退魔の少女達

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真・王女の淫魔 6

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「あっははー、カナちゃんの顔とろんとろんになってる。たくさん精気奪われて、たくさんイかされて、もう限界なのかなぁ?」
「はぁ……あぁ……」

何かを言い返す体力も残っていない。
両手両足を拘束された状態で精気吸収をされ続け、体を責められ続け、カナは意識を保つのでやっとの状態だった。
衣服はほとんど脱がされ、今はもうかろうじて下着が残っている程度。

「次はどこから精気吸収してあげようかなー。そうだ、こことかどう?」

不敵な笑みを浮かべながら、リリンは二本の細い触手をカナの両耳に向けて伸ばす。
ゆっくりと動く細い触手がカナの両耳の中に侵入していく。

「ひぅううッ!? やめ、ろぉ……」

普段に絶対に触れられない場所に触手が入り込んでいく感覚に、背筋がゾクゾクと跳ねる。
抵抗しようと顔をそらせば、逆にぬめりとした触手の触れる感覚がやってくる。
だからカナはヒクヒクと全身を痙攣させながらも、顔は動かさず、歯を食いしばってただただ耐えることしかできなかった。

「ひや……ぁ……ッ!」

耳の中に侵入してくる触手が少しでも触れた瞬間、無意識に甲高い声が出てしまう。
自分の口から漏れる情けない声が嫌になる。

「流石の退魔師さんでも、体のこんなところ責められるの初めてでしょ? 私知ってるよ、人間ってここ、すごく敏感なんでしょ? ほらっ」
「いいっ!? いあッ、ひぃううッ!!」

両耳に侵入した触手がうねうねと暴れまわる。
決して体に傷をつけるような責めではないものの、今まで誰かに触れられることのなかった場所を責められ、もう声を抑えることもできない。
顔を動かすことができないのに、体は意思に反してビクビクと震えてしまう。
カナは必死に首に力を入れ、少しでも体を動かさないように必死に耐え続けた。

「うひひっ、必死に耐えてるカナちゃんの顔かわいー。でもね、こんな責めはただのお遊び、本番はこれからだよ。これから何されるか、わかるよね?」

バチッ、バチッ、と耳の中から何かが弾けるような音がする。

「……っ!?」
「あははっ、怯えるカナちゃんの顔も可愛いね! さーてカナちゃんのここから吸う精気はどんな味がするのかなー?」

バチバチと鳴り響く破裂音。
鼓膜の近くで響くその音はカナにとっては轟音だった。
もしこんな場所から精気吸収をされでもしたら…………考えただけでカナの表情が焦りと恐怖で染まっていく。

「――――ない」
「え?」
「……怯えてなんか……いない……私はまだ……ッ!」

襲いくる恐怖を払拭しようと、カナは必死に虚勢を張る。
そんなカナの姿を見て、リリンはクスリと笑う。
その虚勢はリリンの嗜虐心をくすぐるだけだった。

「体ビクビクさせて、涙流しながらそんなこと言われても説得力ないよ! ほぉらっ、カナちゃんの脳みそから精気直接吸い取ってあげるッ!」


バチッ!


一際強い破裂音が聞こえたその瞬間、カナの意識は真っ白になる。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!」

頭に直接電流を流されているかのような感覚。
体の内側から奪われていけないものを奪われていく。
悔しさで涙を流し、苦しさで絶叫してしまうほどなのに、どうしてか体はその感覚を快楽として受け止めてしまう。

(だめ……全部、奪われる…………私、負け……ちゃ……)

快楽と共にやってくる脱力感。
戦う力が奪われていく感覚に、カナの戦意も消え失せていく。
瞳に映る微笑むリリンの顔を見て、こんな凶悪な相手に勝てるわけなどなかったのだと、ただただ後悔する。

(ごめん、サクラ……)

ただ一番の後悔は、この戦いに彼女を巻き込んだことだった。
こんな姿を見られたくなくてずっと視線をそらしていたカナだったが、もう一度サクラの顔が見たくて視線を巡らす。
ぼやけた視界の中、視界に入ったのはツバキの姿ただ一人。
サクラの姿は見つけることができなかった。
そして当のツバキは、自分でもリリンでもないどこかを見つめていた。
ツバキの見つめる先、そこはリリンの背後。
そこに何が――――

