退魔の少女達

コロンド

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苗床の部屋 [敗北ルート 2]

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 薄暗い意識の中、激痛で目が覚める。

「いぎっ…………う、ぐっ…………ここは……?」

 手を動かそうとするも、ガチャガチャと音が鳴るばかりで動かない。

「……ッ!?」

 ようやくサクラは自分が置かれた状況に気づき、ハッとする。
 自分が背につけているのは床ではなく壁、手首には鎖が繋がれていた。

「おはよう、お目覚め?」
「……あなたは……ッ!」

 そこには予想外の人物がいた。
 艶のある金髪に白衣を纏った彼女、シエラだった。
 胸がドクンと跳ねる。
 追い求めていた人物ではあるが、決してこんな形では会いたくなかった。

 状況を確認しようと周囲を見渡すと、壁に繋がれた何人もの女性が視界に映る。
 そこはさっきまでいた部屋だった。

 真横にはさっきまで話していたはずの彼女と視線が合う。
 彼女は怯えたような、それでいて申し訳なさそうな瞳でサクラを見つめていた。
 ギュッと口を閉じて、必死に言葉を殺しているかのようだった。
 サクラが意識を失っている間に何が起こったのかも分からない。
 だが彼女のその表情を見ただけで、きっと何も喋ることができない状況なのだろうと察しがついた。
 一言で言えば、最悪の状況だった。

「よそ見しない」
「ぐあッ!?」

 強い激痛に一瞬サクラの意識が飛ぶ。
 サクラの腹部がシエラの右足で踏みつけられていた。

 ただ、踏まれる激痛とは別に、内側から何かが蠢くような吐き気を伴う痛みを感じることにサクラは気づく。
 そして視線を自分の腹部に寄せ、そこに映った光景に驚愕する。

「なに……これ……?」
「孕んだんだよ、淫魔の子を」

 その腹部はまるで、妊婦のように大きく膨れ上がっていた。
 気を失っていた一瞬のうちに、変わり果てた自分の体を見て顔が固まる。
 この先自分はどうなるのか、それを考えようとするだけで恐怖の感情が心を蝕んでいく。

「そん、な……あ……い、ゃ……ッ」
「ふふっ……さぁ、目覚めなさい」

 シエラがパチンと指を弾く。
 それと同時に、サクラの腹部が強く蠢く。

「おごっ!? あガァッッ!!?」

 感じたことのない痛み、感じたことのない快楽。
 自分の体の中、一切抵抗する手段のないその場所で、何かが暴れ出す。
 何か――――それは人工淫魔で間違いないだろう。
 サクラはこの部屋で、繋がれた彼女が淫魔を産むその瞬間を一度目にしている。
 だけど、それをイメージしたくなかった。
 自分の中に、あんなおぞましいモノが潜んでいるなど――

 ――ビチュルッ!!

