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銃器の淫魔 5
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「けほッ……えほッ……」
吐き気にも似た感覚を覚えながらも、サクラは飛びかけた意識を取り戻す。
目に涙を浮かべながらも、その瞳にはまだ抵抗の意思を灯している。
「おかえり、せんぱい。もう帰ってこないかと思ったよ。どうする? まだ続ける?」
カコのその言葉でサクラは今の自分の状況を思い出す。
サクラが一つ質問をすればカコはそれに答える。
だが代わりにサクラはお仕置きと称した、絶頂へと導かれる銃撃を受けなければならない。
思い出しただけで、また体が震えだす。
(あれを、また耐えなければならないの……)
しかし今のサクラにできることと言えば彼女から少しでも多くの情報を引き出すこと。それくらいしかない。
それでも強制的に絶頂へと導かれる恐怖にサクラの口は震え、声が出ない。
「なんだ、もう終わりか。退魔師様も快楽の前では何もーー」
「待って!」
カコの語りを遮り、サクラは大声をあげる。
「あなたが……あなたが私たち退魔師を襲う理由を教えて……」
ここで負けてたまるかという思い。
それだけがサクラを突き動かす。
そんなサクラの姿を見て、カコは自分の二の腕をぎゅっと掴み、ゾクゾクと体を震わす。
「いいよ、教えてあげる。でもね、残念ながらそんなに深い理由はないんだよ。私は退魔師が嫌いだし、退魔師の上の連中も私が嫌いなんだ。それだけだよ」
納得の行かない答えに、サクラはカコの瞳をじっと見つめる。
「何だか不服そうだね、せんぱい。じゃあサービスだ。せんぱいは知らないみたいだけど、もし退魔師の敵であるクイーンを退魔師が捕えたら、どうなると思う?」
「…………それはーー」
分からない。
サクラは退魔師という存在を想像以上に知らないようだ。
自分以外の退魔師などカナ以外に知らない。
どんな組織が退魔師という存在を成り立たせているのか、知ろうと思うこともなかった。
カナの元で共に戦えたら、そんな思いしか抱いていなかった。
「はい、時間切れ。正解は退魔師の総本山に幽閉されて洗脳に近い教育を日夜受け続けることになる、でした」
「……そんな」
「ほんとだよ。自分の人格も否定され、自由意志を持とうとするとムチで叩かれる。奴隷のように自分の全てを退魔師に捧げなければ罰が与えられる。だからーー私はあそこを抜け出したのさ」
「……!」
その言葉を聞いて、いよいよカコの言葉に説得力が出てきた。
カコの言うことが全て自分の体験談なのだとすれば、退魔師に敵対する気持ちも理解できる。
「いやぁ、ちょっとサービスで喋りすぎちゃったかな。お仕置きもサービスしてあげよう」
カコはまた右手を銃の形に見立て、そして自分の頭に突きつける。
「やっちゃってヴェート」
「え? いいんですか?」
今まで二つ返事で言うことを聞いていたヴェートが、どう言うわけか躊躇する。
「私は受けたことないから知らないけど、これが一番気持ちいんでしょ。脳みそに直接媚薬を打ち込まれるような感覚。一発即昇天って、前言ってたじゃない」
「え、ええ。そうですけど……普通の人間なら一発で頭壊れちゃいますよ」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ退魔師なら三発くらいまでなら耐えられるんじゃないかな」
悪魔のような発言に、サクラの背筋が凍る。
そもそも『脳みそに直接媚薬を打ち込まれる感覚』というのがまるでイメージできない。
心のどこかで、どんなに絶頂しようと死にはしないと思い込んでいたが、普通の人間なら一発で頭が壊れるという銃撃を、果たして三発も耐えることができるだろうか。
ヴェートがこちらへジリジリと近づいてくる。
もうどこにも逃げ場はないと追うのに、サクラは顔を背け、少しでも距離を取ろうと足掻く。
「うあぁッ!」
ヴェートの左手に髪を掴まれ、こめかみの辺りに銃口が突き付けられる。
「これでぶっ壊れても、私に文句言わないでくださいね」
「やめっーー」
言い切る前に銃声が響く。
「ア゛ア゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ア゛ァ゛ぁ゛ッ!?」
