87 / 107
2章
44
しおりを挟む
ケイが光に包まれた。
というのが数分前の話。
そして現在。
「えぅ…う…」
「けーいー?ほら、おやつだぞー?」
けいくん5歳。
中身も外見も全部5歳の時のケイ。
それもこれも全部未完成の魔法陣が原因なのだが。
ちなみにノアのせいではない。
かつての魔王がつくりかけのままで命を絶たれてしまったらしい。
ようするにあの魔法陣は遺物である。
「うぅ…」
マヤが野生のカンでケイの異変を感じ取り、ノアがなんとかリビングまで連れて来たまではよかった。
しかしながらマヤの顔を見た途端にケイが泣き出してしまったのだ。
当然マヤはあの手この手で泣きやませようと頑張るのだが意味をなさず。
「………………」
「うわぁ…わかりやすく落ち込んでるぅ…」
テーブルの上に肘をつき頭を抱える。
その雰囲気はリストラにあった父親。
纏う空気が重過ぎる。
「どうしたらいい?整形か?整形するしかないのか?恵に嫌われたら生きていけない…」
「う、うわぁ…」
さすがにこれにはノアもドン引き。
ノアはケイがこのままでも一切構わないのだが何があるかわからないのが魔王だ。
その魔法陣をつくったのが魔王ならばやらかしている可能性が大いにある。
どういう魔法かはわからないがケイの過保護スキルにひっかからないもの、となるとお手上げだ。
少なくともノアにはどうしようもない。
マヤは論外である。
「…こういうのは人間の方が知ってるかもねぇ…」
魔法で頼れるのはエルフだが残念ながら人間のことに興味のあるようなエルフはどこにいるかわからない。
「ケーイくん。おやつ食べよぉ?」
「……ん」
ね?とニコニコ笑顔でカップケーキを差し出せば、おずおずとそれを受け取る。
マヤはあまりにもあの人に似ているため5歳なケイには怖くて仕方ないのだ。
しかしノアは違う。
ケイと同じような背丈で容姿。
ノアに対してはそれほど怖がっていない。
ただちょっと人見知りしているだけだ。
「エディさんの所に行くぞ…」
頭を抱えたまま呟くように言った。
困ったらエディ。
マヤは異世界でのことはエディを頼りにしている。
特に魔法とケイについては。
「…はぁい。いいけどぉ、馬車の中って狭いからぁ…」
距離が近いとケイはまた泣いてしまうだろう。
今もまだちょっとぐずっているのだから。
「わかってる。俺は走って行く。途中で拾ってくれ」
身体強化やある種のチートスキルもろもろを駆使すれば馬車よりも早く行くことは容易である。
もちろんこんな馬鹿げたこと人間ではマヤくらいしかできないが。
ウルフの走りを見ていろいろ学んだらしい。
「はいはい。じゃあケイくん」
「?」
「ボクと一緒にお散歩しよっかぁ」
というのが数分前の話。
そして現在。
「えぅ…う…」
「けーいー?ほら、おやつだぞー?」
けいくん5歳。
中身も外見も全部5歳の時のケイ。
それもこれも全部未完成の魔法陣が原因なのだが。
ちなみにノアのせいではない。
かつての魔王がつくりかけのままで命を絶たれてしまったらしい。
ようするにあの魔法陣は遺物である。
「うぅ…」
マヤが野生のカンでケイの異変を感じ取り、ノアがなんとかリビングまで連れて来たまではよかった。
しかしながらマヤの顔を見た途端にケイが泣き出してしまったのだ。
当然マヤはあの手この手で泣きやませようと頑張るのだが意味をなさず。
「………………」
「うわぁ…わかりやすく落ち込んでるぅ…」
テーブルの上に肘をつき頭を抱える。
その雰囲気はリストラにあった父親。
纏う空気が重過ぎる。
「どうしたらいい?整形か?整形するしかないのか?恵に嫌われたら生きていけない…」
「う、うわぁ…」
さすがにこれにはノアもドン引き。
ノアはケイがこのままでも一切構わないのだが何があるかわからないのが魔王だ。
その魔法陣をつくったのが魔王ならばやらかしている可能性が大いにある。
どういう魔法かはわからないがケイの過保護スキルにひっかからないもの、となるとお手上げだ。
少なくともノアにはどうしようもない。
マヤは論外である。
「…こういうのは人間の方が知ってるかもねぇ…」
魔法で頼れるのはエルフだが残念ながら人間のことに興味のあるようなエルフはどこにいるかわからない。
「ケーイくん。おやつ食べよぉ?」
「……ん」
ね?とニコニコ笑顔でカップケーキを差し出せば、おずおずとそれを受け取る。
マヤはあまりにもあの人に似ているため5歳なケイには怖くて仕方ないのだ。
しかしノアは違う。
ケイと同じような背丈で容姿。
ノアに対してはそれほど怖がっていない。
ただちょっと人見知りしているだけだ。
「エディさんの所に行くぞ…」
頭を抱えたまま呟くように言った。
困ったらエディ。
マヤは異世界でのことはエディを頼りにしている。
特に魔法とケイについては。
「…はぁい。いいけどぉ、馬車の中って狭いからぁ…」
距離が近いとケイはまた泣いてしまうだろう。
今もまだちょっとぐずっているのだから。
「わかってる。俺は走って行く。途中で拾ってくれ」
身体強化やある種のチートスキルもろもろを駆使すれば馬車よりも早く行くことは容易である。
もちろんこんな馬鹿げたこと人間ではマヤくらいしかできないが。
ウルフの走りを見ていろいろ学んだらしい。
「はいはい。じゃあケイくん」
「?」
「ボクと一緒にお散歩しよっかぁ」
10
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話
人生イージーモードになるはずだった俺!!
抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。
前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!!
これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。
何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!?
本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。
なぜか第三王子と結婚することになりました
鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!?
こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。
金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です
ハッピーエンドにするつもり
長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる