退魔の少女達

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密愛の女王 3

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クイーンという言葉を聞いたとき、カナは半ば勝利を諦めていた。
それほどまでにクイーンと呼ばれる存在は、一介の退魔師程度では敵う存在ではないのだ。
『もしもクイーンに遭遇したらその場からすぐに立ち去り上層部へ連絡しろ』
そうカナは教わってきた。
立て続けに現れる意思を持つ上級淫魔達に違和感は抱いていたが、まさか今目の前にこんな形で相対するとは思ってもいなかった。
もしも相手がクイーンであるとすぐに判断できていたら、この場から逃げ出し救援を呼ぶことができただろうか。
いや、それはサクラをその場に置いていくということになる。
どちらにせよカナはきっとその選択を取ることはできなかっただろう。
これは退魔師である以上、いつかこうなる運命だったのかもしれない。


 ***


「ふぁうううぅッ!?」

カナの右胸の先端にサクラの口が触れる。
制服を裾から捲られ、ブラを外され、露わになった乳房をサクラにむしゃぶるように責められる。
そして空いたもう片方の乳房は、サクラの手に揉みしだかれた後、その先端を細い指先で摘まれる。

「イぎいいいいいぃいッ!!?」

いつも隣で子犬のように付いて回る後輩に胸を愛撫され、甘い声が漏れ出してしまう。
そしてそれこそ子犬のように、申し訳なさそうな顔で上目遣いをするサクラと視線が重なる。

(サクラ……だめ、そんな顔で……見ないで……)

体がカコにより操られているということはおおよそ見当がつくが、それでも後輩に責め立てられているという現実は変わらない。
仰向けにされたカナは両手両足を影に拘束され、サクラからの責めを歯を食いしばって耐える。

「うっ……ぐぅ……ッ!」
「カナせんぱ~い。そんな苦しそうな顔しないでさぁ、大口開いてあんあん叫んじゃおうよ」

すぐ真横から囁かれる、クイーンの少女の声。
耳に触れるその息遣いすら、カナの背筋をビクビクと震わせてしまう。

「お前なんかの、言いなりに……あっーー」

ーーなってたまるか。
そう言い返そうとして、カナはクイーンの瞳と目を合わせてしまう。
その吸い込まれるかのような、紫色の双眸に。
そしてその瞬間、胸がドクンと跳ねる。

まただ。
あの瞳を見るだけで、心臓を鷲掴みにされた挙句ポッカリと穴が空いてしまったような、そんな得体の知れない感覚に襲われる。
媚薬とは違い、体ではなく心の感度を操られているかのような感覚。
あるいは飢えや求愛の感覚に近いのかもしれない。
空っぽになった心の中を何かで埋めたくて埋めてくて仕方なくなる。

「あっ、あっ…………あああぁあっ!! なにッ、これ……ッ!?」

何かに怯えるような声を出すカナ。
そんなカナの震えを抑えるかのように、カコはカナに抱きつく。

「ねぇカナせんぱい。大好きな女の子に滅茶苦茶にされるのってすっごく気持ちいよね」
「はっ、はっ……なに……を……?」

高鳴る鼓動を抑えるので必死なカナは、その意図の分からぬ問いかけに答えられるほどの余裕はない。

「今、私がせんぱいに何をしたのか教えてあげようか?」

カコは今にも唇が触れてしまいそうなほど、カナに顔を近づける。

「や、やめ……」
「キスされるのイヤ? キスされるの怖い? ふふっ、だってキスしただけでイっちゃったもんね。恥ずかしいよね。でもさ、気付いてる? せんぱい今、自分から顔を近づけようとしてるよ」

「……え?」

言われて気づく。
うつ伏せで拘束されている状況にも関わらず、カナは地面から頭を浮かせ目の前にいるカコの顔に近づけていた。

「ーーッ!?」

言われて初めて気付いたのか、カナはすぐさま頭を引いた。

「あはは、せんぱい、嫌がってる体を装ってるけど、ほんとは私とキスがしたくてしたくて貯まらないんだよねー。かーわいいー」
「ち、違うッ!!」

明らかに焦りを見せるカナ。
顔を赤らめ弁明するその姿に説得力はまるでなかった。

「違う? ううん、全然違くないよ。だってせんぱいはもう私に魅了されているんだから」
「魅了……?」
「そう、私は人を魅了させる力を持つ。せんぱいの胸が今こんなにドクドク言ってるのは私の目を見てからだよね」
「あの、紫色の……」
「そうそう、だからね、カナせんぱいはツンデレかまして気づいてないふりしてるけど、今頭の中は私のことが大好きって気持ちでいっぱいになってるはずなんだよ」
「そんな……そんなはずは……」