サクラの背筋が折れんばかりに仰け反り、ショーツ越しにビュービューと愛液が吹き荒れる。
「おー、すっご」
滝のように流れる愛液を見てカコも感嘆する。
頭の中が真っ白になり何も考えられない。
脳みそに直接媚薬を打ち込まれると言うのも納得の感覚だった。
それはまるで絶頂へのスイッチ。
快楽を得て絶頂へと導かれると言う過程を全て無視し、銃撃を受けたその瞬間、脳が体に絶頂しろと命令する。
快感に耐えるだの抵抗するだの、そんな小細工はまるで意味がない。
つけた瞬間電気がつくスイッチと同じだ。
「二発目、いくよ」
「やだッ……あっ、あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛あ゛ぁ゛ア゛ァ゛ーーーーーーーーッ!!」
二発目の銃撃を受け、サクラの腰が強く浮き上がる。
体はまだ絶頂している最中だと言うのに、銃撃を受けた脳が、まだ足りない、もっとイけ、と命令する。
体全身がもう自分の意思が通じないほどに痙攣し、もう自分の体ではないかのようだった。
「これで、三発目」
「あぁッ、うぐぅ…………ンッ!? ン゛ギイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イぃいいいッ!! ン゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛あ゛あ゛あ゛ううううううッッッ!!」
それはもはや獣の悲鳴。
こんな暴力的な強制絶頂を受けて理性など保てるはずもない。
一般人ならばもう死んでもおかしくないほどの快楽。
サクラも自分の体がここまで登りつめたのは初めてだろう。
「あぁ……まだ、負けて…………ない……」
それは無意識に口から漏れた言葉。
もう意識などほとんど残っていないが、それでも退魔師としてのプライドがサクラをなんとかその場に引きとどめた。
「すごい……」
三発の銃撃に耐え切ったサクラに、ヴェートの口から素直な感嘆の言葉が漏れる。
「もっかい」
だが悪魔はこの程度では満足しない。
「え?」
ヴェートも意図がわからず聞き返す。
「多分、せんぱい頭飛んじゃってもう何回撃たれたのか分かってないと思う。だからもう一発やっちゃって。一発くらい誤射してもバレないっしょ」
「……鬼だなぁ」
ヴェートは渋々ながらサクラのこめかみにもう一度銃口をつきつける。
「……ふぇ?」
「ああ、退魔師さま。上司に逆らえない末端淫魔の私めを、どうかお許しください」
そう言ってヴェートはサクラの頭に四発目の銃弾を打ち込む。
「ふぁあ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ッ!? イギッ!? ア、がァッ!! なん、でぇ……ッ!?」
不意に打ち込まれたその一撃にサクラも頭が追いついていないようだった。
もうこれ以上はないと油断していた体が、再び快楽で暴れ出す。
「もーいっかい!」
そこに追い討ちをかける悪魔の声。
「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!! もう耐えたッ! もう終わっーーン゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーッ!!」
もうヴェートは何も言わずに銃弾を打ち込む。
カコに囚われてしまった以上、カコが満足するまでサクラに自由はないのだ。
「おまけのもう一回!」
「だめええええぇええッ! もうイギだくなぁああっ!! あ゛ッ!? イグッ!! イグウウウウッ!! イッデるのおおおおぉおおぉッ!! い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁーーーーッ!!」
***
どれだけの時間が過ぎたのだろう。
サクラは足元を見つめていた。
水たまりのできた足元。
全て自分の出したものだ。
「あっ、せんぱい意識取り戻したっぽい。やっぱ凄いね退魔師って」
「ぁ、あぁ……」
まるで意識のこもっていない声が漏れる。
「で、次はどうする? まだまだたくさん聞きたいこと、あるよね?」
「……やだ」
「……えっ?」
予想していなかった言葉にカコは驚く。
「もう、いやぁ……もう、無理…………耐えられない……」
そんな弱気な、ただの怯える女子生徒のようなサクラの声を聞いて、カコは一気につまらなそうな表情に変わる。
