【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca

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第10話:王子様までやってきた!

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 結局、ターコとマッスリーヌの睨み合いが喧嘩に発展することはなかった。
 それもそのはず、わたしとマッスリーヌのまわりは魔法障壁とやらで囲われており、互いに干渉することは一切できないようになっている。
 ターコの話によると、わたしの席は「隔絶された別の空間」なのだそうだ。
 仕組みはよくわからないけど、わたしが出入りしたいと思ったときだけ空間が接続されて、まるで地続きであるかのように移動ができるらしい。
 教師側の誰かの手による措置なのだろうが、これも相当な強スキルである。

 そのあともうひとつ授業が終わり、普通の学校みたいに昼休みの時間となった。

「ふぁ~あ、授業眠かった~。
 ね、マッスリーヌ。
 お昼って食堂に行けばいいのかな?」
「いえ、お嬢様は行けません。
 お手洗いなどの短時間の移動ならともかく、小一時間もこの障壁を離れることは残念ながら許可されておりませんので。
 ……昨日、それだけは悲しいとおっしゃっていたではありませんか」
「あー、あはは。
 ためしに言ってみただけだよ」

 ごまかすわたしに、マッスリーヌは「お昼は持参しております」とお弁当を差し出した。
 えっと、どこから出したのかな?
 保温……されているけど。

「あんたのスキルって、じつは四次元なんちゃらってやつじゃない?
 筋トレすると落ち着くとかより、便利だし」
「……?
 次元を操れても筋肉はつきませんが」

 いや、その反論はどうなのよ。
 本気でふしぎそうな顔で見てくる彼女にあきれつつ、わたしはお弁当を食べはじめる。
 ウインナーやサンドイッチが普通に美味しい。
 朝は残念すぎる茹でた白米を二口食べただけだったので、筋肉のぬくもりは気にしないことにした。

「あっ、マッスリーヌのぶんは?
 ごめん、半分こすればよかった」
「いえいえ、それにはおよびません。
 わたくしにはこれがあります。
 筋肉ジュースです」

 そう言って、すっと取り出した謎の液体を飲んでいる。
 プロテインとか、そういうやつかな。

 そんな感じに昼食を終え、スクワットをするマッスリーヌと雑談していると、にわかに廊下のほうが騒がしくなってきた。

「なんだろう?」
「誰か、きらきらした男が歩いていますね」
「きらきら」

 たしかにそうとしか表現できなかった。
 廊下側の窓から見えたのは、顔のまわりを輝かせながら歩いている男――

「あっ、新聞で見た王子様じゃん!
 あのひとも、この学校の生徒だったんだ」

 気づいたわたしが声をあげると、その声が聞こえてしまったのか、彼のほうもわたしを見た。
 そして、廊下からそのままこちらへ歩いてきた。

「え、なに……?」

 そのままというのは、純粋にそのままの意味だ。
 彼は廊下の壁と窓をすり抜け、まっすぐにわたしの席へと向かってきたのだ。

「やあ、モブリン。
 私はプリンス、18歳。
 この国の第一王子だ」

 ……プリンス王子。
 王位を継いだらプリンス王になるけど、本当にその名前でよかったのだろうか。
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