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第一章 グレート・センセーション
2話:集配魔術士はひたすら歩く
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うんと静まり返った石畳の街道を僅かな街灯を頼りに進んでいく。あたりはもうすっかり暗くなったようだ。そろそろ、行き先を決めなければならない。
「ララ、王都を一旦離れるぞ」
「そうしたほうがいい。ルヴェンは暗殺目標。ここにいるのはキケン」
その通りだ。もし俺がまだ王都にいればすぐに見つかる可能性が高い。敵の情報が未熟な俺たちにとって一旦身を隠すのが得策と言える。それをララも理解してくれているので話が早い。
「ルヴェン・・・どこにいくの?」
「アイシスの町を目指してるのさ。商業の盛んな町だ。」
そう、俺は商業の中心地であるアイシスに向かっていた。王都から少し離れた南側の町で、 行き交う人も多い。つまり、王都の情報も入手しやすいというわけだ。
「よかった、キッカに身を隠すのかと思ってた」
「あんな無法地帯身を隠す以前に殺されちまうぜ」
「ルヴェンなら言いかねない・・・」
おい、俺そんなに信頼なかったか。だがララにとってキッカは居心地が悪いだろう。なぜならそこは亜人奴隷の巣窟だからな。
それから俺達は10ファー(1ファー=1キロ)も歩き、途中のウェグの大草原を中ほどまで進んだところで野営の準備を始めた。
「ララ。お腹が空いたろう。」
「うん・・・」
「狩りに出かけようか」
俺達はここからまだ後15ファーも離れたアイシスまで行かなければならない。それ故に出発時になるべく荷物を少なくしておいたのだ。今夜は自給自足で乗り切る必要がある。それに狩りをすることでまだレベル1のララのレベル上げにもなる。それは俺の復讐を果たす上でも有益なことだ。
「ララ!前方50レスの辺りにイノシシを見つけた!お前でも十分仕留められるサイズだ。行ってこい!!」
俺の【周配】がそれを探り当てた。ララに始末させる事にしたのは決して俺に攻撃力がないからでは無い。本当だ。ララの実力を一度見見てみたかった。
ララは、スキル【影移動】を使って草むらの中を進んでいく。俺の【周配】でも探知できないほど、影の中に音は無い。そしてまもなくズシンと鈍い音がして、イノシシが倒れた。
「やった!ルヴェン。私、狩は初めて。あんなに気持ちいいなんて」
「ララは過激なことを言うな。イノシシをあんな惨い姿にして気持ちいいか」
「それは訂正する・・・ルヴェン。私はもっともっと裂いてやりたい奴らがいるから」
なかなかの上物を拾ってきたようだ。笑いがこみ上げてくる。しかし今は腹が減った。俺が特別に美味い料理を作ってやろう。
俺は携帯していた肉を分解する効果があるハインの付け汁を厚めに切ったイノシシ肉によく揉み込み、臭みを消すショウシの実と岩塩で味を整える。塩は肉の表面を凝縮させ、旨味成分を閉じ込めるためシンプルながらも美味しい肉が焼ける。これも全て村で魔術学校に通わず、のほほんと酒場をやってた故の知識だ。
「完成だ!いっぱい食べると良い」
「ルヴェン・・スゴイ!、あんなに固かった肉がこんなに柔らかく、それにおいしい・・・」
「そうか、残りはサフェのチップで燻製にしておこう。小さいとはいえ二人で食べきれる量じゃ無いからな。」
そして腹を満たしたところで草を寄せ集めてベットを作った。ララを先に寝かせ、俺は魔物に襲われないよう見張りをしていた。幸い、夜間は襲われなかったので、かすかに空が明るくなってきた時にやっと眠りについた。
朝になると夜はっきりと見えなかった草原の全貌が明らかになった。かなりの広さがあり、左側の遠くにシンラの森が妨げるものもなくよく見える。そして3ファーほど進むと、いよいよアイシスの町が見えてきた。海を望む港町で、船も多く停泊している。木造建築の家が多く、様々な文化の影響を受けた交易の町と言った印象だった。
「ララ、あそこがアイシスだ。思ってたより広いな」
「うん。見つからないと良いけど・・・」
「 奴らも婚約の話で手一杯なはずだ。しばらくはここにいて大丈夫そうだぞ」
俺たちは町に着くと、町の西側あたりの年季の入ったボロ宿に泊まる事にした。屋根が付いていたのでよかった。一泊10コルクと格安で夜は酒場もやっている。