「そっか、もう無理か……残念だなぁ」
ボソリと呟くような声。
そこに芝居掛かった感情はない。
「でもさ、せんぱい。ひとつ勘違いしてるよ」
「ーーえっ?」
「ここではさ、完全に私が主導権を握ってるわけ。だからね、私を落胆させたってことはそれだけで罪なんだよ」
睨みつけるようなカコの視線にサクラは怯える。
自分よりも小さな体の少女に恐怖してしまう。
「ヴェート! アレ、やっちゃって」
指示されたヴェートは、はぁとため息をつく。
「私たち淫魔の存在理由は女性に快楽を与えて、その精気を奪うこと。殺したり苦しませたりってのは目的じゃあないんですけどねぇ。まぁ我らがクイーンであるカコ様の言うことには逆らいませんけどね」
ヴェートが語る不穏な言葉の意味を、サクラは何一つ理解できない。
「な、なに!? 何を……するつもりなの……ッ!?」
カコの横に腰を下ろしていたヴェートは、腰を上げサクラの方へ近づく。
「サクラさん、私はあなたを殺すもりはありませんので、その退魔師の力でしっかりと耐えてくださいね」
そう言ってヴェートは左手を胸の前にかかげる。
その手が熱帯びた金属のように溶け、形を変え、鋭い刃を持つナイフの形へと変わる。
「……ひっ!?」
サクラが驚いたその瞬間、目の前に銀色の斬撃が走る。
一瞬死を覚悟したが、痛みはまるでない。
恐怖に怯え、ギュッと強く閉じた瞳を恐る恐る開ける。
「……ッ!?」
制服の胸元が縦に綺麗に切断され、スカートがはらりと地面に落ちる。
肌に一切傷はなく、ライトグリーンの下着姿が晒されてしまう。
ショーツは愛液で汚れ、湿っていない部分の方が少なかった。
続いてヴェートの右手がさらに変化する。
手だけではなく腕をも包み込むように変形し、肘から先が全て金属の塊と化す。
サクラはその形には見覚えがあった。
映画やゲームで見覚えのあるアサルトライフルを象っている。
そしてその形状が意味することも同時に理解してしまう。
「いや…………いやあああっ!! そんなの無理ッ! 死んじゃう、死んじゃうからあッ!!」
「強く歯を食いしばって、意識が飛ばないように耐えて下さいねッ!」
標準を定めるレーザーサイトがサクラの体を下半身から舐め回すように移動する。
そして腹部のあたりでピタリと止まった。
「行きます」
いつになく真剣な口調でヴェートは言う。
サクラはもう自分にこれから起こることを嫌々ながらも受け入れ、グッと歯を食いしばった。
ダダダダダッ! と耳をつんざく射撃音が響き渡り、断続的に放たれるマズルフラッシュで室内はギラギラと輝く。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ーーーーッ!! ん゛ン゛あ゛ぁ゛ッ!? あ゛あ゛ア゛ァ゛あ゛あ゛グあ゛ぁ゛あ゛ーーーーッ!! いあ゛あ゛ア゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」
一秒間に何発もの銃弾がサクラの体を貫く。
一発打つたびに大きくブレる銃口により、そこから発射される弾丸はサクラの体の随所に不規則に着弾する。
腹部を、胸を、太ももを、首筋を、股関節を、いたるところに銃弾が当たる。
もちろんその一撃一撃は先ほどの銃撃と同じ、一度当たれば必ず絶頂する弾丸。
それを毎秒十発近く受け続ける。
「だめえ゛え゛え゛ぇ゛え゛え゛え゛ッ!! ごわ゛れ゛ッ、ぁ、あ、あ゛ぁう゛ーーーーッ!! もういやあ゛あ゛ッ!! もうどめでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛え゛ッ!!!」
サクラはまるでサンドバッグのように一撃一撃を受ける度に体を揺らす。
しかし何度銃弾を撃ち込まれようと、サクラの体は一つしかない。
人間の体も同時に何度も絶頂できるようにはできていない。
だが銃撃はそんな人間の構造など気にせず、サクラの体にもっとイけ、まだまだイけと無慈悲に責め立てる。
サクラはもう自分の体がイッているのか、そうでないのかすら分からなくなる。
その小さな体に絶頂のストックはどんどん溜まってゆきーーそして最後の一撃で全てが解放される。
「ン゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
