弟、異世界転移する。

ツキコ

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2章

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「この家ってぇ、元々あったのを改造したらしいよぉ」

ケイの部屋で寛ぎながらノアは言った。
ケイはといえばスマホをいじっている。
アプリ制作がよほど楽しいらしい。

「へえ…兄さんが?」

さすが兄さん。
なんでもできる。

…この家ほぼ全部兄さんのハンドメイドってことなのか。

「そうだよぉ。ケイくん探検したぁ?」

「…してない。見てこようかな」

探検、と言われるとなんだか行きたくなる。
急にわくわくした気持ちになってくる。

そういえばまだ家の中を詳しくは見てなかったな。
いい機会だし全部見て回ろう。
とはいえあまり見る場所もない気がするけど。

「うんうん、そうしなよぉ。ってことでボクはおやつ食べて来るねぇ」

「うん。あ、俺のも食べていいよ」

「わぁーい!ありがとぉケイくん」

ノアを見ていると微笑ましい気持ちになる。
兄さんもこんな気持ちなんだろうか。

うきうきで部屋を出て行くノアを見送り、ノアとは逆方向へ歩を進める。
行ったことがないのはこっち側がほとんどだと思う。

平屋なので2階はない。
強いて言うならもしかすると屋根裏部屋的なものがあるかもだが。

手当たり次第扉を開いていく。

空き部屋その1。

「おお…」

畳に窓障子。
和室である。

気になることといえば、畳の調達方法だ。
この世界にも畳はあるのだろうか。
それともやはりこれも兄さんが…

畳特有の匂いにこの落ち着く雰囲気。
思わず寝転がりたくなるが探検中なので我慢。
今度来た時はゆっくりすることに決め、次へ。

空き部屋その2。

物置きらしき部屋だった。
奥の方へ行くとかなり埃が被っているためここが元々あった部分なのだろう。
たぶん物がありすぎて手がつけられなかったんだと思う。

空き部屋その3。

引き続き元々あった部分と思われる。
書庫として使っていたのだろうか。

本棚の間をぬって奥へ進む。
どういうわけか段々と本棚の配置の間隔が狭くなっていた。

そしてなんとかすり抜けた先の少し、ほんの少しだけ広い空間。

「ん?」

一部の床の色が変わっていた。
それも正方形に。

あからさますぎる。
ここに何かありますよ感が否めない。

だがしかしこれは探検なので。

どうにかこうにか取っ手を探し出しその扉を開く。
出てくるのは案の定地下への階段。

秘密基地のようで、期待いっぱいに階段を降りる。

「ほあ…」

そこはいくつもの本に囲まれた魔術研究施設だった。
どういう言い方が正しいのかはわからないが。

ここで何かを研究していたのは間違いないだろう。
ふらふらと部屋を彷徨く。

その床には魔法陣が記してあるが、明かりの乏しいこの場所でケイがそれに気づくことはない。
だから例えば足下が突然光り始めたり身体が光ったりでもしない限り気づかないだろう。

「えっ!?」

足下の光が部屋全体を包むように広がる。
その中心にいるのはケイ。

その中心にあるのは未完成の魔法陣。
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