退魔の少女達

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銃器の淫魔 7

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おぞましい感覚だった。
とっさにサクラの体をかばった直後、背中に今まで感じたこともない衝撃が走った。
初めは銃弾で背中を貫かれた痛みなのだと思ったが、少ししてそうではないことが分かった。
全身から気味の悪い汗がブワッと溢れ、体全身にムズムズした感覚が走る。
そこで相手が淫魔であるということをカナは思い出した。

早く身を隠さなければーー。
そう思いながらも体が思うように動かず、二度目の銃弾を首筋に受けてしまう。
服越しではなく直接肌に受けたその銃撃は、一撃目よりもずっと鮮明に体に快感を刻んだ。
後輩の前で嬌声を上げ、背筋から腰にかけての震えを止めることができない。
きっとあそこでサクラが状況に気づいていなければ、カナは確実に三度目の銃撃を受け絶頂へと導かれていただろう。
挙げ句の果てに震える体を抑えることができず、淫魔の元へ後輩であるサクラを一人で行かせてしまった。
サクラを助けるため、止むを得なかったとはいえ完全に失態だった。
結果的にサクラは一人で淫魔と戦うことになってしまったのだからーー。



「んぁ……あっ、立て…………立てよッ、私の足……ッ!」

息は荒れ、顔を赤らめながらもカナは立ち上がろうとする。
サクラが保健室から去って数分後、カナはまだその足で立ち上がれずにいた。
保健室のベッドを掴んで立ち上がろうとするが、思うように動かない足のせいですぐに地面に崩れてしまう。

「あうッ…………くっ……そ………」

早くサクラの元へ助けに行かなければならないのに、まるで体の中で何かが蠢いているかのように腰が震えて動けない。
銃弾を扱うあの淫魔とサクラの刀ではおそらく相性が悪いだろう。
もしもあの銃弾にサクラが撃ち抜かれたらーーそれを考えるだけでゾッとする。

癒しの術での回復を試みているが、精神が安定しない今その効果は薄い。
体が回復するのを待つことしかできないのか……。
諦めに近い心境に陥りそうになったその瞬間、カナは一つの妙案を思いつく。

(この体の中で暴れる快感を解放できればーー)

カナの右手が、自分の胸へと近づく。
好都合にも今保健室には誰もいない。
しかし、そんなことをしてもいいのだろうか?
サクラは今まさに淫魔と死闘を繰り広げているかもしれないと言うのに。
カナの右手が震えだす。
だが、それでも……それでも、これがサクラの元へ行く一番の近道なのだとしたらーー。
カナはそう自分に言い聞かせる。

「サクラ、ごめん……」

そしてその手を、自分の本能へと委ねた。

「んっ……ああっ……ッ!」

胸をぎゅっと掴むとそれだけで嬌声が漏れる。
保健室にカナの甘い声が反響する。
入り口や窓の外を気にしながら、カナはできるだけ声を上げないように口をつぐむ。

「んっ……ンンッ……」

それでも静かな甘い声が漏れ続ける。

今サクラが戦っているかもしれないという状況で、学内という公共の場で、自分は自慰行為をしている。
それは今まで誰かを守るために生き続けてきたカナにとって、心臓を掴まれるような背徳感だった。
今までに感じたことのない、不安定なリズムで胸が鼓動しているのを感じる。
そしてそれは皮肉にも、カナの性感を高めてしまう。
自分はやってはいけないことをやっているという背徳感に、秘所の奥をギュッと締め付けられているかのようだった。

カナは胸だけでは満足できなくなり、左手をスカートの中へと伸ばす。
濡れたレースの下着に触れ、その突起軽くを摘む。

「んああああっ!?」

室内に響くほどの嬌声に、咄嗟に口を右手で塞ぐ。
ほんの少し、軽く触れただけのつもりだった。
にも関わらず、まるで電流が流れたかのように全身がビクビクと震える。

「だめっ……これ、ダメだ…………おかしくなる……ッ!」

淫魔による責めとは違い、自分の責めで達しなければならないというかつてない状況にカナは未だ対応できていない。
心の底に溜まる、申し訳なさや悔しさに押しつぶされそうになる。

それでも、サクラの元へ行くためなら。
カナは成り立っていない理論を無理やり押し通そうとする。
服の上からではなく服の中に手を入れ、ブラの合間から自分の胸に触れる。

「今やらなきゃ、サクラの元には…………んぁうッ!」

ほんの少し乳首に指が触れるだけで、頭が飛びそうになる。
ショーツの中にも指を入れ、自分の一番気持ちいいところをなぞる。

「ふあああぁあッ!! 私、こんな場所で……ッ!!」

ボタボタと愛液が床を汚す様を見て、今まで直視しないようにしていた今自分が行なっていることの異常性に気づいてしまう。
それでもその手を今ここで止めるわけには行かなかった。