愛液と小水の入り混じったものがサクラの秘所から絶え間なく溢れ出す。
最後の一撃を受けるのと同時にサクラを拘束していたロープが擦り切れ、サクラは自分が作った水たまりの上に崩れ落ちる。
室内に響く轟音は唐突に途絶え、暗い地下室にはサクラの喘ぎ声だけが取り残された。
サクラにとって無限にも感じるような時間だったが、マガジンを全て使い切るまでほんの数秒の出来事だった。
「う゛あ゛ぁ゛……あ゛ぁ゛…………あ゛ッ!? あ゛う゛う゛ぅーーーーッ!! う゛ッ……うう……ッ!」
止まらぬ絶頂の余韻。
余韻にしては強すぎるその刺激に、銃撃が終わった後もサクラは体を震わせながら何度も何度も絶頂し続けた。
「……まずいっすよ。これは流石にもうーー」
ヴェートはサクラを心配して、駆け寄る。
サクラはもう意思を保てないほどに、完全にその心を打ち砕かれたーーかのように見えた。
「ーーッ!?」
ヴェートは驚く。
もうまともに体を動かすこともできないだろうと思っていたサクラが、ヴェートの足首を掴んだのだ。
おそらく、もうそこに意識はないのだろう。
それでも無意識の中で、抗おうとするサクラの姿がヴェートの瞳に強く焼きつく。
「どうしたのヴェート。顔、真っ赤だよ」
「えっ……?」
ヴェートは言われて気づく。
自分の体が強く火照っていることに。
「ヴェート、あなたは不遇よね。女性が快楽に溺れる姿を見て楽しむのが淫魔の本望なのに、あなたの強すぎる力は一瞬で女性を昇天させてしまう。他の淫魔と比べてあなたが女性を襲うことにあまり興味を持たなかったのは、その力のせいもあるのかしら」
そうなのかもしれない、と言われて初めてヴェートは自分の気持ちに気づく。
「でもね」
カコはサクラの髪を掴んで頭を無理やり持ち上げる。
「うぁ……ッ! ぁ……まだ…………負けて……あぁ……」
白目を向き、完全意識を失っていてもなお、その口から漏れるのは反抗の意思。
「もう意識は飛んじゃったけど、多分まだ壊れてはいない。どう? せんぱいならヴェートの思いに答えてくれるかもよ」
ニヤリと笑うカコ。
「へ、へへ……」
まるでその笑みが伝染したかのように、ヴェートの胸が高鳴り、笑みが溢れる。
吐き気にも似た感覚を覚えながらも、サクラは飛びかけた意識を取り戻す。
目に涙を浮かべながらも、その瞳にはまだ抵抗の意思を灯している。
「おかえり、せんぱい。もう帰ってこないかと思ったよ。どうする? まだ続ける?」
カコのその言葉でサクラは今の自分の状況を思い出す。
サクラが一つ質問をすればカコはそれに答える。
だが代わりにサクラはお仕置きと称した、絶頂へと導かれる銃撃を受けなければならない。
思い出しただけで、また体が震えだす。
(あれを、また耐えなければならないの……)
しかし今のサクラにできることと言えば彼女から少しでも多くの情報を引き出すこと。それくらいしかない。
それでも強制的に絶頂へと導かれる恐怖にサクラの口は震え、声が出ない。
「なんだ、もう終わりか。退魔師様も快楽の前では何もーー」
「待って!」
カコの語りを遮り、サクラは大声をあげる。
「あなたが……あなたが私たち退魔師を襲う理由を教えて……」
ここで負けてたまるかという思い。
それだけがサクラを突き動かす。
そんなサクラの姿を見て、カコは自分の二の腕をぎゅっと掴み、ゾクゾクと体を震わす。
「いいよ、教えてあげる。でもね、残念ながらそんなに深い理由はないんだよ。私は退魔師が嫌いだし、退魔師の上の連中も私が嫌いなんだ。それだけだよ」
納得の行かない答えに、サクラはカコの瞳をじっと見つめる。
「何だか不服そうだね、せんぱい。じゃあサービスだ。せんぱいは知らないみたいだけど、もし退魔師の敵であるクイーンを退魔師が捕えたら、どうなると思う?」
「…………それはーー」
分からない。
サクラは退魔師という存在を想像以上に知らないようだ。
自分以外の退魔師などカナ以外に知らない。
どんな組織が退魔師という存在を成り立たせているのか、知ろうと思うこともなかった。
カナの元で共に戦えたら、そんな思いしか抱いていなかった。
「はい、時間切れ。正解は退魔師の総本山に幽閉されて洗脳に近い教育を日夜受け続けることになる、でした」
「……そんな」
「ほんとだよ。自分の人格も否定され、自由意志を持とうとするとムチで叩かれる。奴隷のように自分の全てを退魔師に捧げなければ罰が与えられる。だからーー私はあそこを抜け出したのさ」