「てやぁあああああああッ!」

――――カナがそう疑問に思った直後、リリンの背後から声がした。

そしてリリンの右肩から左腹部にかけて亀裂が走る。

「……ッ!? なに……を……」

その一瞬の出来事に、リリンでさえ何が起こったか分からずゆっくりと背後へと振り向く。
そこには刀を振り抜くサクラの姿があった。
今のサクラはカナから清浄なる精気を受け取っている。
それは今目の前にいる淫魔、リリンを倒すすべを持っているということ。
切断された傷口から、崩壊が始まっていく。

「ぐぁあッ! 体、が……ッ!」
「まだまだぁあああッ!」

サクラはさらに追い打ちをかけようと刀を天高く掲げ、リリンの頭部に向けて勢いよく振り下ろす。

「ぐぅっ!? なんで、お前が……ッ!」

だがその一撃はどこかから現れた太い触手に拒まれる。
サクラの刀はその触手を一刀両断するが、その隙にリリンは首とわずかに繋がった左腕だけでその場から離脱する。

「なにをしているのッ! ツバキッ!」

ツバキの方を睨みながら、リリンは余裕のない声を上げる。

「いや~、なんか気分が変わっちゃって……」
「気分が変わった……だって?」

想像もしていなかった彼女の一言にリリンは呆れ、驚く。

「いやでも、私今もまだリリン様のこと崇拝してるんですよ? ただこう……人間には気分ってものがあるんですよ。私は特に気分屋で、サクラちゃんの頑張ってる姿を見たら……なんか応援したくなっちゃったんですよね~」
「おま……えぇ……ッ!」
「ああ怒らない怒らない……そもそもは私にいくらかの自我を残しておいたリリン様が悪いんですよ」

これはリリンにとってある種の実験だった。
人の意思を完全に支配してしまったら、それは意思なく動く人形でしかなくなる。
だからこそ自分を退治に来た退魔師の中で一番強いツバキだけは、他の退魔師とは違う暗示をかけた。
意思を持ち、自分を崇拝する仲間が多いに越したことはない。
だが舌を出しておちゃらけた顔を見せるツバキを見て、その実験が失敗だったと気づく。

「お前ら……お前ら全員私の支配下に置いてやるよぉッ!」

それは生まれて間もないリリンが初めて抱く怒りの感情。
その感情に呼応するように、リリンは自らの力で自分の体を再生させていく。

「させるかぁあッ!」

だがこの千載一遇のチャンスを、サクラがみすみす見逃すはずもない。
リリンのそばまでサクラが一気に近づく。

「寄るなァッ!」

リリンがサクラに向けて触手を伸ばす。
だが――――

バァンッ!

耳をつんざく音とともに、その触手が弾ける。

「な……に……?」

リリンが向けた視線の先。
そこにはうつ伏せに倒れた体勢のまま、こちらに銃口を向けたカナの姿があった。
カナが握っていた銃は硝煙と共に霧のように消えていく。
それはカナの中に残った僅かな精気を込めた最後の一撃だった。

「行け……サクラ……ッ!」
「はいッ!」

かすれるような小さな声だったが、サクラには確かにカナの声が聞こえた。
そして振り向きもせず、サクラは一気にリリンに迫る。

「こ……のぉおおおおッ!!」

無数の触手がサクラに迫る。
だがもう遅い。
サクラの間合いはすでにリリンを捉えていた。

「これでッ、終わりッ!!」

一閃。
目にもとまらぬその一振りで、リリンの首が跳ねる。

「そん……な……」

その言葉を最後に、リリンの首が霧散していく。
少し遅れて辺りに広がっていた触手たちも同様に、形を保てなくなり消えていく。
まるで霧が晴れるかのように、淫魔の領域も、不穏な空気も消えていく。

「……お疲れ様」

遠くにいたツバキがそう口にする。
彼女からはもう、操られていた時のような陰りは感じない。

「おつかれ、サクラ」

続いて、優しい口調でカナが囁く。
もうすでに立ち上がる体力すら残っていないのか、うつ伏せの体勢のままにっこりと微笑む。

「……はい、疲れました……ね……」

そう口にすると同時に、サクラはどさりとその場に倒れる。
溜まりに溜まった疲労感でもう限界だった。
だが為すべきことを為した。

久々に感じる達成感。
そして心地よい疲労感の中、サクラの意識は深く深くへ沈んでいく。
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