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BLOOD WAY
1、腹を空かせた魔女
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「可愛がってくれるなら、どうやってもいいよ」
真っ黒な外套のフードから、長く伸ばされた金色の髪が覗く。陰気で怪しい闇市の路地裏で子供のように小柄な黒フードは、体格のいい男に声を掛けていた。数人の男達がつるんで闊歩している。その一人の腕をするりと掴んでそんなことを囁いた。
下品な笑いを浮かべる男は、フードの影に潜んでいた顔を確認すると更にいやらしく笑いを漏らす。仲間たちと連れ立って、黒フードが逃げられぬようにと囲みながら路地裏の更に奥の袋小路へ入り込んでいく。
荒々しく無骨な男達は獲物を壁に押し付けると、手荒く外套の裾を捲り上げる。中に着ていたローブも邪魔くさそうにたくし上げて、隠されていた白く細い下肢が顕になると待ちかねているうに足を割った。男達の一人がまだ隠れている股間を弄ると、ふわりと柔らかく滑らかな感触の奥にとろりとした湿り気を指先から感じ取った。
「お前、とんでもねぇ淫売だな」
ゲラゲラと不愉快な笑い方で嘲られても、黒フードは服の裾を自ら抱えたまま動かない。
「…まだ?」
フードの影の口元が誘いの舌なめずりをすると、誰ともなく男達は覆い被さってきた。先を争ってあちこちから、グイグイと固い芯を押し付けられる。誰かが頼りない白い足を持ち上げ抱え上げた。
その瞬間に急に「ギャッ」と悲鳴が上がる。男達の背後に、いつの間にか程度の良い鎧を身に着けた見知らぬ男が紛れており、折れたモップの柄で男達の一人の脇腹を真横に強く薙いでいた。衝撃と痛みで地面に転がり藻掻く男を挟んで、男達と鎧の男が対峙する。ものの五分程度であっさり決着がついてしまった。鎧の男は明らかに手練で、棒切れ一本でも見事な立ち回りを見せた。
「大丈夫か?」
抱えていた裾を腕から払われて鎧の男に服を直されると、黒フードは鎧越しの腹部に押し払うような蹴りを入れる。
「余計な事をするな、別に襲われていたわけじゃない」
「然し…、」
言い澱む鎧の男の前で、黒フードはフードを外してみせる。生え際からすっかり透けるような天然の金色の髪はとても珍しかった。その髪の毛の上に様々な飾りが散りばめられたサークレットが乗っている。これは魔術を生業としている者が身に着ける法具だ。魔術に使う力を制御したり増幅したりする為のものだと聞いたことがある。魔術師の間では、その実力に比例するように力のあるものは見事な宝具を身に着けているという。フードの下から現れたその宝具は額の辺りに見たことの無い白い宝石が揺れていて、それは白鳥の形に象られていた。動く度に白鳥は七色に輝く。若いと言うよりはまだ幼く見えるこの魔術師はなかなかの実力者なのだということが伺える。魔術師は、見た目の印象は全くアテにならないのだ。鎧の男は人生経験の上でそれを知っていた。サークレットから視線を下に向けると、薄い色の瞳が鎧の男をじっと睨んでいた。魔女、なのか魔導士なのか全く見当がつかない顔をしているが、声は若い男性のものだった。
「食事を摂りそこねた。どうしてくれる」
若い魔術師は言いながら指先を軽く動かす。たったそれだけの動作で鎧の男が手にしていたモップの柄が砕けてしまった。
「…それは申し訳ない事をした。俺が代わりに何かご馳走しよう」
真っ黒な外套のフードから、長く伸ばされた金色の髪が覗く。陰気で怪しい闇市の路地裏で子供のように小柄な黒フードは、体格のいい男に声を掛けていた。数人の男達がつるんで闊歩している。その一人の腕をするりと掴んでそんなことを囁いた。
下品な笑いを浮かべる男は、フードの影に潜んでいた顔を確認すると更にいやらしく笑いを漏らす。仲間たちと連れ立って、黒フードが逃げられぬようにと囲みながら路地裏の更に奥の袋小路へ入り込んでいく。
荒々しく無骨な男達は獲物を壁に押し付けると、手荒く外套の裾を捲り上げる。中に着ていたローブも邪魔くさそうにたくし上げて、隠されていた白く細い下肢が顕になると待ちかねているうに足を割った。男達の一人がまだ隠れている股間を弄ると、ふわりと柔らかく滑らかな感触の奥にとろりとした湿り気を指先から感じ取った。
「お前、とんでもねぇ淫売だな」
ゲラゲラと不愉快な笑い方で嘲られても、黒フードは服の裾を自ら抱えたまま動かない。
「…まだ?」
フードの影の口元が誘いの舌なめずりをすると、誰ともなく男達は覆い被さってきた。先を争ってあちこちから、グイグイと固い芯を押し付けられる。誰かが頼りない白い足を持ち上げ抱え上げた。
その瞬間に急に「ギャッ」と悲鳴が上がる。男達の背後に、いつの間にか程度の良い鎧を身に着けた見知らぬ男が紛れており、折れたモップの柄で男達の一人の脇腹を真横に強く薙いでいた。衝撃と痛みで地面に転がり藻掻く男を挟んで、男達と鎧の男が対峙する。ものの五分程度であっさり決着がついてしまった。鎧の男は明らかに手練で、棒切れ一本でも見事な立ち回りを見せた。
「大丈夫か?」
抱えていた裾を腕から払われて鎧の男に服を直されると、黒フードは鎧越しの腹部に押し払うような蹴りを入れる。
「余計な事をするな、別に襲われていたわけじゃない」
「然し…、」
言い澱む鎧の男の前で、黒フードはフードを外してみせる。生え際からすっかり透けるような天然の金色の髪はとても珍しかった。その髪の毛の上に様々な飾りが散りばめられたサークレットが乗っている。これは魔術を生業としている者が身に着ける法具だ。魔術に使う力を制御したり増幅したりする為のものだと聞いたことがある。魔術師の間では、その実力に比例するように力のあるものは見事な宝具を身に着けているという。フードの下から現れたその宝具は額の辺りに見たことの無い白い宝石が揺れていて、それは白鳥の形に象られていた。動く度に白鳥は七色に輝く。若いと言うよりはまだ幼く見えるこの魔術師はなかなかの実力者なのだということが伺える。魔術師は、見た目の印象は全くアテにならないのだ。鎧の男は人生経験の上でそれを知っていた。サークレットから視線を下に向けると、薄い色の瞳が鎧の男をじっと睨んでいた。魔女、なのか魔導士なのか全く見当がつかない顔をしているが、声は若い男性のものだった。
「食事を摂りそこねた。どうしてくれる」
若い魔術師は言いながら指先を軽く動かす。たったそれだけの動作で鎧の男が手にしていたモップの柄が砕けてしまった。
「…それは申し訳ない事をした。俺が代わりに何かご馳走しよう」
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