「……!」
その言葉を聞いて、いよいよカコの言葉に説得力が出てきた。
カコの言うことが全て自分の体験談なのだとすれば、退魔師に敵対する気持ちも理解できる。
「いやぁ、ちょっとサービスで喋りすぎちゃったかな。お仕置きもサービスしてあげよう」
カコはまた右手を銃の形に見立て、そして自分の頭に突きつける。
「やっちゃってヴェート」
「え? いいんですか?」
今まで二つ返事で言うことを聞いていたヴェートが、どう言うわけか躊躇する。
「私は受けたことないから知らないけど、これが一番気持ちいんでしょ。脳みそに直接媚薬を打ち込まれるような感覚。一発即昇天って、前言ってたじゃない」
「え、ええ。そうですけど……普通の人間なら一発で頭壊れちゃいますよ」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ退魔師なら三発くらいまでなら耐えられるんじゃないかな」
悪魔のような発言に、サクラの背筋が凍る。
そもそも『脳みそに直接媚薬を打ち込まれる感覚』というのがまるでイメージできない。
心のどこかで、どんなに絶頂しようと死にはしないと思い込んでいたが、普通の人間なら一発で頭が壊れるという銃撃を、果たして三発も耐えることができるだろうか。
ヴェートがこちらへジリジリと近づいてくる。
もうどこにも逃げ場はないと追うのに、サクラは顔を背け、少しでも距離を取ろうと足掻く。
「うあぁッ!」
ヴェートの左手に髪を掴まれ、こめかみの辺りに銃口が突き付けられる。
「これでぶっ壊れても、私に文句言わないでくださいね」
「やめっーー」
言い切る前に銃声が響く。
「ア゛ア゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ア゛ァ゛ぁ゛ッ!?」
サクラの背筋が折れんばかりに仰け反り、ショーツ越しにビュービューと愛液が吹き荒れる。
「おー、すっご」
滝のように流れる愛液を見てカコも感嘆する。
頭の中が真っ白になり何も考えられない。
脳みそに直接媚薬を打ち込まれると言うのも納得の感覚だった。
それはまるで絶頂へのスイッチ。
快楽を得て絶頂へと導かれると言う過程を全て無視し、銃撃を受けたその瞬間、脳が体に絶頂しろと命令する。
快感に耐えるだの抵抗するだの、そんな小細工はまるで意味がない。
つけた瞬間電気がつくスイッチと同じだ。
「二発目、いくよ」
「やだッ……あっ、あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛あ゛ぁ゛ア゛ァ゛ーーーーーーーーッ!!」
二発目の銃撃を受け、サクラの腰が強く浮き上がる。
体はまだ絶頂している最中だと言うのに、銃撃を受けた脳が、まだ足りない、もっとイけ、と命令する。
体全身がもう自分の意思が通じないほどに痙攣し、もう自分の体ではないかのようだった。
「これで、三発目」
「あぁッ、うぐぅ…………ンッ!? ン゛ギイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イぃいいいッ!! ン゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛あ゛あ゛あ゛ううううううッッッ!!」
それはもはや獣の悲鳴。
こんな暴力的な強制絶頂を受けて理性など保てるはずもない。
一般人ならばもう死んでもおかしくないほどの快楽。
サクラも自分の体がここまで登りつめたのは初めてだろう。
「あぁ……まだ、負けて…………ない……」
それは無意識に口から漏れた言葉。
もう意識などほとんど残っていないが、それでも退魔師としてのプライドがサクラをなんとかその場に引きとどめた。
「すごい……」
三発の銃撃に耐え切ったサクラに、ヴェートの口から素直な感嘆の言葉が漏れる。
「もっかい」
だが悪魔はこの程度では満足しない。
「え?」
ヴェートも意図がわからず聞き返す。
「多分、せんぱい頭飛んじゃってもう何回撃たれたのか分かってないと思う。だからもう一発やっちゃって。一発くらい誤射してもバレないっしょ」
「……鬼だなぁ」
ヴェートは渋々ながらサクラのこめかみにもう一度銃口をつきつける。
「……ふぇ?」
「ああ、退魔師さま。上司に逆らえない末端淫魔の私めを、どうかお許しください」
