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ROKI

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BLOOD WAY

11、ワルプルギスの夜

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「まだ居たのか、否人イネプト
 夜が明けていつの間にか目覚めたマリシアが視線だけを向けて冷たく言い放つ。
「あぁ、お前が傷を癒やしたらすぐに去る。だから、」
「…本当だな」
 言い終える前にマリシアは応じ、横たえていた身を起こした。痛々しい身体を持ち上げ、介助しようとするケイウスの腕を払い除けて覆い被さってくる。ケイウスはされるがままに身を任せた。のしかかられてマリシアの顔を見上げていると、出会った頃を思い出して少し懐かしくなる。しかし記憶の中の面影と今は違い、顔の傷が目に付いて離れなかった。薬は塗ったが、ガーゼが足りずに裂傷が剥き出しのままになった頬を手で撫で下ろす。パタパタとまたマリシアの体から温かい雫が落ちてくる。

「…、無理だ、出来ない」
 新たにマリシアの顔に傷ができる。滲んだ血液はたくさんの大粒の涙で薄まって、ケイウスの顔に次から次へと降り注ぐ。ケイウスはそれを拭わずに、マリシアに口付けた。マリシアはケイウスの唇を受け入れ、掻き抱くケイウスの腕にマリシアは収まった。身体を蝕み引き裂かれる痛みに身を固くして、マリシアは最早ひたすらに耐え忍ぶしかなかった。
  マリシアの身体の傷は日々耐えない。ケイウスと心を通わせれば通わせる程傷が増える一方で、成す術はなかった。弱る姿に日々焦るのはケイウスばかりで、当のマリシアは穏やかになった。すっかり抗うことを止め、静かに受け入れている。これ程心は落ち着いているのに、ケイウスと触れ合うたびに体は傷を負った。イザベラの呪いの意味が二人にはよく分かった。痛みは絶えず体を巡り、不足した血の気のせいで立つことすら難しい。ケイウスは衰弱を見届ける事しかできず、マリシアはただただ苦痛に身を浸していた。
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