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第十一章

第十一章

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 ヒロ、JB、ユリは、マーナガルムのいつものように作戦室兼、娯楽室兼、ダイニングルームに集まっていた。
 この時マーナガルムは、アカマス星からSPSの本部が置かれたクロノス星へと向かう航路を進んでいた。
 すでに、今回の依頼の一応の解決と呼べるヨアキムの航宙艦の破壊から、標準時間で2日と3時間が経過していた。
 ヨアキムの身柄の引き渡し、ギョーム議長へ今回の依頼に関しての最終報告、アカマス星からの出星手続き、長距離宇宙航行に向けてのマーナガルムの最終点検。そして宇宙航行を開始した後のオペラドライブ突入前の最終チェック。慌ただしい時間を過ごし3人が、やっと顔を合わせたのだった。
「それにしてもさ、あの言われようは酷くないか…」
 JBが溜息混じりに口を開いた。
「まあ、そう言うなよ、JB」
 ヒロがJBのグチに同じく溜息混じりに応えた。
 様々な事柄に追い立てられながらの作業への肉体的な疲れもあったが見宇宙港に見送りに来たギョーム議長が口にした言葉が、3人を精神的に疲れさせたのだった。
「私達は依頼が解決すれば、あの星を離れられるけど。ギョーム議長はこれからが大変なんだもの。仕方ないわよ」
「それはさ、俺だってギョーム議長の言いたいことには分かるけどさ。それって俺らの責任じゃないだろうよ」
「もちろんギョーム議長、いや今の正式な肩書きはアカマス星臨時首長代理か。まあそんなことはいいんだが…。彼だって、俺達を責める気持ちは無いと思う。ただ、そんなことを言えるのが、俺達に対してだけだったということさ」
「しかし…さ、〝信頼を失ったアカマスの運輸業はもうお終いです。この星は多分、すぐにでも無人星になるでしょう…〟なんて言われてもさ」
「ヨアキムの傀儡としてギスカールが他星の輸送艦を襲うことで、アカマスの運輸業は著しく繁栄した。その事が全て明るみになれば、間違いなくアカマスの運輸業は立ちゆかなくなる。そうなれば、あの資源の無いアカマス星はよほどのことがないかぎり、衰退していくしかないだろうね」
「じゃあ、どうすりゃ良かったんだよ…。幽霊の件だけを穏便に解決するべきだったってことかい?」
「それは無理だっただろうね」
「だよなぁ…」
 その点ではヒロとJBの意見は同じだった。
 ヒロが、今度はユリに向かって言う。
「ユリ、1つ聞きたいんだが、あの〝アイツ〟って呼んでいる悪しき残留思念の固まりってヤツは、どこからこの件に関わっていたんだろう?」
「それは私も考えていたわ。〝アイツ〟がベラールさんの思いを利用して幽霊船を生み出したのかも? って」
「やっぱりそういうことなのかい?」
 ヒロが聞く。
「正直にいえば、私にもはっきりとは分からないわ。ただ、私が最初にベラールさんの残留思念に出会った時は、悪いものは全く感じなかったとしか言えない」
「そうだ、ユリ! 今度こそは、あの〝黒男〟を退治できたんだよな」
 JBが、これだけは絶対の成果だと言わんばかりに声を上げた。
「多分…」
「多分ってなんだよ、ユリ…。俺はもう絶対に、二度と会いたくないぜ、あんなヤツに…」
 JBが嫌悪に顔を歪めながらそう言った時、スピーカーからおやっさんの声が響いた。
「オペラドライブ突入準備完了じゃ。みな今回はいつになく大変じゃったな。まあとりあえずはクロノス星に帰還するとしようじゃないか。明日は明日の風が吹くじゃよ」

 ヒロ、JB、ユリの様々な思いを乗せたマーナガルムは、星々が瞬く広大な宇宙空間の闇に溶けるように、オペラドライブ航行へと突入した。

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