そう言ってヴェートはサクラの頭に四発目の銃弾を打ち込む。
「ふぁあ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ッ!? イギッ!? ア、がァッ!! なん、でぇ……ッ!?」
不意に打ち込まれたその一撃にサクラも頭が追いついていないようだった。
もうこれ以上はないと油断していた体が、再び快楽で暴れ出す。
「もーいっかい!」
そこに追い討ちをかける悪魔の声。
「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!! もう耐えたッ! もう終わっーーン゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーッ!!」
もうヴェートは何も言わずに銃弾を打ち込む。
カコに囚われてしまった以上、カコが満足するまでサクラに自由はないのだ。
「おまけのもう一回!」
「だめええええぇええッ! もうイギだくなぁああっ!! あ゛ッ!? イグッ!! イグウウウウッ!! イッデるのおおおおぉおおぉッ!! い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁーーーーッ!!」
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どれだけの時間が過ぎたのだろう。
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全て自分の出したものだ。
「あっ、せんぱい意識取り戻したっぽい。やっぱ凄いね退魔師って」
「ぁ、あぁ……」
まるで意識のこもっていない声が漏れる。
「で、次はどうする? まだまだたくさん聞きたいこと、あるよね?」
「……やだ」
「……えっ?」
予想していなかった言葉にカコは驚く。
「もう、いやぁ……もう、無理…………耐えられない……」
そんな弱気な、ただの怯える女子生徒のようなサクラの声を聞いて、カコは一気につまらなそうな表情に変わる。
「そっか、もう無理か……残念だなぁ」
ボソリと呟くような声。
そこに芝居掛かった感情はない。
「でもさ、せんぱい。ひとつ勘違いしてるよ」
「ーーえっ?」
「ここではさ、完全に私が主導権を握ってるわけ。だからね、私を落胆させたってことはそれだけで罪なんだよ」
睨みつけるようなカコの視線にサクラは怯える。
自分よりも小さな体の少女に恐怖してしまう。
「ヴェート! アレ、やっちゃって」
指示されたヴェートは、はぁとため息をつく。
「私たち淫魔の存在理由は女性に快楽を与えて、その精気を奪うこと。殺したり苦しませたりってのは目的じゃあないんですけどねぇ。まぁ我らがクイーンであるカコ様の言うことには逆らいませんけどね」
ヴェートが語る不穏な言葉の意味を、サクラは何一つ理解できない。
「な、なに!? 何を……するつもりなの……ッ!?」
カコの横に腰を下ろしていたヴェートは、腰を上げサクラの方へ近づく。
「サクラさん、私はあなたを殺すもりはありませんので、その退魔師の力でしっかりと耐えてくださいね」
そう言ってヴェートは左手を胸の前にかかげる。
その手が熱帯びた金属のように溶け、形を変え、鋭い刃を持つナイフの形へと変わる。
「……ひっ!?」
サクラが驚いたその瞬間、目の前に銀色の斬撃が走る。
一瞬死を覚悟したが、痛みはまるでない。
恐怖に怯え、ギュッと強く閉じた瞳を恐る恐る開ける。
「……ッ!?」
制服の胸元が縦に綺麗に切断され、スカートがはらりと地面に落ちる。
肌に一切傷はなく、ライトグリーンの下着姿が晒されてしまう。
ショーツは愛液で汚れ、湿っていない部分の方が少なかった。
続いてヴェートの右手がさらに変化する。
手だけではなく腕をも包み込むように変形し、肘から先が全て金属の塊と化す。
サクラはその形には見覚えがあった。
映画やゲームで見覚えのあるアサルトライフルを象っている。
そしてその形状が意味することも同時に理解してしまう。
「いや…………いやあああっ!! そんなの無理ッ! 死んじゃう、死んじゃうからあッ!!」
「強く歯を食いしばって、意識が飛ばないように耐えて下さいねッ!」
標準を定めるレーザーサイトがサクラの体を下半身から舐め回すように移動する。
