退魔の少女達

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触手の淫魔 2

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サクラは目の前の光景をまだ受け入れられないでいる。
淫魔の匂いを追って森林公園のウォーキングコースを歩いていたはずだ。
だが、今この景色はーーまるで胃袋の中。
肉片のようなものがあたり一面に広がり、辺りの木々には意思なく蠢く大小様々な触手が絡みついている。
そして、あちらこちらから響く嬌声。
10人以上の女性達が裸にされ、触手の責めを享受している。
彼女達はいったいどれくらいの時間犯され続けたのだろう。
みんな目が虚ろで、触手の責めに対して抵抗を見せる女性はどこにもいない。
異様な光景だった。

「た、助けなきゃ……!」

目の前の光景に圧倒されながらもサクラは退魔師としての役割を全うしようと一歩を踏み出す。

「ダメよ」
「いぃッ!!?」

背後から聞こえるくぐもった女性の声。
背筋を撫でられるような恐怖を感じ、刀を持つ右手に力が入る。

「うわあああっ!!」

反射的に背後にいる何者かに向けて、刀を振り抜く。
しかしそこに人の影はなく、刀はただ宙を裂いただけだった。

(私、何を……? 人を斬ろうとした……!?)

急な出来事に気が動転して、相手も確認せずに刀を振ってしまった。
しかし、背後から感じた気配は人ではない禍々しさがあったのも確かだった。

「ふふっ、こっちよ」

不敵な声と共に、足元から触手が現れ、右足を捕らわれる。

「ッ!!」

条件反射で手が動く。
足に絡んだ触手を叩き切り、その場から距離を置く。
着地した足場がぬちゃりと音を立てた。

(今のは、淫魔の声? それにこの場所はまずい、敵の根城だ……)

サクラはようやく自分が置かれた状況を理解する。
そう、まさにここは敵の根城。
左右上下、次にどこから触手による攻撃が迫ってくるかわからない。
この場所で戦うのは得策ではない。
しかし、淫魔に捕らわれた彼女達を置いて逃げるわけにもいかなかった。

今度は左足に何かが絡みついた。
すぐさまそれを払い除けようと刀を振るう。

「ーーッ!?」

しかし、その刃がそれを斬り落とす前にサクラの手が止まった。

「うふふ、おじょーちゃん、綺麗な足ぃ」

斬ろうとしていたのは触手ではなく女性だった。
虚ろな目をした全裸の女性がサクラの右足に抱きついている。

「やっ、やめてください! んっ……」

女性は取り憑かれたように、サクラの太ももをさする。
相手が人間である以上、力技で拘束を解くこともできない。

(だめだ、この人正気じゃない!)
「は、離してっ! 正気に戻ってください!」
「あら、この狂気の世界がお気に召さないかしら?」

また、あのくぐもった声がどこかから聞こえる。
同時に右足に触手が絡みついた。

「このっ! ……ぁっ!?」

当然刀で斬り落とそうとするが、今度は意思とは別に手が止まってしまう。
刀を握る右手にも触手が絡みついた。
そして、それに気を取られた瞬間、左手にも触手が伸びる。
完全に四肢の自由を奪われてしまった。

「くっ、このっ!」

体を揺さぶってなんとか拘束から逃れようとするがビクともしない。

「無駄よ無駄。あなたの力じゃそれは解けない」

逆撫でするような声が聞こえるも、やはりその声の主の姿は見えない。
次の触手がどこから出てくるのかと身構えていると、サクラの目の前に複数の触手が一箇所に集まっていく。
小さな触手が縄のように絡み合い、何かの形を作り上げる。
そして次第にそれは人の、女性の姿へと形を変えた。
触手でできたその体はまるで皮膚のない人間のようで、本能的に嫌悪感を覚える。

「こんにちは、かわいい退魔師さん」

微笑みながら淫魔は言う。
あのくぐもった声だ。

「淫魔が……喋った……!?」
「さっきからずっと語りかけていたのだけれど、聞こえなかったかしら?」

もちろん聞こえていた。
しかし、今までずっと淫魔とは人類の敵としてしか捉えていなかったため、こうして意思を持って会話できるということが信じられずにいる。
淫魔はサクラへと近づき、その顔をまじまじと見つめる。
その間拘束され体を動かすことができないサクラは、淫魔の視線にただ耐えることしかできない。
まるで品定めをされているかのようで気色が悪い。
一通りサクラの顔を見回すと、淫魔は軽く微笑んだ。

「ふふっ、私の名前はマガトゥラ、よろしくね」
「名前が、あるの……?」
「あったらダメかしら?」

サクラの中で淫魔の定義がどんどん曖昧になっていく。
名前を持って、自分と同じ言葉を使う。
これでは姿は違えど人間と同じだ。

「あなたの何前は?」
「……さ、サクラ」

一瞬、答えるかどうか戸惑うが自然と名乗ってしまった。
マガトゥラと名乗る淫魔にどこか心を開きつつあったのかもしれない。

「サクラちゃんって言うんだ。可愛い名前ね」
「んっ」

マガトゥラはサクラの顎を撫でるように持ち上げーー。

「じゃあこれは出会いの挨拶がわりよ」
「んんんっーー!?」

サクラに口づけをした。

(なにっ? なんでっーー!?)
「んんっ……んむっ、んぁっ!」

マガトゥラの舌がサクラの口内に入り込んでくる。
普通のキスすらしたことのないサクラは何をされているのか理解できず、ただただ困惑する。
首を振って必死の抵抗を見せるが、頭を両手で押さえられ、口内をされるがままに犯される。

「んふっ……おいしぃ。でもここからが本番。んむっ」
「んんーーーーっ!!?」

再度の接吻。
しかし先程までのものとはまるで違う。
背筋が跳ね上がり、全身の筋肉が緊張する。
熱いものに触れた時、意志より早く体が動く反射反応が体全身で起きているかのようだった。
体全身が急激に火照る。

「んむっ、ぷぁっ! あっ、うぅん!? ……ぅん、んっ!」
(熱い、体が焼けるっ! 私の体……なにが、起きて……)

体は熱く、全身からは危険信号が出ているのに、意識はだんだん朦朧となっていく。
まるで生命力そのものを無理やり吸い取られているかのような感覚だった。

「んぁっ……ぅん、んっ!? んんーーっ! んっ、ぃぁ、んんんーーーッ!!!」
(いやぁ、体の中身、吸い取れて……あたま、おかしくなる……ッ!)