「うぁあ……ッ! ごめん、なさ…………ああッ!! サクラぁ、ごめんなさいッ!! んむぅーーーーッ!!」

カナは自分の手で絶頂へと上り詰める。
淫魔の快楽にあてられたカナの体は、絶頂により溢れる快楽を制御することができない。

「あぁッ……うそッ、んっ、んん……ッ!!」

腰が踊るように震え、本人が想定していたよりずっと多くの愛液が溢れ止まらない。
体の奥底から溢れる愛液を出し切ると、体全身から力が抜け、その場に倒れ込んでしまう。

「はぁ……はぁ……」

あまりの刺激に意識がかすみ、そのまま眠ってしまいそうになる。
目を閉じ、意識はどんどん薄れていく。
そんな自分の顔をカナは力強く引っぱたいた。

「~~~~ッ!! ばかか、私は!」

頬に走る強い痛みで、意識は元に戻った。
体の震えもいくらかおさまったような気がする。
ベッドを掴み体を持ち上げ、その場に立ち上がろうとする。

「よし」

まだ体はふらつくが、立ち上がることはできる。

「ーー行かなきゃ」

重たい体を引きづるようによたよたとした動きで、カナは保健室を後にした。


 ***


その開きっぱなしの鉄の扉を覗こうとしたとき、その向こう側からけたたましい轟音が聞こえた。
カナは冷静ではいられなくなり、中へと突入する。

「……え?」

小さな地下室で見たその光景に、カナは思考が停止してしまう。

「んっ……んんっ…………んっ」

淫魔に唇を奪われる、一糸纏わぬ後輩の姿。
その瞳に光はなく、腕をだらんと垂らしてされるがままにされている。
カナの中にある普段見ている元気なサクラのイメージが、目の前にある壊れた人形のようなそれに塗りつぶされていく。

「あ……あぁ……ッ!」

覚悟はしていた。
それでも、想定していたよりもずっと凄惨なその光景に、カナは心臓が押しつぶされそうになる。

「だめだ、もっと欲しい……もっと……」

淫魔はカナが部屋に入ってきたことに気づいていないのか、気にせず行為を続ける。
アサルトライフルのような形状をした右手、その先端ををサクラの秘所へと挿入する。

「やめっーー」

制止の声が届くより先に、轟音が室内に鳴り響いた。

「あ゛ーーーーーーッ! あ゛あ゛ーーーーーーッ!」

サクラは目を大きく見開き、涙をこぼしながら、悶絶する。
もはやそこに正常な意識があるようには見えない。
ただ生理反応として、そう動いているだけに過ぎない。
たとえ意識を飛ばされようと、サクラはその命が続く限り、強制的にその快楽を享受し、喘ぎ悶え苦しみ続けなければならない。

今すぐ目をそらしたくなるような光景だった。
たった二発で立ち上がることすらできなくなったあの銃弾を、サクラは無数に受け続けている。
それがどんな感覚なのか、カナは想像をすることすらできない。

「んッ……んんっ……」
「ん゛ーーーーっ!! ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!」

淫魔は銃弾を撃ち続けたまま、またサクラの唇を奪う。
もうサクラに精気などほとんど残っていないことなど、カナの目から見ても分かる。
それでも淫魔は空になった瓶の底を舐め回すように、サクラの体から一滴残らず精気を奪い取ろうとしている。

「ーーッ!! やめろッ!!」

呆然と立ち尽くしていたカナはようやく我に帰り、具現化した銃で淫魔を狙い打つ。
だが淫魔は空いていた左手でその銃弾を振り払った。

「ーーなっ!?」
「ぷはーーっ! ……ことの最中に、ちょっとマナーがなってないですね」

淫魔はサクラから口を離し、充血した目でカナを睨みつける。

(この淫魔……強い精気を吸い過ぎて強化されているのか!? ……だったら)

カナは精神を集中させ、より強力な弾丸のイメージを作り上げる。
動じないカナを危険と感じたのか、淫魔はカナの方へ銃口を向ける。
そしてカナも両手で銃を構えもう一度淫魔に向けて照準を合わせる。
単発銃の銃声と、アサルトライフルの連射音が鳴り響いたのはほぼ同時だった。

「んぁああッ!!」

カナはその体に何発かの銃撃を受け、足が崩れる。
だが、それ以上の銃弾が襲ってくることはなかった。
力を込めたカナの一撃は淫魔の右手の銃口貫き、その腕ごと吹き飛ばしていた。

「あっ、ああああっ!! 私の精気が、漏れていくっ!!」

崩壊したその右腕から広がるように、淫魔の体が霧のように霧散していく。

「お前のじゃ、ないだろ」

カナは震える両手でもう一度淫魔に向けて照準を合わせる。
銃声とともに銃弾が淫魔の頭を貫くと、淫魔は完全に消滅した。

(まずい、服の上からとはいえ、また銃弾を受けてしまった……)

カナは体の震えを抑えるように、自分の体を抱き寄せる。
そして、動かない後輩の姿に目を移す。

「さく……らぁ……ッ!」

またまともに立ち上がれなくなってしまったカナは、床を這うようにしてサクラへ近づく。

「サクラ……っ! サクラぁっ!!」

サクラの体を抱き寄せ、その安否を確認する。
一糸纏わずボロボロになった後輩の体は持ち上げると妙に軽く、その姿を見てカナは泣きそうになる。
カナが何度もサクラの名前を呼び続けると、サクラはそのまぶたを重そうに開けた。
そして消えてしまいそうなほど小さな声で呟いた。

「せん……ぱい……」

カナはもう抑えきれなくなり、サクラの体を強く抱きしめた。

「痛い……です、先輩。でも……あったかい……」
「ごめん、私のせいだ……私の……」

カナの声はサクラに心地よく響く。
例えどんな強い敵が現れても、カナが隣にいれば全て解決してくれる。
カナ以上に心強い存在はいない。
だからその声を聞くだけで、全てが解決したのだとサクラは思い込んでいた。

地下室の入り口に立つ小さな影。

「あ……あぁ……」

それを見て、サクラの顔が一瞬で絶望の色に染まる。

「せん……ぱい…………逃げて……」

「うーん、売店行ってる間にヴェートが死んでる件について」

淫魔を従えるクイーン。
無表情でそう呟くカコが何を考えているのか、サクラにはまるで理解できない。
だがそこに渦巻くおぞましい殺気、それだけはひしひしと感じ取ることができた。
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