退魔の少女達

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悪夢の淫魔 8

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頭の中がピンク色に染まっていく。
もう、今の自分がどんな姿になっているのかさえ分からない。
夢の世界のカナにありとあらゆる場所に触られ、それだけでサクラは狂ったように絶頂を繰り返した。
愛撫と言うには優しすぎる、愛するペットを撫でるかのような手つきで触られるだけでサクラは痙攣し愛液を漏らしてしまう。
撫でられただけで頭は何も考えられなくなり、まるで服従してしまうかのようなその姿はまるで本当のペットのようであった。

「ふふっ、いつになったらイクの終わるのかな~? 私はサクラの体を優しくなでなでしているだけなんだけどなぁ」
「あうぅうッ!? あっ……あっ、だめ……撫でられただけでも、だめぇ……もうやっ、かな、せんぱい……あっ、ああああっ!?」
「はい、またイッた。もう百回くらいはイッたかな? 肘の内側を撫でてるだけなのに、サクラの性感帯は範囲が広いね」

度重なる絶頂を繰り返し、どれだけの時間が経ったかさえ分からない。
もしかしたらこの夢の世界には時間の概念がないのかもしれない。
永遠にも思えるこの世界でサクラは延々と犯され続ける。
エミと共に淫魔に襲われたあの山道、そこには今サクラの嬌声だけが響いている。
乾いていた山道はサクラのいる付近だけ泥のようにグチャグチャになっている。
サクラの愛液は止まることなく溢れ続けた。
体感的には自分の中に入っている水分以上の愛液が漏れているような気さえするが、きっとそれも夢の世界がもたらす作用の一つなのだろう。

『もう諦めちゃおっか』

心の奥底からそんな声が聞こえる。

『カナ先輩に犯され続けて、この夢の世界で一生を暮らすの』

もはやまともに思考することすらできないサクラは、一瞬それも悪くない選択だと思ってしまう。

「いやだ……」

だが無意識のうちにサクラは、自分の頭に響くその声に拒否の言葉を口にしていた。

「こんな……偽物の世界で……一生をすごす、なんて……やだ……」

退魔の力が使えないこの世界で、相手の要求を否定し続ける。
それだけが唯一、最後の抵抗方法だった。

『あらら、流石の私もいい加減、そろそろ落ちるものかと思ってたんですけど、なかなかやりますね、私」

心の中から響くように聞こえていた自分の声が、だんだんと実態を持ち出し、気づけばすぐ背後から囁くような声に変わっていた。

「やっぱり……あなただったんだ」
「はぁい、私ですよ」

サクラの背後から肩に手を乗せ、すぐ頬の横から語りかけられる。
そこにいるのは同じ顔をしたもう一人のサクラ。

「なんとなく……分かった気がします。あなたは、私が夢の世界にいる間に……なんとしてでも私の心を屈服させたいんですね」
「……へぇ、なんでそう思ったんですか?」
「もしもあなたがこの夢の世界で、本当に私の心を支配しているなら、そもそもこんな精神を追い詰めるような幻想を見せる必要もないはず。私の心を無理矢理捻じ曲げて屈服させればいい。でも、そうしないということは私の心が折れない以上、あなたは私を本当の意味で支配できない。もっと言うなら、私が目を覚ます前に心を支配しなければならないので焦っている、と言ったところでしょうか……」

サクラがそう言うと偽のサクラはしばらく口を閉ざした。
最初の話に食いついてきた時点であながち間違いではないのだろう。
状況は好転してないが、少しだけ手玉にとった気分だった。

「さっきまでギャンギャン喚いてた割には、案外冷静に物事が考えられるんですね」
「ふっ……じゃあ、やっぱり……」
「まァ、概ね正解ネ」

乾くような冷たい声が耳元に響く。

「ーーッ!?」

ここにいる誰でもないその声にサクラは驚く。
さっきまで誰もいなかったその場所に、黒衣を纏った青白い肌の淫魔が立っていた。

「私の名前はヤフカ、自己紹介はこれで二度目ねェ。でもこっちの世界の私が本物の私。現実世界では行動が制限されちゃうのさァ」

不気味な口調にペースを乱される。
だが、敵の目的が分かった今、サクラとてこれ以上心の隙を見せるつもりはない。

「とうとう、親玉の登場ですか……」
「フフフ、あなた本当に強い心を持っているのねェ……残念だわァ、私ではあなたの心を折ることはできなそうねェ」
「……へぇ、敗北宣言、ですか?」