言い返そうにも続きの言葉が出ない。
人から言われて初めてそれが恋であると気づくことができる。
カナの心は今そんな気持ちに近いのかもしれない。

「女の子ってのは不思議でさ。どんなに抵抗心の強い子でも、大好きな人からの責めには絶対に勝てないんだよ」

カコの顔が近づく。
このままでは唇を奪われる。
そう思ったカナは顔をそらす。
しかし、その刺激は想定していないところからやってきた。

「れろっ」

吐息と共に耳を舐めれれる感覚。
それを脳が感じ取った瞬間、背筋がビクビクと震え信じられないほどに反り上がる。

「ひああああああぁああああッ!!」

叫び声をあげながらカナは潮を吹き上げる。
認めたくないのに、カコに触れられ、舐められ、それだけで心に空いた穴が埋まっていくような感覚に陥る。

「ぁ……いや、ちがッ…………こんな……」

どんなに認めたくなくても、心の充足感は満たされていく。

「ね、言ったでしょ。大好きには勝てないんだよ。ふふっ、まぁ耳舐めただけで潮吹くとは思わなかったけどさ」

満たされる気持ちと悔しいと思う気持ちが入り乱れ、もうカナは冷静ではいられなくなる。

「それにしてもカナせんぱいはなかなかだよ。今まで私が落としてきた退魔師連中はちょっと目を合わせただけで、ただ命令を聞くだけのワンちゃんみたいになっちゃうのに、カナせんぱいは必死に耐えようとして、すっごく可愛い。それにサクラせんぱいも…………あっ、そっか」

カコは何かに気付いたかのように、ポンと手を叩く。

「本当に好きな人が目の前にいるから抵抗心が湧いちゃうのかもね」

そう言葉にした直後、影に体を操られていたサクラの体が浮き上がる。

「なっ、やぁ………っ!」

もちろん抵抗など一切できず、サクラの体は影に無理やり動かされる。
そしてサクラはカナのすぐ横で膝立ちの体勢にされ、正面にはニヤつくカコの顔がある。

「精気を失い、一切の抵抗力を持たないサクラせんぱいは私の魅了に耐えられるかな?」
「ひっ……」
「やめろッ!」

サクラは息を飲み、カナは怒号をあげる。
だがこの場で主導権を持つカコは、二人の意思を尊重するつもりなど一切ない。
その瞳が紫色に光り、サクラはそこから目を離せなくなる。

「ぁ……ああっ! んああああああっ!! なに……これっ…………こころが、潰れちゃう……うぁああんっ!!」
「見るなサクラッ! 見ちゃダメだッ!」

その声はもうサクラには届かない。
どんなに胸が苦しくなろうと、サクラはカコの瞳から目を離すことができない。

「私は魅了される子がどんな気持ちなのか、全然わからないけどさ。前に私が可愛がった退魔師の子は、心が犯されるような気分って言ってたなぁー。ねぇサクラせんぱい。サクラせんぱいの一番好きな人はだぁれ?」
「ぅ…………あ……カナ、せん……ぱい……」

苦しそうな声を上げながらも、サクラはカナの名前をあげる。
そんな後輩の姿にカナは息を飲む。
だが、その言葉を聞いたカコは見るからに機嫌の悪そうな表情に変わる。

「ふーん、生意気」

紫色の輝きがより強くなる。

「んああああああっ!! だめぇっ!! 頭壊れるッ!! いやああああっ、たすけッ、カナ先輩ッ!! カナせんぱぁいッ!!」
「サクラッ…………サクラッ!!」

目の前で涙を流しながら悶え苦しむ後輩の前で、カナはただその名を叫び続ける。
それしかできなかった。

「さぁサクラせんぱい、もう一度聞くよ。あなたの一番好きな人は?」
「カナ先輩っ!! 私には、カナ先輩だけなんだぁッ!! あっ、うああああああああぁあッ!!」
「へぇ、滅茶苦茶強情。じゃあ私も強情になっちゃおうかなッ!」
「ーーッ!!? んむぅーーーーーーーーッ!!」

目を合わせたまま、カコはサクラと唇を重ねる。
そして拘束され動けないサクラの体を指で撫でまわす。
太もも、背中、へそ、首筋。
身体中を撫でまわし、そのたびサクラの体はビクビクと震える。

「ンンッ!! ぷぁっ、ダメっ……これ、好きになる……ッ!! 好きになっちゃーーぁンンッ!!」

二人は何度も何度も唇を重ねる。
目を合わせたくないのに、その艶やかな紫色の瞳から目を離すことができず、視線で繋がったまま舌を絡ませる。

「んんっ、あむっ……ん、ンンッ」
「んぐっ、んむぅッ…………ぁん、ぅんッ」

最初こそ嫌がる態度を見せていたサクラだが、次第にその表情は蕩けていく。
最終的にはもはや互いに求めあうように、唇を重ね合っているように見えた。

「だめッ…………サクラ……呑まれないで……」

まるで見せつけるかのような二人の行為を、カナはただただ見つめることしかできない。
何度カナが声をかけようと、その声がサクラに響くことはなかった。
そしてそれがカコの魅了の力によるものなのかどうかは分からないが、カナはその光景を見るだけで心に空いた穴をグチャグチャにかき混ぜられるかのような気分になった。



「んぁっ…………ねぇ、サクラせんぱい。私のこと、好き?」

カコは一度唇を離し、尋ねる。
蕩けた顔。
だらんと空いたままの口。
焦点の合わない視線。
震える体。
朦朧とした意識の中、サクラは無意識に答えた。

「…………す、好き……カコちゃん、好きぃ……」

その言葉を聞いて、カコの口角が上がる。

「ふふっ、そっか。じゃあもっとキスして欲しい?」
「うん……もっと、欲しい……」
「いいよ、いっぱいしてあげる」

そう言ってまた二人は激しく唇を重ねあう。
カナは唇を噛み締め、ただただその光景を見つめていた。
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