退魔の少女達

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針の淫魔 2

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正面から降り注ぐ無数の針をサクラはすんでのところで避け続ける。

「どうした退魔師。さっきから避けてばかりじゃないか」
「くっ……!」

その指から放たれる淫魔の攻撃を防ぐのに精一杯で、サクラは後手に回っていた。
淫魔の針のような爪は射出された後も、ほぼ一瞬で再生するようで、敵の隙をつく暇もない。
今までに出会ったどんな淫魔よりも攻撃的だった。

「はぁ……はぁ、淫魔って人を殺したりしないって言ってませんでしたっけ?」
「殺しはしないよ、少し動けなくするだけさ!」

正面から飛んでくる針をサクラは一薙ぎで斬り落とす。
距離を詰めたいところだが、至近距離に近づけば近づくほど敵の攻撃を防ぐことが難しくなる。
いっそのこと刀身を投げつけて攻撃しようかとも思ったが、一瞬でも防御の手段を失うのはまずい。
様々な攻撃シチュエーションを想像するが、どんな攻撃を仕掛けようと、どうしても隙を見せることになる。
しかし当然ながら攻撃しなければ勝ち目はない。
それを理解していてもサクラは敵に手を出すことが出来なかった。

「避けているだけで勝てると思っているなら避け続けるがいい。このクラケイスの攻撃を凌ぎ切れると本気で思っているならな!」
「……ッ!?」

クラケイスと名乗った淫魔は全ての指と、さらに鋭く尖った髪の一本一本をサクラへと向ける。
幾重もの針の先端が、その延長線上にサクラの体を捉える。
クラケイスはそれら全てを、まるで散弾銃のように一気に射出した。

開けた商店街の中心に立つサクラに、その猛攻を避ける術はない。
ならばとばかりにサクラは避けることをやめ、受けに徹する。

「せやああああああッ!!」

神経を研ぎ澄まさせ、自分に襲いかかる針の一本一本を的確に払い落としていく。
しかし、それでも襲いくる無数の針の全てを受けきることは出来なかった。

「はぁ、はぁ……」

全ての針が射出された後、無数の針が散らばる地面の上に、サクラは息をあげながら立っていた。
直撃は避けられたものの、その体には無数の傷跡が残っており、衣服もボロボロになっていた。

「ほう、致命傷は避けたか」

そう言うクラケイスの様子をサクラはじっと見つめる。

(指先から針が伸びていない……今がチャンスだ……)

サクラはまだ冷静さを保っていた。
クラケイスは常に指先から針のような爪を出し、それを射出した後もすぐに再生させていた。
だが今のクラケイスの指には針のような爪が一本も生えていない。
心なしか髪のように覆っていた無数の針も、いくらかボリュームダウンしているように見える。
つまり今クラケイスは針を再生させる力を残していない。
今なら、敵に近づいてその体を切り裂くことができる。
このチャンスを逃すべく、サクラは地面を強く蹴り、一気にクラケイスに近づいた。
ーーつもりだった。

「え、あ……あれ?」

サクラはその場から一歩も動けていなかった。
いくら動けと命じても、その体は動かない。
おかしい、確かに体に多くの傷が出来てしまったが、退魔師の体がこの程度で根をあげるなどありえない。
次第にサクラの体はピクピクと震えだし、二本の足で立つことすらままならなくなる。
刀を杖のように地面に突き立て、ようやく立っていられるような状況になってしまった。

「致命傷さえ避けられればセーフ、なんて考えていたんだろう。甘いな退魔師」
「く……そ……ッ!」

その言葉でサクラは自分の体に何が起きたのかを、おおよそ察した。
毒だ。
おそらく針の先端には、麻痺効果のある毒が含まれていたのだろう。
毒はどんどんサクラの体を侵食してゆき、全身が痺れ、まるで自分の体ではないかのようだった。

クラケイスはカツカツと甲高い足音を立てながら、サクラに近づく。
もしサクラが刀を振るうことができれば、1秒と経たずに敵を真っ二つに切断できるだろう距離にまで迫る。
だというのにサクラの体はまるで言うことを聞かない。
今サクラにできることといえば、相手を睨み強く歯をくいしばることだけだった。

「私は淫魔だ。元々人を殺すようにはできていない。直撃を避けることよりも、この針にどんな効果があるのか、もっと警戒すべきだったな。まぁどちらにせよ理解したところで結果は変わらなかったと思うが」

全くもってその通りだった。
頭の中が悔しさで一杯になる。
そんな悔恨の念にかられるサクラの目前で、クラケイスは指先から一本の針を新たに作り出す。
妙なオーラを放つその針は今までの針とは何かが違うと、サクラは感覚的に理解した。

「これは魔針と呼ばれる私の魔力を込めて作った特別な針。殺傷力は持たないが、強い刺激と強力な毒性を持つ。退魔師、これにお前が耐えられるのか見ものだな」

クラケイスは左手でサクラの顎を撫で上げるように持ち上げ、右手の指先から生えた針をサクラの鎖骨の上あたりに突き刺した。

「……ぃ、あ……ああっ!! ああああああああああああッ!!」

首筋から走る強烈な痛みに、サクラは悶絶する。
針を刺されただけとは思えない痛み。
激痛に頭の中を支配されていく。

「なに……これ……抜けないッ! んんんんッ、抜けないぃッ!!」

その針はすでにクラケイスの指からは分離しており、サクラは体に刺さったままの針に手をかける。
痙攣する腕をなんとか動かし、自分の体に刺さった針を抜こうとするがビクともしない。

