコの呟きは無視することにしたらしい。
得意げな顔でゼファーが掲げる写真を、コトダマ以外の全員で首を伸ばして注目した。
そこには――
「あー……たしかにすごい美人。
でもなんだろ、マッスリーヌっぽい雰囲気。
あんたがめちゃくちゃおとなしくなって、色気の出しかたをマスターしたら、こんな感じかもしれないわね。
よかったじゃん、世界一の美女に似てて」
「は……?
いや、お嬢様はなにをおっしゃっているのですか?
お言葉を否定するようで心苦しいのですが、彼が手にしているのはお嬢様の写真です。
ゼファー貴様ッ、いつの間に盗撮したのだ!」
詰め寄るマッスリーヌに、ゼファーがあたふたしながら写真を確認する。
「え? きみたちはなにを言っているんだ?
ここには清楚なヒロイン然とした、とても可愛らしい女性が写っているのに。
そのメイドにもモブリンくんにも、似ても似つかない。
申し訳ないが月とスッポンだ」
この状況はあきらかにおかしい。
わたしとマッスリーヌ、それとゼファーが見ているものがまるで違う。
写真自体ははっきりと見えているので、見間違いということはなさそうだけど……。
ほかのクラスメイトも、口々に違う意見を言っている。
唯一、一致しているとすれば、全員が「美しい」「可愛い」「きれいだ」という感想を抱いていること。
そのとき、混乱する教室をひとりだけ含み笑いで眺めていたコトダマが、ようやく口を開いた。
「ゼファーが買わされた写真のおかげで充分に理解できたと思うが、これがビューティのスキルだ。
彼女は《カレイドスコープ》を使って、つねに自分を、見る者の理想の顔として目に映すことができる」
なるほど、理想の顔。
それはすごいスキルだ。
……って、あれ?
ちょ、ちょっと待って。
わたし、なんか……恥ずかしいこと言ったかも。
言ったかも!
バカのほうが扱いやすくて簡単ですから」
「こらー!」
即断するマッスリーヌに、わたしが怒る。
プリンスを幸せにするという話はどうなったのだ。
もっと言うなら、将来の王妃がそんなバカでは国が傾きかねない。
「ちゃんとプリンスのことを考えて決めようよ。
それがこの会の目的でしょう?
せっかくさっきまで賢いことを言っていたのに、脳筋バカって思われるわよ」
「はっ、そうでした。
お嬢様のメイドとあろうものが、脳の筋肉が足りず申し訳ありません。
今後は脳筋もしっかりと鍛えますので」
もっと脳筋になるよ!
って、そうじゃない真面目にやろう。
「わたしたち、プリハピ会なんだよ。
もっとプリンスの親のような気持ちになって、彼の本当の幸せを考えてあげよう。
あんたが親だったらどうしてあげたい?」
「そうですね……。
まずは、《ラッキー・スター》の常時発動をやめさせますね。
自分に都合のいいことしか起こらない人生では、ろくなおとなになりませんから。
スキルは一日一時間です」
「そんな、ゲームじゃないんだから」
まあでも、言っていることは正しい。
この流れで婚約相手を検討しよう。
「婚約相手はどっちがふさわしいと思う?」
「ビューティとエスティーク……。
うーん、選ぼうにも情報が足りませんね。
教師殿、先ほどの話よりも詳しい情報を聞かせてもらえませんか?」
マッスリーヌの質問に、コトダマは「見たほうが早いんだがなあ」と話し渋る。
と、ゼファーがそこで立ち上がり、みんなに見えるように一枚の写真を取り出した。
「ふっ……こんなこともあろうかと、この疾風のゼファーがビューティ先輩の写真を用意してある。
見るがいい。
これが、この学校……いや世界一美しいとされるビューティ先輩のご尊顔だ」
「食堂で上級生から売りつけられてるの見てたけどな」
ターコの呟きは無視することにしたらしい。
得意げな顔でゼファーが掲げる写真を、コトダマ以外の全員で首を伸ばして注目した。
そこには――
「あー……たしかにすごい美人。
でもなんだろ、マッスリーヌっぽい雰囲気。
あんたがめちゃくちゃおとなしくなって、色気の出しかたをマスターしたら、こんな感じかもしれないわね。
よかったじゃん、世界一の美女に似てて」
「は……?
いや、お嬢様はなにをおっしゃっているのですか?
お言葉を否定するようで心苦しいのですが、彼が手にしているのはお嬢様の写真です。
ゼファー貴様ッ、いつの間に盗撮したのだ!」
詰め寄るマッスリーヌに、ゼファーがあたふたしながら写真を確認する。
「え? きみたちはなにを言っているんだ?
ここには清楚なヒロイン然とした、とても可愛らしい女性が写っているのに。
そのメイドにもモブリンくんにも、似ても似つかない。
申し訳ないが月とスッポンだ」
この状況はあきらかにおかしい。
わたしとマッスリーヌ、それとゼファーが見ているものがまるで違う。
写真自体ははっきりと見えているので、見間違いということはなさそうだけど……。
ほかのクラスメイトも、口々に違う意見を言っている。
唯一、一致しているとすれば、全員が「美しい」「可愛い」「きれいだ」という感想を抱いていること。
そのとき、混乱する教室をひとりだけ含み笑いで眺めていたコトダマが、ようやく口を開いた。
「ゼファーが買わされた写真のおかげで充分に理解できたと思うが、これがビューティのスキルだ。
彼女は《カレイドスコープ》を使って、つねに自分を、見る者の理想の顔として目に映すことができる」
なるほど、理想の顔。
それはすごいスキルだ。
……って、あれ?
ちょ、ちょっと待って。
わたし、なんか……恥ずかしいこと言ったかも。
言ったかも!
6
お気に入りに追加
1,000
あなたにおすすめの小説
【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた
そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた
しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう
婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ
婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか
この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話
*更新は不定期です
メイドから家庭教師にジョブチェンジ~特殊能力持ち貧乏伯爵令嬢の話~
Na20
恋愛
ローガン公爵家でメイドとして働いているイリア。今日も洗濯物を干しに行こうと歩いていると茂みからこどもの泣き声が聞こえてきた。なんだかんだでほっとけないイリアによる秘密の特訓が始まるのだった。そしてそれが公爵様にバレてメイドをクビになりそうになったが…
※恋愛要素ほぼないです。続きが書ければ恋愛要素があるはずなので恋愛ジャンルになっています。
※設定はふんわり、ご都合主義です
小説家になろう様でも掲載しています
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】旦那様に隠し子がいるようです。でも可愛いから全然OK!
曽根原ツタ
恋愛
実家の借金返済のため、多額の支度金を用意してくれるという公爵に嫁ぐことを父親から押し付けられるスフィミア。冷酷無慈悲、引きこもりこ好色家と有名な公爵だが、超ポジティブな彼女は全く気にせずあっさり縁談を受けた。
公爵家で出迎えてくれたのは、五歳くらいの小さな男の子だった。
(まぁ、隠し子がいらっしゃったのね。知らされていなかったけれど、可愛いから全然OK!)
そして、ちょっとやそっとじゃ動じないポジティブ公爵夫人が、可愛い子どもを溺愛する日々が始まる。
一方、多額の支度金を手に入れたスフィミアの家族は、破滅の一途を辿っていて……?
☆小説家になろう様でも公開中
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる