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第22話:間違いなく世界一の美女
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「よし、ビューティとやらを婚約相手に仕立て上げましょう。
バカのほうが扱いやすくて簡単ですから」
「こらー!」
即断するマッスリーヌに、わたしが怒る。
プリンスを幸せにするという話はどうなったのだ。
もっと言うなら、将来の王妃がそんなバカでは国が傾きかねない。
「ちゃんとプリンスのことを考えて決めようよ。
それがこの会の目的でしょう?
せっかくさっきまで賢いことを言っていたのに、脳筋バカって思われるわよ」
「はっ、そうでした。
お嬢様のメイドとあろうものが、脳の筋肉が足りず申し訳ありません。
今後は脳筋もしっかりと鍛えますので」
もっと脳筋になるよ!
って、そうじゃない真面目にやろう。
「わたしたち、プリハピ会なんだよ。
もっとプリンスの親のような気持ちになって、彼の本当の幸せを考えてあげよう。
あんたが親だったらどうしてあげたい?」
「そうですね……。
まずは、《ラッキー・スター》の常時発動をやめさせますね。
自分に都合のいいことしか起こらない人生では、ろくなおとなになりませんから。
スキルは一日一時間です」
「そんな、ゲームじゃないんだから」
まあでも、言っていることは正しい。
この流れで婚約相手を検討しよう。
「婚約相手はどっちがふさわしいと思う?」
「ビューティとエスティーク……。
うーん、選ぼうにも情報が足りませんね。
教師殿、先ほどの話よりも詳しい情報を聞かせてもらえませんか?」
マッスリーヌの質問に、コトダマは「見たほうが早いんだがなあ」と話し渋る。
と、ゼファーがそこで立ち上がり、みんなに見えるように一枚の写真を取り出した。
「ふっ……こんなこともあろうかと、この疾風のゼファーがビューティ先輩の写真を用意してある。
見るがいい。
これが、この学校……いや世界一美しいとされるビューティ先輩のご尊顔だ」
「食堂で上級生から売りつけられてるの見てたけどな」
ターコの呟きは無視することにしたらしい。
得意げな顔でゼファーが掲げる写真を、コトダマ以外の全員で首を伸ばして注目した。
そこには――
「あー……たしかにすごい美人。
でもなんだろ、マッスリーヌっぽい雰囲気。
あんたがめちゃくちゃおとなしくなって、色気の出しかたをマスターしたら、こんな感じかもしれないわね。
よかったじゃん、世界一の美女に似てて」
「は……?
いや、お嬢様はなにをおっしゃっているのですか?
お言葉を否定するようで心苦しいのですが、彼が手にしているのはお嬢様の写真です。
ゼファー貴様ッ、いつの間に盗撮したのだ!」
詰め寄るマッスリーヌに、ゼファーがあたふたしながら写真を確認する。
「え? きみたちはなにを言っているんだ?
ここには清楚なヒロイン然とした、とても可愛らしい女性が写っているのに。
そのメイドにもモブリンくんにも、似ても似つかない。
申し訳ないが月とスッポンだ」
この状況はあきらかにおかしい。
わたしとマッスリーヌ、それとゼファーが見ているものがまるで違う。
写真自体ははっきりと見えているので、見間違いということはなさそうだけど……。
ほかのクラスメイトも、口々に違う意見を言っている。
唯一、一致しているとすれば、全員が「美しい」「可愛い」「きれいだ」という感想を抱いていること。
そのとき、混乱する教室をひとりだけ含み笑いで眺めていたコトダマが、ようやく口を開いた。
「ゼファーが買わされた写真のおかげで充分に理解できたと思うが、これがビューティのスキルだ。
彼女は《カレイドスコープ》を使って、つねに自分を、見る者の理想の顔として目に映すことができる」
なるほど、理想の顔。
それはすごいスキルだ。
……って、あれ?