「言っただろう、それは私の魔力でできた針。そもそも実体がないのだ」
「実体が……ない……?」
「そう、その針は今お前に物理的に刺さっているというよりは寄生している状態に近い。もしかしたら退魔の力で浄化することもできるかもしれないが、果たして今のお前にそれができるかな?」
「うっ……ぐうっ……!」

サクラは必死にその針に退魔の力を込めようとするが、頭の中を激痛で支配され、まるで集中することができない。
実体がないゆえに針で刺されても血は出ないが、このままでは頭が焼き切れてしまいそうだった。

「うぐっ……く、そ………ったい……、イタイ……ッ!」

どんなに強く針を握りしめても、針はビクともしなかった。
止まらない激痛に、サクラの目元からは涙がボロボロと溢れていく。

「情けない姿だ退魔師。痛いのだけでは苦痛だろう? もう一本くれてやる」
「何を……ッ! あああッ!」

サクラがクラケイスの顔を見上げる頃には、すでにサクラの太ももに新たな針が刺さっていた。
太ももから走る激痛を覚悟するサクラだったが、どうも様子がおかしい。
そしてほんの数秒後、激痛とは違う刺激にサクラは悶絶する。

「んああああああっ!! あついッ! なに、これぇッ、うああああぁぁあッ!! 足が、焼けるぅッ!!」

針を刺された太ももが燃えるように熱い。
まるで焼きゴテを突きつけられているかのようだった。
サクラはもう立っていることすらできなくなり、尻もちをつくような形で地面に倒れこむ。

「あグッ、あぁアアアアアッ!! このっ、抜けろッ! 抜けろぉおッ!!」

どんなに引っ張っても力で抜くことなどできない。
それでもサクラはなんとか太ももに刺さった針を引き抜こうとする。
暴力的な激痛と熱さのせいで、もはやサクラは完全に冷静を失っていた。

「イ、ぎ……ッ! あ、あつい…………イッ……たい……ッ!! うっ、ングウううううッ!!」
「無様だな退魔師、ほら、三本目だ」
「だめえええええええぇぇええッ!!」

サクラの横腹に三本目の針が突き刺さる。

「ああああっ!! なにっ、これぇッ! 痒いッ! うあああっ、痒いぃっ!!」

襲ってきたのは尋常ではない痒み。
サクラは針で刺された根元を指で掻き回そうとするが、痙攣した指先では自分の肌を搔くことすらままならない。
結局サクラはその痒みに対して悶絶することしかできない。

「いや、いやあぁぁあアアアアアッ!! 壊れるッ! 頭壊れるぅううッ!!」

涙と涎を垂らしながら、サクラは絶叫し続ける。
痛みと熱さと痒みに耐えながら、もう自分の感覚神経が何をどう感じてっているのかさえ分からなくなっていく。
そんなサクラをさらに追い詰めるかのように、その瞳には最悪の光景が映っていた。
クラケイスはその指先に新たな針を生成していた。

「あ……いや…………いやぁあッ! ダメッ、これ以上はッ!!」
「この針を刺したら、次はどうなると思う? そうだな、せっかくだから教えてやろう」

クラケイスはサクラを無視して、聞きたくもない情報を淡々と語る。

「この針は特別だ。これに刺された瞬間、今お前を支配している感覚を全て別のものに書き換える。別のものとは、なんだと思う」
「……い、いや…………知らない、知りたくないッ!」
「ふんッ、つまらない女だ。じゃあ正解は……自分の体に聞くといい!!」
「ンあ……ッ!!」

サクラの腰に四本目の針が突き刺さる。
その瞬間、ドクンと強く鼓動が跳ねる。
体の中で暴走していた痛みが、熱さが、痒みが、みるみる引いていく。
それと同時に自分の中の何かが書き換えられていくような、そんな感覚が溢れていく。
そして書き換えられた感覚は、自分のよく知る感覚であると理解したくないのに理解してしまう。

「あ……ああ、いや…………これ……だめ………気持ち、いい、の……」
「そう、お前が今感じている感覚は全て快楽へと変換される。さぁ、悶えろ、退魔師!」
「あ、ああああッ! ふあぁぁああああああああああああッ!!」

三本の針から与えられる感覚は、腰に刺さった四本目の針により全て快楽へと変換される。
暴力的な激痛も、燃え盛るような熱さも、身悶えるような痒みも、今は全てがそれらと同等の快楽としてサクラの体に襲いかかる。
当然、耐えられるはずなどなかった。

「あギぃッ!! イ、イグ……ッ! ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!! き゛も゛ち゛い゛の゛と゛め゛て゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛ッ!!」

針から伝う感覚は、サクラの肌に刺さり続けている限り止めることはできない。
サクラが自らの力で針を抜かない限り、この快感が止まることはないのだ。
しかし快楽に頭を犯されたサクラに、針を抜くことなど不可能だった。

「ん゛あ゛ぁ゛……あ゛ぁ゛ッ…………あ゛ぁ゛う゛……ッ!! あ゛……あ゛あ゛……」
「大丈夫か、高そうなショーツがビショビショだぞ。これはもう着れないな」

継続的に与えられる快楽がサクラの体を絶頂へと誘い続ける。
麻痺による痙攣なのか快楽による痙攣なのか、サクラは体をビクビクと震わせながら何度も何度も絶頂する。
カコに着せられたフリルのついた黒いショーツは、サクラの愛液でぐっしょりと濡れきっていた。
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