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人工淫魔 4
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見えない淫魔に首を締められ、スライム状の淫魔に体と口を取り押さえられ、周囲は複数の淫魔たちに完全に囲まれている。
この状況から逃げ出すのは絶望的、だがここで諦めるわけにはいかない。
にじり寄る淫魔に囲まれる中、サクラは一体の淫魔に目をつける。
(もう、これしかない……ッ!!)
サクラは意識を集中させ、右手にもつ刀を紐状に形状変化させる。
カコが影を操る姿を見て、自分も具現化させた武器の形状を変化させることでより有利に戦いを進められないかと常日頃から試していたのだ。
ただこの技術は通常より高い集中力を必要とする。
形状変化させた紐が元の形に戻る前に、サクラは手首の力だけを使って一体の淫魔に向けて紐の先端を放り投げた。
そしてそれは目的の淫魔に絡みつく。
それを確認するのと同時に、サクラはまた手首の力だけを使って、手に握った紐を力強く引く。
空気のように軽いその淫魔は簡単に引き寄せられた。
引き寄せたのは、あのふわふわと浮遊しながら放電する淫魔だ。
その淫魔がサクラの胸へと近づき、そして触れる。
「くぁアアアアッ!!」
通電しやすいスライムの体を通して、全身に電流は電流が流れる。
同時にサクラを拘束する透明な淫魔にも通電した。
感電して淫魔の拘束が緩む、その一瞬をサクラは見逃さなかった。
紐状になっていた刀を元の姿に戻し、背後にいる見えない何かを斬りつける。
「キアアアアアアッ!!」
奇声を上げる淫魔。
見えはしないが消滅していくのを感じる。
次は放電する淫魔に刀を突き立てた。
「キィイイイッ!!」
非常に脆いその淫魔は少し刀が触れただけで消滅してしまった。
スライム状の淫魔に関しては放電に耐えられなかったのか、自然と体から剥がれ落ち、足元に落ちるとそのまま消滅していった。
一瞬、周囲がしんと静まる。
淫魔たちもこの展開は予想していなかっただろう。
予期せぬ展開に混乱しているに違いない。
「さあ、次はどなたですか?」
そんな挑発するような言葉が淫魔にも届いたのだろうか、一体の淫魔がサクラに触手を伸ばす。
だがサクラはその触手を軽く斬り払う。
そしてその淫魔の懐に潜り込み、胴体を真っ二つにする。
統率の取れなくなった今、淫魔の攻撃など大したものではない。
「うおあぁああああああッ!!」
サクラは刀を両手に持ち、狂ったように淫魔たちを切り刻んでいく。
二体、三体、四体……。
淫魔たちがどんどん霧となり消えていく。
そして気づけば残る淫魔はあと一体になっていた。
小さな袋のような形をした淫魔。
明らかに好戦的ではなく逃げ回るような動きをしていたせいか、その小さな淫魔が最後の一体となってしまった。
サクラは歩みながらその淫魔を部屋の隅に追いやり、刀をゆっくりと振り上げる。
そして斬り払う。
「ぴギィーーーーッ!!」
「ん……ッ!?」
そして最後の淫魔を斬りつけた瞬間、謎の粉末を大量に吹き出し淫魔は消滅した。
「えほッ! けほッ!」
サクラは宙に舞う謎の粉末をいくらか吸い込んでいしまい、慌てて口を手で塞ぐ。
そしてすぐさまその場を離れた。
何らかの毒性を持っている可能性が高いが、まだ体に異変はない。
咳き込むサクラの元に二人分の足音が近づいてきた。
パチパチと薄い拍手の音が聞こえサクラはそちらを振り向く。
「お、おめでとーございまー……す……」
「す、すごいねぇ、お、お姉ちゃん……。さ、流石は退魔師だねッ! すごいすごいッ!」
硬い笑顔を浮かべる双子の淫魔にサクラは刀を突きつけた。
「「ひぃいいいいッ!!?」」
寸分も違わぬタイミングで尻餅をつく二人。
この二人が淫魔として戦う力を持たないというのは間違いなさそうだ。
今のところ、本当にただの人間の双子にしか見えない。
それでも淫魔の香りを嗅ぎ分けることができるサクラは、目の前で涙目になっている二人が間違いなく淫魔であることは分かる。
だからこそ、調子が狂わされてしまう。
「……はぁ、早く次の部屋へ案内してください。向こうの扉はあなたたちじゃないと開けられないのでしょう?」
「あ……は、はい……」
二人は涙を拭い、立ち上がる。
「そ、それではこちらですッ」
「ご、ご案内いたしまーす……」
そして大げさな身振り手振りでサクラを出口へと誘い、サクラもそれについていく。
「……こ、怖かったね、お姉さん」
「……も、もう怒らせないようにしなきゃだね」
前を歩く二人が小声でそんなやり取りをしていた。
二人が出口まで近づくと自動でドアが開かられる。
これで忌々しいこの部屋からも離れられる、そう思った時だった。
「ん……っ!?」
急に頭に靄がかかったような感覚が走り、サクラは膝を地面につく。
「大丈夫?」
「どうかしましたか?」
「いや、大丈夫です」
サクラは頭を押さえながら立ち上がる。
あんなことがあった後で「どうかしましたか?」と聞かれたことに少し苛立ったが、あまり深く考えないことにした。
そしてまた歩き出す。
目頭が熱い気がするのは、先ほどの淫魔が出した粉を吸った影響だからだろうか。
あれが何らかの毒だとして、まだその正しい効果は掴めていない。
(この先もさっきのような淫魔が出てくるのかな……)
一抹の不安を覚えながらサクラは二つの影の後ろをついていく。
この状況から逃げ出すのは絶望的、だがここで諦めるわけにはいかない。
にじり寄る淫魔に囲まれる中、サクラは一体の淫魔に目をつける。
(もう、これしかない……ッ!!)