不意に出てきた割には、いきなりそう告げる淫魔にサクラは拍子抜けする。
同時に、全く悔しくなさそうなヤフカの顔を見て嫌な予感もよぎる。

「ええ、そうよォ、ざ~んねん。あなたの心を折ることはできない……折れないのなら…………壊さなきゃならない」
「……こわ、す?」

その言葉を聞いて快楽とは別の震えに体が支配される。

「そう、屈服には二つの形がある。心を折って何でも言うことを聞かせるか、心を壊して言うことを聞くだけの人形に変えてしまうか、ネ。あなたは前者の選択肢を失ってしまったわァ。だから、これからはもう、お遊びみたいな責めはオワリ……なのよォ」

ヤフカの狂気に満ちたその表情を見て、冗談で言っているのではないと気づく。
サクラは無意識に後ずさる。
だがそんなサクラの動きを制すかのように、両腕が同時に掴まれる。

「どこ行くの、サクラ? まだ前戯しか終わってないよ」

右の腕は偽のカナに掴まれーー

「カナ先輩、私の責められると気持ちよくなっちゃう場所、全部全部教えてあげますからね」

左の腕は偽のサクラに掴まれる。

「ーーやっ、離してッ!」

非力な腕力で必死に抵抗するも、二人はなんともなさそうにただニヤニヤと笑っている。

「それとォ……」

ヤフカがサクラの胸に向けて指をさす。
するとヤフカの指先が仄かに光だし、そこから一直線に光線がでる。
その光線はサクラの胸へと当たり、その瞬間サクラは大きく目を見開く。

「んアッ!! アガアアアアアアァァアアッ!!」

今までに感じたこともない全身の感覚が一瞬で鋭敏になってしまったかのような感覚に、サクラは耐えきれず大声を上げてしまう。

「なぁッ!? なにを……ッ!?」
「枷を解いて上げたのよォ。言ったでしょ? 元々心を折るつもりだったけど、壊すことになったってサァ。だからあなたの心が壊れないようにするためのセーフティーはもう要らないのォ」
「そう、今までの私は精神が焼き切れないように、一定以上の快楽は享受しないセーフティーがかかってたんですよ。1000の快楽を得ても、100に抑えられてしまうイメージですね」
「でも、その枷が今外れた。今のサクラが得られる快楽に限界はなくなった、ってことだよ。楽しみだね」

今まで枷をかけられていた。
その事実にサクラは少なからず驚くが、それよりも今までの責めがつまるところ手加減されていたものだったという事実に絶望する。
相手に屈しなければ負けはしない。
ただただ耐え続ければいい。
そんな気持ちを胸に、心の奥底で仄かに保ち続けていた闘志が陰り始める。

(こんな……ッ!? こんな状態で、責められたら……ッ!)

左と右、サクラは交互に視線を動かす。
サクラの腕を掴む二人が、もし不意にサクラの体のどこかに触れようものなら、それだけで絶頂に至ってしまいそうだった。

「先輩先輩、私の今考えてること、おしえて上げましょうか? 『今体のどこか触られたらそれだけでイッちゃうよ~、触らないで~……あ、でもちょっと触って欲しいかも……』って感じですよ」
「ふふ、サクラはエッチだね。じゃあ、どこを触ってあげようかな」
「……や、やめッ」

サクラは必死に両腕を掴む二人の動向に視線を泳がす。
どこからどんな責めが来るのか、視認できたところでどうにかできる物でもないだろうが、枷を外された今絶頂に至れば正気を保てるかも危うい。

(くる……? くるッ!? いやぁ、こないでッ!)

サクラは心を乱しながら、彼女たちが仕掛けて来るタイミングを待ち構える。
彼女たちの腕が、体のどこへと伸ばされるのか必死に視線を巡らせる。
しかし彼女たちの責めは、サクラの想定外の場所からやってきた。

「「ふーっ」」
「……ぁッ!?」

両耳に吹きかけられる吐息。
耳の神経さえも鋭敏になっているサクラの体は、それを快楽として捉えてしまう。

「ひぁあああああああああああああッ!!!」

鋭敏になった体が絶頂に至るには、本当にその程度の刺激で十分だった。
全身を痙攣させながら、サクラの秘所はパクパクと呼吸するように開閉する。
その度、ショーツ越しに愛液が噴水のように溢れだす。

「ひぁ……あっ……ああ……っ!」
「あーあ、だらしないなぁ、私」
「もう触れなくてもイッちゃうんだね。可愛いよ、サクラ」

サクラは首の座らなくなった赤子のように、だらんとした体勢で絶頂の余韻に浸る。

(だ、だめ……こんなの……意識を保てなーー)
「そうそう、この世界ではねェ、気を失うこともできないのよォ。失神して逃げるなんて道はないの。精神を焼き切るレベルの快楽に正面から打ち震え続けなさァい」
「そん……な……」

サクラはその言葉に絶望する。
なにせまだ息を吹きかけられただけでこの有様なのだから。
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