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Ep.8-3《愛欲の魔物》
しおりを挟む「うあっ、ああああッ!!」
絶叫を上げながら全力で抵抗したのが功を奏したのか、アーニャを拘束していた触手が振り払われる。
だが全身に付着した媚薬粘液が衣服に染み込み、べっとりと体に張り付いて、それがまるでマグマのような熱さでアーニャの体を温める。
「くぁっ、ぐっ……あ、あつっ、あぁあああッ!!」
全身を覆う快楽の熱に悶え苦しむ。
拘束からは逃れられたが、体を蝕む快楽からは逃れることはできない。
アーニャは立ちあがることもできずに、その場で体をビクビクと震わせながらのたうち回る。
「もうちょっとでしたね、アーニャさん。本気のアーニャさん、ちょっと怖くて、それでもかっこよかったです。でも……私なんかに負けちゃうなんてちょっとガッカリ……」
そう語りながら、サナは細い触手をアーニャに近づける。
そしてアーニャの手首を掴もうとしたその瞬間、触手の先端がナイフで切り払われる。
「くっ……まだ、終わってない……」
そう言って黒衣の少女はゆっくりと立ち上がる。
顔は真っ赤に火照っていて、よろよろとした足取りながらも、その瞳は真っ直ぐに前を見据えていた。
「あはっ……そうそう、それでこそアーニャさんですッ!」
まだ戦う意志を失っていないその瞳を見て、サナは興奮しながら再び細い触手を伸ばす。
それに対して近づく触手を一本ずつ切断していくアーニャ。
だが彼女の体がすでに限界であることは見るに明らかだった。
動いているのはナイフを動かす腕だけで、足は全く動いていない。
これでは無数にやってくる触手を払い除けるので精一杯で、サナに近づくことはできない。
体力の限界で視界は霞んでほとんど見えず、音と気配だけを頼りにナイフを降り続ける。
立つことさえやっとの状況でそんな動きができること自体驚異的ではあるのだが、そんなアーニャにも限界が訪れる。
「うぐっ……!」
サナの攻撃がアーニャの体を拘束するような動きから、鞭で打ち付けるような動きに変わる。
するといくつかの触手はナイフで防ぐことができなくなり、アーニャの体に痺れるような激痛が走り始める。
「ほらほら、アーニャさん! 頑張って……頑張って……!」
サナは行動とは乖離した言動を繰り返しながら、幾度も幾度も鞭のように触手を打ち続ける。
――バチン、バチン、バチンッ!
「うぐっ、あっ……あぁああっ!」
触手が肌を叩く音と、少女の悲鳴が室内にこだまする。
勢いのついた薙ぐような一撃がアーニャの腹部に直撃すると、ついにはアーニャの足が浮き、その体が地面を転がる。
その際、何か小さなケースがアーニャのポケットから転がり落ちた。
「――っ! う……ぐっ……」
(まずい……早く回収しなきゃ……!)
すぐさまアーニャはケースに向けて手を伸ばす。
地面を這いながら、必死の形相で手を伸ばし続ける。
そしてそのケースに指先が触れようとしたその瞬間、細い触手がそれを器用にひょいと拾い上げた。
(あっ……)
「ん~? なんですか、これ?」
サナは拾ったケースを自分の近くにまで引き寄せると、それをまじまじと見つめる。
試しにケースを開けてみると、中から出てきたのは小さなグミだった。
「これは……グミ?」
「か、かえ、して……ッ!」
這いつくばりながら必死にそれを取り返そうとするアーニャ。
その顔には今までにない焦りの表情が滲んでいた。
「あ、ははーん、もしかしてこれ、呪いの影響を抑えるアイテムだったり?」
「……っ!」
アーニャが何も語らなくとも、サナはその表情を見て全てを察する。
「なるほどなるほど、どうりで呪いの効果が薄いような気がしてました。あれ? でもこういうアイテムって時間制限があったりするんじゃないでしたっけ?」
体に伝う痛みや快楽に耐えながら、アーニャはギュッと歯を噛み締める。
このビルに入る前にグミを口にはしたものの、それからどのくらいの時間が経ったのか、アーニャ自身正確な時間は理解していなかった。
だからこそ感覚遮断の効果時間を伸ばすため、早急にグミの再接種が必要だった。
「くっ……おね、がい……返して……」
もはや強気な態度を取ることもできずに懇願する。
そうすることしかできなかった。
「……くふっ、あははっ!」
這いつくばりながらこちらを見上げるアーニャの姿を見て、サナは何かが吹っ切れたように笑い始める。
そしてアーニャの近くまで寄ってきたかと思うと――
「あぐッ!?」
――その背中を勢いよく踏みつけ始めた。
痛みと共に肺に溜まっていた空気が一気にあふれ出て、息ができなくなる。
「だめですよ。私の知ってる黒ずきんのアーニャは、目の前の敵にそんな情けないお願いをしたりしないんです」
サナは煽るようにグミが入ったケースを見せつけながら、グリグリと背中を踏みつけ続ける。
「うぐっ……ああっ……!」
地面に這いつくばりながら必死にグミのケースに手を伸ばすアーニャのその姿は側から見ても滑稽なものだった。
「ふふっ……もっと抵抗してください。もっと敵意を持った瞳で私を見てください。それができないなら……こうです!」
「なに、を……あっ、うぁああああッ!!」
細い触手が全身に絡まる。
手首から足首まで、いくつもの触手が体に絡まってアーニャの体の自由を奪う。
そしてそのまま体を宙に持ち上げられる。
「だ、め……サナちゃん……これ以上……っ!」
「うるさい」
「――あがッ!?」
ついには首にも触手が絡みつき、地面に引っ張るように締められる。
アーニャはまるで空中でブリッジするかのような体勢になり、その太ももにサナの指が触れる。
ビクンと体が震えた直後、アーニャは必死に足を閉じようとするが、太ももや股関節の辺りに新たな触手が巻きついて無理やり股を開かされる。
「あッ……かひッ……」
「ふふ、惨めな姿……黒くてエッチなショーツがこんなに濡れちゃってます……」
まともに声も発することすらできない状況で全身を締め上げられ、その上濡れた太ももや股関節の辺りを指で撫でられる。
色んな感覚が入り混じって、頭が壊れてしまいそうだった。
「私一つだけアーニャさんに謝らなければならないことがあるんです」
不意にサナは深刻そうな表情に変わり、一人語りだす。
「ベータアリーナでレオ選手にボコボコにされて何度も絶頂させられてるアーニャさんを見て、ファンならそこで頑張れって応援しなきゃいけないのに…………私、すっごく興奮してたんです」
「ぐっ……がっ……あっ……!」
思考すらまともに働かないアーニャの耳元で、サナは一方的に独白を続ける。
「アーニャさんが淫らに敗北する姿を見て、ああ……もっと見たい……って、そう思うようになっちゃって……だから…………だからもう一度見せてください、アーニャさんの……一番素敵な姿を!」
サナの指先が、ショーツ越しにアーニャの秘裂を撫でる。
その刺激に、アーニャの臀部がキュッと閉まる。
「――ッ!? いッ、ぎぅ……ッ!?」
そして偶然にも、同じタイミングで感覚遮断グミの効果が切れる。
「――ぅあッ!? や、いや……ッ!!」
快楽の呪いが、一気に解き放たれる。
「あ…………ああッ!? あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッ!!」
まるで爆発でも起きたかのように、アーニャの秘所の奥に溜まっていたものが一気にあふれ出した。
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