ちょ、ちょっと待って。
わたし、なんか……恥ずかしいこと言ったかも。
言ったかも!
バカのほうが扱いやすくて簡単ですから」
「こらー!」
即断するマッスリーヌに、わたしが怒る。
プリンスを幸せにするという話はどうなったのだ。
もっと言うなら、将来の王妃がそんなバカでは国が傾きかねない。
「ちゃんとプリンスのことを考えて決めようよ。
それがこの会の目的でしょう?
せっかくさっきまで賢いことを言っていたのに、脳筋バカって思われるわよ」
「はっ、そうでした。
お嬢様のメイドとあろうものが、脳の筋肉が足りず申し訳ありません。
今後は脳筋もしっかりと鍛えますので」
もっと脳筋になるよ!
って、そうじゃない真面目にやろう。
「わたしたち、プリハピ会なんだよ。
もっとプリンスの親のような気持ちになって、彼の本当の幸せを考えてあげよう。
あんたが親だったらどうしてあげたい?」
「そうですね……。
まずは、《ラッキー・スター》の常時発動をやめさせますね。
自分に都合のいいことしか起こらない人生では、ろくなおとなになりませんから。
スキルは一日一時間です」
「そんな、ゲームじゃないんだから」
まあでも、言っていることは正しい。
この流れで婚約相手を検討しよう。
「婚約相手はどっちがふさわしいと思う?」
「ビューティとエスティーク……。
うーん、選ぼうにも情報が足りませんね。
教師殿、先ほどの話よりも詳しい情報を聞かせてもらえませんか?」
マッスリーヌの質問に、コトダマは「見たほうが早いんだがなあ」と話し渋る。
と、ゼファーがそこで立ち上がり、みんなに見えるように一枚の写真を取り出した。
「ふっ……こんなこともあろうかと、この疾風のゼファーがビューティ先輩の写真を用意してある。
見るがいい。
これが、この学校……いや世界一美しいとされるビューティ先輩のご尊顔だ」
「食堂で上級生から売りつけられてるの見てたけどな」
ターコの呟きは無視することにしたらしい。
得意げな顔でゼファーが掲げる写真を、コトダマ以外の全員で首を伸ばして注目した。
そこには――
「あー……たしかにすごい美人。
でもなんだろ、マッスリーヌっぽい雰囲気。
あんたがめちゃくちゃおとなしくなって、色気の出しかたをマスターしたら、こんな感じかもしれないわね。
よかったじゃん、世界一の美女に似てて」
「は……?
いや、お嬢様はなにをおっしゃっているのですか?
お言葉を否定するようで心苦しいのですが、彼が手にしているのはお嬢様の写真です。
ゼファー貴様ッ、いつの間に盗撮したのだ!」
詰め寄るマッスリーヌに、ゼファーがあたふたしながら写真を確認する。
「え? きみたちはなにを言っているんだ?
ここには清楚なヒロイン然とした、とても可愛らしい女性が写っているのに。
そのメイドにもモブリンくんにも、似ても似つかない。
申し訳ないが月とスッポンだ」
この状況はあきらかにおかしい。
わたしとマッスリーヌ、それとゼファーが見ているものがまるで違う。
写真自体ははっきりと見えているので、見間違いということはなさそうだけど……。
ほかのクラスメイトも、口々に違う意見を言っている。
唯一、一致しているとすれば、全員が「美しい」「可愛い」「きれいだ」という感想を抱いていること。
そのとき、混乱する教室をひとりだけ含み笑いで眺めていたコトダマが、ようやく口を開いた。
「ゼファーが買わされた写真のおかげで充分に理解できたと思うが、これがビューティのスキルだ。
彼女は《カレイドスコープ》を使って、つねに自分を、見る者の理想の顔として目に映すことができる」
なるほど、理想の顔。
それはすごいスキルだ。
……って、あれ?
ちょ、ちょっと待って。
わたし、なんか……恥ずかしいこと言ったかも。
言ったかも!
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