そして腹部のあたりでピタリと止まった。
「行きます」
いつになく真剣な口調でヴェートは言う。
サクラはもう自分にこれから起こることを嫌々ながらも受け入れ、グッと歯を食いしばった。
ダダダダダッ! と耳をつんざく射撃音が響き渡り、断続的に放たれるマズルフラッシュで室内はギラギラと輝く。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ーーーーッ!! ん゛ン゛あ゛ぁ゛ッ!? あ゛あ゛ア゛ァ゛あ゛あ゛グあ゛ぁ゛あ゛ーーーーッ!! いあ゛あ゛ア゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」
一秒間に何発もの銃弾がサクラの体を貫く。
一発打つたびに大きくブレる銃口により、そこから発射される弾丸はサクラの体の随所に不規則に着弾する。
腹部を、胸を、太ももを、首筋を、股関節を、いたるところに銃弾が当たる。
もちろんその一撃一撃は先ほどの銃撃と同じ、一度当たれば必ず絶頂する弾丸。
それを毎秒十発近く受け続ける。
「だめえ゛え゛え゛ぇ゛え゛え゛え゛ッ!! ごわ゛れ゛ッ、ぁ、あ、あ゛ぁう゛ーーーーッ!! もういやあ゛あ゛ッ!! もうどめでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛え゛ッ!!!」
サクラはまるでサンドバッグのように一撃一撃を受ける度に体を揺らす。
しかし何度銃弾を撃ち込まれようと、サクラの体は一つしかない。
人間の体も同時に何度も絶頂できるようにはできていない。
だが銃撃はそんな人間の構造など気にせず、サクラの体にもっとイけ、まだまだイけと無慈悲に責め立てる。
サクラはもう自分の体がイッているのか、そうでないのかすら分からなくなる。
その小さな体に絶頂のストックはどんどん溜まってゆきーーそして最後の一撃で全てが解放される。
「ン゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
愛液と小水の入り混じったものがサクラの秘所から絶え間なく溢れ出す。
最後の一撃を受けるのと同時にサクラを拘束していたロープが擦り切れ、サクラは自分が作った水たまりの上に崩れ落ちる。
室内に響く轟音は唐突に途絶え、暗い地下室にはサクラの喘ぎ声だけが取り残された。
サクラにとって無限にも感じるような時間だったが、マガジンを全て使い切るまでほんの数秒の出来事だった。
「う゛あ゛ぁ゛……あ゛ぁ゛…………あ゛ッ!? あ゛う゛う゛ぅーーーーッ!! う゛ッ……うう……ッ!」
止まらぬ絶頂の余韻。
余韻にしては強すぎるその刺激に、銃撃が終わった後もサクラは体を震わせながら何度も何度も絶頂し続けた。
「……まずいっすよ。これは流石にもうーー」
ヴェートはサクラを心配して、駆け寄る。
サクラはもう意思を保てないほどに、完全にその心を打ち砕かれたーーかのように見えた。
「ーーッ!?」
ヴェートは驚く。
もうまともに体を動かすこともできないだろうと思っていたサクラが、ヴェートの足首を掴んだのだ。
おそらく、もうそこに意識はないのだろう。
それでも無意識の中で、抗おうとするサクラの姿がヴェートの瞳に強く焼きつく。
「どうしたのヴェート。顔、真っ赤だよ」
「えっ……?」
ヴェートは言われて気づく。
自分の体が強く火照っていることに。
「ヴェート、あなたは不遇よね。女性が快楽に溺れる姿を見て楽しむのが淫魔の本望なのに、あなたの強すぎる力は一瞬で女性を昇天させてしまう。他の淫魔と比べてあなたが女性を襲うことにあまり興味を持たなかったのは、その力のせいもあるのかしら」
そうなのかもしれない、と言われて初めてヴェートは自分の気持ちに気づく。
「でもね」
カコはサクラの髪を掴んで頭を無理やり持ち上げる。
「うぁ……ッ! ぁ……まだ…………負けて……あぁ……」
白目を向き、完全意識を失っていてもなお、その口から漏れるのは反抗の意思。
「もう意識は飛んじゃったけど、多分まだ壊れてはいない。どう? せんぱいならヴェートの思いに答えてくれるかもよ」
ニヤリと笑うカコ。
「へ、へへ……」
まるでその笑みが伝染したかのように、ヴェートの胸が高鳴り、笑みが溢れる。
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