「ルヴェン・・新しい生活、始まるの・・?」
「そうさ。長くいるつもりはないがここは良さそうな町だ。しばらくは情報を集めよう」
俺達の目は新たな道を見つめていた。
「ララ、王都を一旦離れるぞ」
「そうしたほうがいい。ルヴェンは暗殺目標。ここにいるのはキケン」
その通りだ。もし俺がまだ王都にいればすぐに見つかる可能性が高い。敵の情報が未熟な俺たちにとって一旦身を隠すのが得策と言える。それをララも理解してくれているので話が早い。
「ルヴェン・・・どこにいくの?」
「アイシスの町を目指してるのさ。商業の盛んな町だ。」
そう、俺は商業の中心地であるアイシスに向かっていた。王都から少し離れた南側の町で、 行き交う人も多い。つまり、王都の情報も入手しやすいというわけだ。
「よかった、キッカに身を隠すのかと思ってた」
「あんな無法地帯身を隠す以前に殺されちまうぜ」
「ルヴェンなら言いかねない・・・」
おい、俺そんなに信頼なかったか。だがララにとってキッカは居心地が悪いだろう。なぜならそこは亜人奴隷の巣窟だからな。
それから俺達は10ファー(1ファー=1キロ)も歩き、途中のウェグの大草原を中ほどまで進んだところで野営の準備を始めた。
「ララ。お腹が空いたろう。」
「うん・・・」
「狩りに出かけようか」
俺達はここからまだ後15ファーも離れたアイシスまで行かなければならない。それ故に出発時になるべく荷物を少なくしておいたのだ。今夜は自給自足で乗り切る必要がある。それに狩りをすることでまだレベル1のララのレベル上げにもなる。それは俺の復讐を果たす上でも有益なことだ。
「ララ!前方50レスの辺りにイノシシを見つけた!お前でも十分仕留められるサイズだ。行ってこい!!」
俺の【周配】がそれを探り当てた。ララに始末させる事にしたのは決して俺に攻撃力がないからでは無い。本当だ。ララの実力を一度見見てみたかった。
ララは、スキル【影移動】を使って草むらの中を進んでいく。俺の【周配】でも探知できないほど、影の中に音は無い。そしてまもなくズシンと鈍い音がして、イノシシが倒れた。
「やった!ルヴェン。私、狩は初めて。あんなに気持ちいいなんて」
「ララは過激なことを言うな。イノシシをあんな惨い姿にして気持ちいいか」
「それは訂正する・・・ルヴェン。私はもっともっと裂いてやりたい奴らがいるから」
なかなかの上物を拾ってきたようだ。笑いがこみ上げてくる。しかし今は腹が減った。俺が特別に美味い料理を作ってやろう。
俺は携帯していた肉を分解する効果があるハインの付け汁を厚めに切ったイノシシ肉によく揉み込み、臭みを消すショウシの実と岩塩で味を整える。塩は肉の表面を凝縮させ、旨味成分を閉じ込めるためシンプルながらも美味しい肉が焼ける。これも全て村で魔術学校に通わず、のほほんと酒場をやってた故の知識だ。
「完成だ!いっぱい食べると良い」
「ルヴェン・・スゴイ!、あんなに固かった肉がこんなに柔らかく、それにおいしい・・・」
「そうか、残りはサフェのチップで燻製にしておこう。小さいとはいえ二人で食べきれる量じゃ無いからな。」
そして腹を満たしたところで草を寄せ集めてベットを作った。ララを先に寝かせ、俺は魔物に襲われないよう見張りをしていた。幸い、夜間は襲われなかったので、かすかに空が明るくなってきた時にやっと眠りについた。
朝になると夜はっきりと見えなかった草原の全貌が明らかになった。かなりの広さがあり、左側の遠くにシンラの森が妨げるものもなくよく見える。そして3ファーほど進むと、いよいよアイシスの町が見えてきた。海を望む港町で、船も多く停泊している。木造建築の家が多く、様々な文化の影響を受けた交易の町と言った印象だった。
「ララ、あそこがアイシスだ。思ってたより広いな」
「うん。見つからないと良いけど・・・」
「 奴らも婚約の話で手一杯なはずだ。しばらくはここにいて大丈夫そうだぞ」
俺たちは町に着くと、町の西側あたりの年季の入ったボロ宿に泊まる事にした。屋根が付いていたのでよかった。一泊10コルクと格安で夜は酒場もやっている。
「ルヴェン・・新しい生活、始まるの・・?」
「そうさ。長くいるつもりはないがここは良さそうな町だ。しばらくは情報を集めよう」
俺達の目は新たな道を見つめていた。
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