サクラが強く意志を保ち握り続けていた刀が、その手から離れる。
退魔師の意志により具現化されたその剣は、地面に落ちる前に霧のように霧散して消えた。
横目でそれを確認したマガトゥラは、ゆっくりとサクラの口を解放した。
二人の口と口の間に糸が引き、やがてぷつりと切れる。
はぁはぁと息を切らしながら、ガクガクと体を撼わすサクラの姿をマガトゥラは艶やかな視線で眺める。

「あなたの精気すっごく美味しいわ。ちょっと感動しちゃった」
「せい、き……?」

聞きなれない言葉に、サクラの理解は追いつかない。

「あらあら、精気も知らないなんて、本当に駆け出し退魔師さんなのね。いいわ、教えてあげる。精気って言うのは女の子なら誰でも持っている生命力そのものよ。そしてあなたたち退魔師は精気を使って様々な術を使うの。そんなことも知らないなんて駆け出しだとしても退魔師失格なんじゃない? それとも上の人間が隠しているのかしら」

先輩であるカナの顔が頭に浮かぶ。
サクラはカナに無理を言って退魔の力を授けてもらったものの、その原理について説明してもらったことはなかった。

「まぁいいわ、とにかく精気はあなたたちの力の源でもあるけど、それは私たちのエサでもある」
「えさ……?」
「そう、エサなの。あなたたちは私たちのエサ。どう言うわけかこの世に生まれ出でた私たちは、あなたたちの精気を吸いたくて吸いたくて仕方がないの。でもね、あなたたちは抵抗するでしょう? 自分の精気を奪われまいと、体で心で、拒んでくる。だからね、私たちが精気を奪うにはあなたの体も心も支配する必要があるの」

それを聞いてサクラはようやく淫魔の行動理念を理解した。
淫魔がなぜ人を殺して食べるでもなく、ただひたすらに犯す尽くすという行動に出るのか、ずっと疑問だった。
淫魔のエサは精気であり、肉体ではない。
そして例え精気を吸い尽くしたとしても数日あれば回復する。
だから、またエサになる女性を殺すことは不利益なのだろう。
サクラには経験があった。
サクラが初めて淫魔に襲われた日のことをよく覚えてはいないのだが、体の中にエネルギーが回っていないかのような、ぐったりとした気分が数日続いた。
あれが精気を吸われるという状態だったのだろう。

「それじゃあ説明はもう十分かしら、あなたの精気をいただくわ。さっきのじゃ全然足りない。あなたの体も心も屈服させて、内側にあるもっと濃い精気をさらけ出してあげる」
「……イヤだ」

震えるような小さな声。
だが、その声には強い意志が詰まっている。

「ん?」
「私は、負けない……ッ!」

今度は強く言い放つ。
絶体絶命のこの状況において、サクラはまだ諦めて全てを差し出すつもりなどなかった。

「うふふっ! すごい、この状況でそんな目を向けれる子なかなかいないわよ。鳥肌立ってきちゃった。私体が触手だから毛なんて生えてないけどね」

サクラの好戦的な態度にマガトゥラはむしろ心を躍らせていた。

「あなたが何をしようが、私は絶対にーーえっ?」

ーー屈しない。
そう言い切る前にサクラの体に異変が起こる。
太ももから股関節のあたりに何かが触れる感覚。
下を見ると左足を押さえていた彼女が、サクラのスカートの中に手を伸ばし、そして。
ーーショーツを軽く撫でた。

「あぁあっ!! ふあああああああああああああっ!!」

予想していなかった場所からの唐突な責めに、自分でも驚くほどの絶叫に近い嬌声が漏れる。
いや、責めと言うほどの物でもない。
ただ触れた、それだけ。
それだけでサクラの体は全身が緊張してしまう。

(おかしい! 何これ、私の体っ……どうなって……? )
「こらこら、物事には順番があるのよ。急にパンツを撫でたりしちゃあダメじゃない」
「だってぇ、この子、さっきからずっとパンツびちゃびちゃにして、可哀想だったから」

目の前で女性と淫魔がまるで友達同士かのように平然と話をしている。

「私は今この子をあなたの仲間にするために忙しいの。悪いけど向こうの触手たちと戯れててくれる? あとでたくさん犯してあげるからね」
「はぁい、じゃーお嬢ちゃん。また後でね。多分これからすっごい事されるけど意識飛ばしちゃだめだよぉ、もったいないからね」

そう言い残して右足を掴んでいた彼女は、ふらふらとした四足歩行で遠くに聞こえる嬌声の中へと混じってゆく。
間髪入れずに左足に別の触手が絡みついた。

「ふふっ、さっきもあの子ねぇ。つい数時間前はあなたと同じ目をしていたわ。絶対に屈しない。お前なんかには負けない。そんな感じの目ね。サクラちゃんはいつまで耐えられるかしら、楽しみね」

そう言いながらマガトゥラは、これみよがしに嗜虐的な笑みを見せつけた。
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