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番外編
苦痛と快楽の拷問 2
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(上級淫魔が二体……流石にちょっとまずいか……)
カナは息を整えながら、状況を整理する。
敵は二体。
そのうち一体はまだ姿も見えていない。
ここから先は常に周囲を警戒しながら戦わなければならない。
「手助けなど不要! 奴はもう虫の息だ!」
だが鞭の淫魔バーティスはカナとの一対一の戦いを望んでいるのか、躍起になってカナに鞭を振り下ろす。
その一撃がカナの右肩の当たりに迫る。
「こ……のっ!」
明らかに負傷した左半身を狙った攻撃。
その振り下ろされた鞭をカナは左手で掴んだ。
「なにッ!?」
「食らえッ!」
そんなカナの行動にバーティスが驚愕している間に、カナはバーティスの体に銃弾を打ち込む。
銃弾はバーティスの右肩に当たり、鞭を伸ばしていた右腕が吹き飛んだ。
「ぐぁあああッ!」
「ほ~ら言わんこっちゃない。退魔師の回復能力は並みじゃないんだってば!」
確かに退魔師であるカナの回復能力は並みではない。
だが決してそれは苦痛に対しての耐性があるというわけではない。
(いったぁ……っ! ま、まだ腕、残ってるよね……?)
自身の左手がまだ残っていることを確認して少し安堵する。
鞭の一撃を受け止めた左手はまだ形こそ残っているものの、カナ自身は腕が吹き飛んだかのような錯覚さえ感じていた。
その激痛がまだ体から抜けず、カナはまだその場から動けない。
「くっ、やるな退魔師。不服だが手伝え、マジェラ!」
「はぁ、最初からそのつもりだっての!」
右腕を失ってもなお闘志を失わないバーティスが、カナに一気に接近する。
そして未だ姿の見えないマジェラ。
――何か来る。
そう確信したカナは全神経を集中させる。
「ふん!」
前方から接近してくるバーティスが、カナに向けて勢いよく鞭を振る。
それをカナは強い精気を込めた弾丸で撃ち抜いた。
「――なっ!?」
目の前の光景に、目を見開いて驚くカナ。
弾丸が鞭に触れた瞬間、バーティスの体が霧のように消えた。
(これは、幻影……ッ!? じゃあ本体は……)
直後、カナの周囲に無数の鞭が現れる。
そしてその鞭が一斉にカナの体目がけて振り下ろされる。
(……いや、これも幻影……見極めろ……本物を……ッ!)
目に見える光景だけを見れば絶体絶命の状況。
そんな中、カナは目を瞑り精神を研ぎ澄ませた。
「そこッ!」
ビュンと音を立てて背後から迫るその鞭の一撃を、カナは左手で掴んだ。
バチンと音を立てて、左手に激痛が走る。
だが確かに敵の攻撃を掴んだ。
カナはすかさず掴んで鞭の根元に向けて銃口を構える。
その直後、どこかからフッと鼻で笑う声が聞こえた。
「《苦痛の荊鞭》。激痛に悶えろ、退魔師!」
遠くからバーティスの声が聞こえた直後、鞭を掴んでいた左手に異変が起きる。
「――いッ!? あぐぅううううッ!!」
何が起きたか理解するより先に、カナの口から悲痛な声が漏れる。
そして先ほどの比ではない激痛が、左手から全身に伝う。
(……こ、これはっ!?)
よく見ると左手で掴んだ鞭から、サボテンのように無数の針が伸びていた。
手のひらは血で滲み、左肩から先が痺れて自分の意思で動かすこともできない。
「鞭とは痛みを与えるための道具。そしてこの《苦痛の荊鞭》は激痛を与えることだけに特化した鞭。その針一本一本に痛覚を刺激する神経毒が入っている。どうだ、痛いか退魔師?」
「……っ、そういうことも、できるのね……ぐぅ……ッ!」
激痛を通り越して、左腕から先の感覚が麻痺して自分の意思で動かすこともできない。
歯を食いしばって痛みに耐えるも、目からは自然と涙が溢れる。
それでもカナは震える右手で声のした方向に銃口を向ける。
視界は霞むがそこに敵がいると確信して、引き金に指を添える。
だがそんなカナに追い打ちをかけるように、彼女の頬に冷たい指先が触れた。
「おおっと危ない。いい加減うっとおしいから、その精気全部奪っちゃうね。あ~むっ」
「んんッ!?」
意識の外側から声がしたかと思うと、両頬を捕まれ無理やり唇を奪われる。
「ングぅうううッ!?」
不意に唇を奪われ、カナは目を見開きながら悲鳴をあげる。
目の前では色素の薄い少女の見た目をした淫魔が、カナに唇を合わせ精気を吸収する。
「んっ、んっ……ふふっ、もっと……ンァむぅ……っ」