サクラは意識を集中させ、右手にもつ刀を紐状に形状変化させる。
カコが影を操る姿を見て、自分も具現化させた武器の形状を変化させることでより有利に戦いを進められないかと常日頃から試していたのだ。
ただこの技術は通常より高い集中力を必要とする。
形状変化させた紐が元の形に戻る前に、サクラは手首の力だけを使って一体の淫魔に向けて紐の先端を放り投げた。
そしてそれは目的の淫魔に絡みつく。
それを確認するのと同時に、サクラはまた手首の力だけを使って、手に握った紐を力強く引く。
空気のように軽いその淫魔は簡単に引き寄せられた。
引き寄せたのは、あのふわふわと浮遊しながら放電する淫魔だ。
その淫魔がサクラの胸へと近づき、そして触れる。
「くぁアアアアッ!!」
通電しやすいスライムの体を通して、全身に電流は電流が流れる。
同時にサクラを拘束する透明な淫魔にも通電した。
感電して淫魔の拘束が緩む、その一瞬をサクラは見逃さなかった。
紐状になっていた刀を元の姿に戻し、背後にいる見えない何かを斬りつける。
「キアアアアアアッ!!」
奇声を上げる淫魔。
見えはしないが消滅していくのを感じる。
次は放電する淫魔に刀を突き立てた。
「キィイイイッ!!」
非常に脆いその淫魔は少し刀が触れただけで消滅してしまった。
スライム状の淫魔に関しては放電に耐えられなかったのか、自然と体から剥がれ落ち、足元に落ちるとそのまま消滅していった。
一瞬、周囲がしんと静まる。
淫魔たちもこの展開は予想していなかっただろう。
予期せぬ展開に混乱しているに違いない。
「さあ、次はどなたですか?」
そんな挑発するような言葉が淫魔にも届いたのだろうか、一体の淫魔がサクラに触手を伸ばす。
だがサクラはその触手を軽く斬り払う。
そしてその淫魔の懐に潜り込み、胴体を真っ二つにする。
統率の取れなくなった今、淫魔の攻撃など大したものではない。
「うおあぁああああああッ!!」
サクラは刀を両手に持ち、狂ったように淫魔たちを切り刻んでいく。
二体、三体、四体……。
淫魔たちがどんどん霧となり消えていく。
そして気づけば残る淫魔はあと一体になっていた。
小さな袋のような形をした淫魔。
明らかに好戦的ではなく逃げ回るような動きをしていたせいか、その小さな淫魔が最後の一体となってしまった。
サクラは歩みながらその淫魔を部屋の隅に追いやり、刀をゆっくりと振り上げる。
そして斬り払う。
「ぴギィーーーーッ!!」
「ん……ッ!?」
そして最後の淫魔を斬りつけた瞬間、謎の粉末を大量に吹き出し淫魔は消滅した。
「えほッ! けほッ!」
サクラは宙に舞う謎の粉末をいくらか吸い込んでいしまい、慌てて口を手で塞ぐ。
そしてすぐさまその場を離れた。
何らかの毒性を持っている可能性が高いが、まだ体に異変はない。
咳き込むサクラの元に二人分の足音が近づいてきた。
パチパチと薄い拍手の音が聞こえサクラはそちらを振り向く。
「お、おめでとーございまー……す……」
「す、すごいねぇ、お、お姉ちゃん……。さ、流石は退魔師だねッ! すごいすごいッ!」
硬い笑顔を浮かべる双子の淫魔にサクラは刀を突きつけた。
「「ひぃいいいいッ!!?」」
寸分も違わぬタイミングで尻餅をつく二人。
この二人が淫魔として戦う力を持たないというのは間違いなさそうだ。
今のところ、本当にただの人間の双子にしか見えない。
それでも淫魔の香りを嗅ぎ分けることができるサクラは、目の前で涙目になっている二人が間違いなく淫魔であることは分かる。
だからこそ、調子が狂わされてしまう。
「……はぁ、早く次の部屋へ案内してください。向こうの扉はあなたたちじゃないと開けられないのでしょう?」
「あ……は、はい……」
二人は涙を拭い、立ち上がる。
「そ、それではこちらですッ」
「ご、ご案内いたしまーす……」
そして大げさな身振り手振りでサクラを出口へと誘い、サクラもそれについていく。
「……こ、怖かったね、お姉さん」
「……も、もう怒らせないようにしなきゃだね」
前を歩く二人が小声でそんなやり取りをしていた。
二人が出口まで近づくと自動でドアが開かられる。
これで忌々しいこの部屋からも離れられる、そう思った時だった。
「ん……っ!?」
急に頭に靄がかかったような感覚が走り、サクラは膝を地面につく。
「大丈夫?」
「どうかしましたか?」
「いや、大丈夫です」
サクラは頭を押さえながら立ち上がる。
あんなことがあった後で「どうかしましたか?」と聞かれたことに少し苛立ったが、あまり深く考えないことにした。
そしてまた歩き出す。
目頭が熱い気がするのは、先ほどの淫魔が出した粉を吸った影響だからだろうか。
あれが何らかの毒だとして、まだその正しい効果は掴めていない。
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