「~~~~~~ッ!!?」

 サクラは目を大きく見開き、背筋が大きく反らせ、言葉にならない叫び声を上げる。
 何が起きたのか、見なくても感覚でわかる。
 自分の体の中から淫魔が出てきたのだ。

「ン”ッ……が、ン”あ”あ”あ”あ”あ”ッ!!」

 声は次第に鈍い悲鳴へと変わっていく。
 だが、まだ触手型の淫魔の先端が外に出たに過ぎない。
 触手はミチミチと音を上げながら、ゆっくりと外へ外へと伸びていく。

「随分太いわね。流石は退魔師の精気を吸って成長しただけはある。これで最高品質の人工淫魔が収穫できたわ」
「うっ……ぐぅ……ッ」

 自分の精気で淫魔が生成される。
 その事実にサクラは悔し涙を流すことしかできなかった。

「うーん、焦れったい。…………そうだ、私が抜いてあげる」
「え……あ、触らな――」

 言い切る前にシエラはサクラの秘所から伸びた触手を軽く引っ張った。

「ひぎゅうッ!!?」

 無意識に甲高い悲鳴が上がり、電流を流されたかのように体が震える。
 あまりの強い刺激にサクラは失神しかけるが、触手はまだほんの数センチしか動いていない。
 
「これは本気で引っ張らないとなぁ……」
「や……め……、死んじゃう……からぁ……」
「ねぇ退魔師さん。何弱気でいるの? あなたは私を倒しにきたんじゃないの?」
「……くッ」
「私の研究室に侵入してきて、負けそうになったらやめてだのもう嫌だの…………情けなくないの? 今日に限っては喧嘩を仕掛けてきたのはお前たちの方でしょう?」
「う、ぐうううう……ッ! 私……は…………私はッ」

 心だけは負けてはいけない。
 負けたくない。
 そんな思いが、サクラの内側からあふれてくる。

「私は屈しない! お前になんか絶対に負けな――」

 シエラの口角が上がる。
 それが目に映った瞬間、ぎゅっと心臓が縮む。
 頭の中によぎった嫌な予感は、一秒足らず現実のものとなる

「ほぉらッ!」


 ――ビチュルルルッ!!


 その瞬間、触手が一気に引き抜かれた。


「――あ」


 それは、一瞬全てを忘れてしまうほどの、あまりにも暴力的すぎる刺激だった。
 

「イ”ぎぁああああああああああああああッ!!」


 サクラの絶叫が部屋全体に反芻する。
 絶対に負けないと決意した矢先、サクラは断末魔のような声を上げながら、泣き叫ぶ。

 触手が抜けた秘所からは、粘性のある液体がどろりとあふれる。
 ヒクヒクと痙攣させながら、何度も何度も、あふれ続ける。
 壊れた蛇口のように不定期に、されど止めどなくあふれ続けて止まらない。

「あ……かはっ……………は、ひぃっ……」
「こらこら、まだ眠っちゃだめよ?」

 シエラの指がサクラの顎をクイと持ち上げる。
 サクラは飛びかけた意識を保つので精一杯だった。
 口からよだれを垂らし、だらしない表情でシエラを見つめる。

「ねぇ、ムレイワガネグモって知ってる?」
「は、ぇ……」

 急に振られた何の脈絡もない話題に、サクラはただただ困惑する。
 
「ムレイワガネグモは自然界でも特殊な生態をしていてね、ムレイワガネグモの子供は生まれた直後、一番最初に親を食べるんだよ。あぁ、なんておぞましい生態なんでしょう」
「何の……話を…………はッ!?」

 今このタイミングでなぜその話をするのだろう。
 サクラがそう疑問に思いかけたその瞬間、嫌な予感がよぎる。
 シエラが掴んでいる触手の先端がまるで口のように開いていた。
 そしてその口がサクラの方を向く。
 それはまるで、餌を貰おうとする雛鳥のような光景に見えた。
 触手が少しずつ、サクラの方へと近づいてくる。

「母親……食べ…………え、いやッ! いやぁ、来ないでぇえええッ!!」

 絶望に染まるサクラを見て、シエラは堪えきれずに笑みをこぼす。

「さ、たぁんとお食べ」

 そして掴んでいた触手を解放した。

 ――シュルルルッ

「――はぁうッ!?」

 触手は蛇のような動きでサクラの胸にまとわり付き、その先端を咥え込んだ。

「あぁッ!!?」

 吸盤のような淫魔の口に、サクラの乳首が捻り上げられる。
 触手型の淫魔は歯や消化器官を持つわけではない。
 淫魔の食事とは即ち、精気の吸収。

「ひ……あ……精気、すわ、れ……ッ! ひぅうううッ!!」

 体の中にある何かが奪われていく感覚。
 そして精気を奪われる穴埋めとして、快楽が埋め込まれていく。
 サクラは今、自分が産み落とした淫魔に捕食されようとしていた。
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