唇から精気を吸収され、甘く痺れるような感覚が体を満たす。
その感覚は今まで体を満たしていた痺れるような激痛の感覚さえも上書きしていく。
(まずい……今精気を奪われたら……)
精気を奪われるたびに、体が重く、だるくなっていく。
このまま精気を全て奪われてしまったら、淫魔に対抗する手段を失ってしまう。
「ん、んぁああッ!!」
カナは必死に抵抗し、抱きつくマジェラを蹴り飛ばした。
「イタタ……蹴り飛ばすなんてひど~い…………でもね退魔師さん、もう詰みだよ」
マジェラは体を摩りながらニヤリと笑う。
カナがマジェラに精気吸収を受けている間にカナの周囲には無数の鞭が包囲していた。
これは幻ではない。
(なっ……よ、避けられな――)
どこかに逃げ道がないかと模索するが、もう遅い。
回避不能の無数の鞭がカナの体を締め付ける。
「ぐぁあああッ!!」
肺の奥から絞り上げるような悲鳴が響く。
両手両足、腹部も腰も指の先まで、一気に締め上げられる。
ギリギリと体が軋み、カナはもう体を自分の意思で動かすことさえままならない。
ついさっきまで甘い感覚に悶えていたのが一転、体を締め付ける激痛にカナは悶え続ける。
「ふはは、これでもう何もできまい。だがこれで終わりではないぞ――突き刺せ、荊鞭!」
バーティスがそう呟いた直後、カナを拘束する鞭から一斉に無数の棘が突き出る。
「――ひ……ぐッ!? ンン――――ッ!!」
全身から突き刺すような痛みが広がり、カナは声にもならない悲鳴を上げる。
「あっ……ああっ……!」
「うわ~、痛そ~」
悶絶するカナをマジェラは他人事のように見つめていた。
退魔師であるカナはこの程度の攻撃で死に至ることはない。
それでも激痛を与える神経毒が全身に周り、体より先に精神のほうが先に限界が来た。
「あ……が……っ」
痛みを与えることだけに特化した針がカナの全身を刺し尽くし、そのまま体を締め上げられて、カナの意識はそこでプツンと途切れた。
ビクンビクンと激しく痙攣していた体が、だらんと垂れる。
「ふん、失神したか」
「殺しちゃだめだよ~? これからこの子でたくんさん楽しむんだから」
「分かっている」
鞭の拘束が解かれ、カナの体が膝から地面に崩れ落ちる。
そしてそのままうつ伏せに倒れ込んだ。
先ほどの攻撃で衣服は血が滲んでボロボロになり、意識のないカナはその場でピクピクと不規則に痙攣し続けた。
カナは息を整えながら、状況を整理する。
敵は二体。
そのうち一体はまだ姿も見えていない。
ここから先は常に周囲を警戒しながら戦わなければならない。
「手助けなど不要! 奴はもう虫の息だ!」
だが鞭の淫魔バーティスはカナとの一対一の戦いを望んでいるのか、躍起になってカナに鞭を振り下ろす。
その一撃がカナの右肩の当たりに迫る。
「こ……のっ!」
明らかに負傷した左半身を狙った攻撃。
その振り下ろされた鞭をカナは左手で掴んだ。
「なにッ!?」
「食らえッ!」
そんなカナの行動にバーティスが驚愕している間に、カナはバーティスの体に銃弾を打ち込む。
銃弾はバーティスの右肩に当たり、鞭を伸ばしていた右腕が吹き飛んだ。
「ぐぁあああッ!」
「ほ~ら言わんこっちゃない。退魔師の回復能力は並みじゃないんだってば!」
確かに退魔師であるカナの回復能力は並みではない。
だが決してそれは苦痛に対しての耐性があるというわけではない。
(いったぁ……っ! ま、まだ腕、残ってるよね……?)
自身の左手がまだ残っていることを確認して少し安堵する。
鞭の一撃を受け止めた左手はまだ形こそ残っているものの、カナ自身は腕が吹き飛んだかのような錯覚さえ感じていた。
その激痛がまだ体から抜けず、カナはまだその場から動けない。
「くっ、やるな退魔師。不服だが手伝え、マジェラ!」
「はぁ、最初からそのつもりだっての!」
右腕を失ってもなお闘志を失わないバーティスが、カナに一気に接近する。
そして未だ姿の見えないマジェラ。
――何か来る。
そう確信したカナは全神経を集中させる。
「ふん!」
前方から接近してくるバーティスが、カナに向けて勢いよく鞭を振る。
それをカナは強い精気を込めた弾丸で撃ち抜いた。
「――なっ!?」
目の前の光景に、目を見開いて驚くカナ。
弾丸が鞭に触れた瞬間、バーティスの体が霧のように消えた。
(これは、幻影……ッ!? じゃあ本体は……)
直後、カナの周囲に無数の鞭が現れる。
そしてその鞭が一斉にカナの体目がけて振り下ろされる。
(……いや、これも幻影……見極めろ……本物を……ッ!)
