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さらしな
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6限目が終わって生徒はあらかた帰宅し、静まり返った教室で、残っていたのは紗羅科真央を含めて5人程だった。今日は2月21日。明日は彼女がずっと楽しみにしている彼氏との遊園地デートの日だ。
彼女は陽気に口笛を吹いて胸を躍らせ、彼の元へせかせかと歩いていく。
「ねぇ、ゆうとくん。明日・・・すっごい楽しみだね!」
「あ、あぁ。俺も・・・だな」
彼の言葉には覇気がなかった。無論二人はもう付き合って半年は経っており、クラスでもお馴染みの二人だと認知されるほどにはなっている。だが、言葉には出せずとも胸に秘めた想いが二人にはあった。
「あのさー真央。明日が本当に・・・」
「ねぇ、ゆうとくん。その話はしない約束でしょ。それよりもさ、ジェットコースターとか平気?」
「そ、そうだよな。ん?ジェットコースターな。くるくる回って酔うよな、アレ」
「え、それはコーヒーカップでしょう??もしかしてゆうとくん、ジェットコースター乗ったことない?」
「あれーなんだったかな。遊園地なんて久しぶでさ」
少し照れた様子の彼をみて、真央はクスりと笑う。
「なにそれ。やっぱりゆうとくんは面白いね。思わず笑っちゃったよ」
彼女は言葉ではそう言いながらも、溢れてくる想いがあったようだ。
「ば、バカ。お前、泣いてんのか?」
「ちがうよ~。ゆうとくんがお、面白くてさー笑泣きだってば~」
『・・・・・・・・・』
しばらくの沈黙の後、真央は場を和ませようと、窓を指した。
「でもさ、当たり前だけど・・・私達が出会えたのってすっごく不思議なことだと思わない?」
「きゅ、急に何言い出すんだよ」
「普段使ってる電車も、コンビニも、学校も教室だって、沢山の人がいるから成り立ってるよね。この社会がなかったら私達が出会うことも多分一生無かったんじゃないかな」
「うん、まぁ確かに不思議だね」
「この広い社会で出会えたんだよ。だからまたいつか絶対に会えると思うんだよ。離れ離れになってもね」
彼女の視線は暖かくて、ニコりと微笑んで見せた。
「明日は、最高の1日にしような!」
彼の言葉には重みがあった。だから彼女もまた、それに応える。
「「「うん!約束だよ!!」」」
冬は陽が落ちるのがいくらか早い。だが、夕焼けの輝きは確実に、後ろから二人の思い出を優しく包み込んだ。
彼女は陽気に口笛を吹いて胸を躍らせ、彼の元へせかせかと歩いていく。
「ねぇ、ゆうとくん。明日・・・すっごい楽しみだね!」
「あ、あぁ。俺も・・・だな」
彼の言葉には覇気がなかった。無論二人はもう付き合って半年は経っており、クラスでもお馴染みの二人だと認知されるほどにはなっている。だが、言葉には出せずとも胸に秘めた想いが二人にはあった。
「あのさー真央。明日が本当に・・・」
「ねぇ、ゆうとくん。その話はしない約束でしょ。それよりもさ、ジェットコースターとか平気?」
「そ、そうだよな。ん?ジェットコースターな。くるくる回って酔うよな、アレ」
「え、それはコーヒーカップでしょう??もしかしてゆうとくん、ジェットコースター乗ったことない?」
「あれーなんだったかな。遊園地なんて久しぶでさ」
少し照れた様子の彼をみて、真央はクスりと笑う。
「なにそれ。やっぱりゆうとくんは面白いね。思わず笑っちゃったよ」
彼女は言葉ではそう言いながらも、溢れてくる想いがあったようだ。
「ば、バカ。お前、泣いてんのか?」
「ちがうよ~。ゆうとくんがお、面白くてさー笑泣きだってば~」
『・・・・・・・・・』
しばらくの沈黙の後、真央は場を和ませようと、窓を指した。
「でもさ、当たり前だけど・・・私達が出会えたのってすっごく不思議なことだと思わない?」
「きゅ、急に何言い出すんだよ」
「普段使ってる電車も、コンビニも、学校も教室だって、沢山の人がいるから成り立ってるよね。この社会がなかったら私達が出会うことも多分一生無かったんじゃないかな」
「うん、まぁ確かに不思議だね」
「この広い社会で出会えたんだよ。だからまたいつか絶対に会えると思うんだよ。離れ離れになってもね」
彼女の視線は暖かくて、ニコりと微笑んで見せた。
「明日は、最高の1日にしような!」
彼の言葉には重みがあった。だから彼女もまた、それに応える。
「「「うん!約束だよ!!」」」
冬は陽が落ちるのがいくらか早い。だが、夕焼けの輝きは確実に、後ろから二人の思い出を優しく包み込んだ。
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