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BLOOD WAY
7、魔女の呪い
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マリシアに呪いをかけたのは、実の母であるイザベラだった。愛しい男と引き裂かれ心を壊したイザベラは我が子を育てながらもどんどん狂っていった。男に恋い焦がれ思いを募らせれば募らせるほど、それと同じくらい憎悪や悲しみが増幅していく。愛しい男との間の子供を何よりも愛し慈しみながら、自分を捨て踏み躙った男の面影を投影し憎悪し呪っていった。マリシアにかけられた呪いは複雑な念が入り乱れ、グチャグチャにこんがらがった深刻なものだった。イザベラの呪いの根源となった相手、それが父親であるこの屋敷の当主であり、その人物に会いさえすれば解呪の糸口が見つかるはずだとマリシアは信じて止まなかったのである。深刻な表情のまま、マリシアは父親と対面した。
「何故、イザベラを…」
マリシアは問う。当主はずっと止まらぬ涙を拭う事もしなくなった。
「脅されていたんだ…。彼女を遠ざけなければ、魔女を捉えて火炙りに処すと…」
そう告白しながらイザベラの忘れ形見の手を、当主は大事そうに取った。服の袖から覗く白い腕にジワジワと黒い筋が滲んでくる。浮かび上がった黒は生き物や稲妻のように皮膚の上を巡り、その痕からすーっと鮮血が溢れた。マリシアは痛みに顔を歪ませる。当主はとても驚いて、高級そうな刺繍の入ったスカーフが血で染まるのも構わずにマリシアの手の傷を押さえた。
これがマリシアの身にかけられた呪いだった。はっきりとした呪いの発生要因はマリシア自身にも自覚出来ないが、心が揺らいだ時その振れ幅に伴って身体に黒紋が表れ皮膚が裂かれてしまう。その心の揺らめきはどんな感情の場合であっても呪いの発生は同じだった。そのため、マリシアはあらゆる事柄において、常に感情を押し殺して心を起伏させぬように生きてきた。食事も身に着けるものも何事も必要最低限に抑え、人との関わりも空疎だった。生きる術は母から教わった魔術しか知らず、母の遺した形見はあの白鳥の飾りの法具のみだった。マリシアは男児として産まれながら、イザベラに魔女として育てられたのだ。それもまたイザベラの壊れた心のせいなのかも知れない。人から吸い取った生気を魔術使用のための力に変換するやり方は、マリシア自身が生きていく上で行き着いた方法だった。それはマリシア自身の心の空虚を埋めるための事でもあった。人と関わる事が難しい。それでも人の世を断ち切らぬために人肌を求めた。ケイウスはそんなマリシアの心の内を少しずつ知り、理解していった。
「何故、イザベラを…」
マリシアは問う。当主はずっと止まらぬ涙を拭う事もしなくなった。
「脅されていたんだ…。彼女を遠ざけなければ、魔女を捉えて火炙りに処すと…」
そう告白しながらイザベラの忘れ形見の手を、当主は大事そうに取った。服の袖から覗く白い腕にジワジワと黒い筋が滲んでくる。浮かび上がった黒は生き物や稲妻のように皮膚の上を巡り、その痕からすーっと鮮血が溢れた。マリシアは痛みに顔を歪ませる。当主はとても驚いて、高級そうな刺繍の入ったスカーフが血で染まるのも構わずにマリシアの手の傷を押さえた。
これがマリシアの身にかけられた呪いだった。はっきりとした呪いの発生要因はマリシア自身にも自覚出来ないが、心が揺らいだ時その振れ幅に伴って身体に黒紋が表れ皮膚が裂かれてしまう。その心の揺らめきはどんな感情の場合であっても呪いの発生は同じだった。そのため、マリシアはあらゆる事柄において、常に感情を押し殺して心を起伏させぬように生きてきた。食事も身に着けるものも何事も必要最低限に抑え、人との関わりも空疎だった。生きる術は母から教わった魔術しか知らず、母の遺した形見はあの白鳥の飾りの法具のみだった。マリシアは男児として産まれながら、イザベラに魔女として育てられたのだ。それもまたイザベラの壊れた心のせいなのかも知れない。人から吸い取った生気を魔術使用のための力に変換するやり方は、マリシア自身が生きていく上で行き着いた方法だった。それはマリシア自身の心の空虚を埋めるための事でもあった。人と関わる事が難しい。それでも人の世を断ち切らぬために人肌を求めた。ケイウスはそんなマリシアの心の内を少しずつ知り、理解していった。
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