目に見える光景だけを見れば絶体絶命の状況。
そんな中、カナは目を瞑り精神を研ぎ澄ませた。
「そこッ!」
ビュンと音を立てて背後から迫るその鞭の一撃を、カナは左手で掴んだ。
バチンと音を立てて、左手に激痛が走る。
だが確かに敵の攻撃を掴んだ。
カナはすかさず掴んで鞭の根元に向けて銃口を構える。
その直後、どこかからフッと鼻で笑う声が聞こえた。
「《苦痛の荊鞭》。激痛に悶えろ、退魔師!」
遠くからバーティスの声が聞こえた直後、鞭を掴んでいた左手に異変が起きる。
「――いッ!? あぐぅううううッ!!」
何が起きたか理解するより先に、カナの口から悲痛な声が漏れる。
そして先ほどの比ではない激痛が、左手から全身に伝う。
(……こ、これはっ!?)
よく見ると左手で掴んだ鞭から、サボテンのように無数の針が伸びていた。
手のひらは血で滲み、左肩から先が痺れて自分の意思で動かすこともできない。
「鞭とは痛みを与えるための道具。そしてこの《苦痛の荊鞭》は激痛を与えることだけに特化した鞭。その針一本一本に痛覚を刺激する神経毒が入っている。どうだ、痛いか退魔師?」
「……っ、そういうことも、できるのね……ぐぅ……ッ!」
激痛を通り越して、左腕から先の感覚が麻痺して自分の意思で動かすこともできない。
歯を食いしばって痛みに耐えるも、目からは自然と涙が溢れる。
それでもカナは震える右手で声のした方向に銃口を向ける。
視界は霞むがそこに敵がいると確信して、引き金に指を添える。
だがそんなカナに追い打ちをかけるように、彼女の頬に冷たい指先が触れた。
「おおっと危ない。いい加減うっとおしいから、その精気全部奪っちゃうね。あ~むっ」
「んんッ!?」
意識の外側から声がしたかと思うと、両頬を捕まれ無理やり唇を奪われる。
「ングぅうううッ!?」
不意に唇を奪われ、カナは目を見開きながら悲鳴をあげる。
目の前では色素の薄い少女の見た目をした淫魔が、カナに唇を合わせ精気を吸収する。
「んっ、んっ……ふふっ、もっと……ンァむぅ……っ」
唇から精気を吸収され、甘く痺れるような感覚が体を満たす。
その感覚は今まで体を満たしていた痺れるような激痛の感覚さえも上書きしていく。
(まずい……今精気を奪われたら……)
精気を奪われるたびに、体が重く、だるくなっていく。
このまま精気を全て奪われてしまったら、淫魔に対抗する手段を失ってしまう。
「ん、んぁああッ!!」
カナは必死に抵抗し、抱きつくマジェラを蹴り飛ばした。
「イタタ……蹴り飛ばすなんてひど~い…………でもね退魔師さん、もう詰みだよ」
マジェラは体を摩りながらニヤリと笑う。
カナがマジェラに精気吸収を受けている間にカナの周囲には無数の鞭が包囲していた。
これは幻ではない。
(なっ……よ、避けられな――)
どこかに逃げ道がないかと模索するが、もう遅い。
回避不能の無数の鞭がカナの体を締め付ける。
「ぐぁあああッ!!」
肺の奥から絞り上げるような悲鳴が響く。
両手両足、腹部も腰も指の先まで、一気に締め上げられる。
ギリギリと体が軋み、カナはもう体を自分の意思で動かすことさえままならない。
ついさっきまで甘い感覚に悶えていたのが一転、体を締め付ける激痛にカナは悶え続ける。
「ふはは、これでもう何もできまい。だがこれで終わりではないぞ――突き刺せ、荊鞭!」
バーティスがそう呟いた直後、カナを拘束する鞭から一斉に無数の棘が突き出る。
「――ひ……ぐッ!? ンン――――ッ!!」
全身から突き刺すような痛みが広がり、カナは声にもならない悲鳴を上げる。
「あっ……ああっ……!」
「うわ~、痛そ~」
悶絶するカナをマジェラは他人事のように見つめていた。
退魔師であるカナはこの程度の攻撃で死に至ることはない。
それでも激痛を与える神経毒が全身に周り、体より先に精神のほうが先に限界が来た。
「あ……が……っ」
痛みを与えることだけに特化した針がカナの全身を刺し尽くし、そのまま体を締め上げられて、カナの意識はそこでプツンと途切れた。
ビクンビクンと激しく痙攣していた体が、だらんと垂れる。
「ふん、失神したか」
「殺しちゃだめだよ~? これからこの子でたくんさん楽しむんだから」
「分かっている」
鞭の拘束が解かれ、カナの体が膝から地面に崩れ落ちる。
そしてそのままうつ伏せに倒れ込んだ。
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