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2章
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「ケイくん、ケイくん」
歩く度に振動がくる。
懐かしい感覚だ。
本当に小さい頃は父さんにもこうしてもらっていた気がする。
「着いたからおーきーてぇ」
「んん…」
「ケイくんてばぁ」
「なぁに…」
おんぶされたまま、寝ぼけ眼のまま返事をする。
熱っぽさと怠さが消えない。
風邪の引き始めのような症状だ。
「あっ起きたぁ?あのね、ここはね、エルフが住んでいる地区なんだよぉ」
「えるふ…?」
「うん、そうそう」
エルフってなんだっけ。
たしかカイさんが説明してくれたような…
エルフとは、魔力の扱いに長けた妖精族である。
つまり賢い妖精さんだ。
「おい魔王、何しに来たんだ。研究させてくれないなら帰ってくれ」
前方から聞こえる男性の声。
ぼんやりとそちらを見るものの、はっきりとその姿は見えない。
「こんな風に変なのが多いから1人では来ちゃ駄目だからねぇ」
「変なのとはなんだ!って、ん?なんだそれ。こちらの人間…ではないな?」
どんどん近づいて来るエルフの男性。
近づいてようやくその特徴的な耳に気づく。
あと顔がいい。
さすがは妖精。
「そうだねぇ。迷子だよぉ」
「いや迷い人だろう…だがそうか、異世界人か。これはいい研究材料に…」
「駄目だよぉ?この子に手ぇ出したら殺しちゃうかもぉ」
「なんだ、つまらん。なんのために連れて来たんだ」
年の功か、魔王の牽制にもまるで動じない。
それどころか手土産の1つもないのかと言いそうな勢いだ。
「んー…種族紹介とか?ケイくんてば人間のとこにしかいなかったからねぇ」
「ほう?またそちらに落ちたのか」
迷い人が現れるのは9割の確率で人間のいる土地。
こちらのように魔族やら妖精族やらがいる場所に現れることはまずない。
ちなみに残り1割は誰もいない寂れた土地に現れる。
「あーあとねぇ、ケイくんに効くのなにかないかなーって思ったんだけどぉ」
「俺は知らん。人間のことを研究するようなやつはここに残ったりしない。フェイの下へ行く方が有益だろう」
フェイとはエルフと同じ妖精族である。
森に棲む背丈の小さな妖精だ。
ケイの世界では妖精らしい妖精だろう。
ある種小人のような妖精なのだから。
「そっかぁ。じゃあ今度また来るねぇ」
「うむ。今度はその子どもが元気な時に来るといい。多少のもてなしはしてやろう」
エルフが王様かな?となるが態度が大きいだけなので気にしないでほしい。
魔王とは言うが実力が最も上というだけで何か命令をしたら動くとかそういう形態があるわけではない。
むしろ拒否られるだろう。
人間のいない土地に住む者は人間から逃げて来た者が半数を占める。
そのためこの土地で羽を伸ばすことが多く、自由を求める傾向にある。
嫌なことは嫌と言わなくてはいけないことを学んでいるためだ。
「ケイくん?ほら、挨拶してあげて」
「ん…?ん、また、きます…」
「いつでも来るといい。研究材料は大歓迎だ!」
「はいはい。次のとこ着くまで寝てていいからねぇ」
「ん……」
車がない。
馬は乗らせてくれない。
乗り物がない。
徒歩で行くしか移動手段はないのだ。
再び歩き出したその背中でゆっくりと瞳を閉じた。
歩く度に振動がくる。
懐かしい感覚だ。
本当に小さい頃は父さんにもこうしてもらっていた気がする。
「着いたからおーきーてぇ」
「んん…」
「ケイくんてばぁ」
「なぁに…」
おんぶされたまま、寝ぼけ眼のまま返事をする。
熱っぽさと怠さが消えない。
風邪の引き始めのような症状だ。
「あっ起きたぁ?あのね、ここはね、エルフが住んでいる地区なんだよぉ」
「えるふ…?」
「うん、そうそう」
エルフってなんだっけ。
たしかカイさんが説明してくれたような…
エルフとは、魔力の扱いに長けた妖精族である。
つまり賢い妖精さんだ。
「おい魔王、何しに来たんだ。研究させてくれないなら帰ってくれ」
前方から聞こえる男性の声。
ぼんやりとそちらを見るものの、はっきりとその姿は見えない。
「こんな風に変なのが多いから1人では来ちゃ駄目だからねぇ」
「変なのとはなんだ!って、ん?なんだそれ。こちらの人間…ではないな?」
どんどん近づいて来るエルフの男性。
近づいてようやくその特徴的な耳に気づく。
あと顔がいい。
さすがは妖精。
「そうだねぇ。迷子だよぉ」
「いや迷い人だろう…だがそうか、異世界人か。これはいい研究材料に…」
「駄目だよぉ?この子に手ぇ出したら殺しちゃうかもぉ」
「なんだ、つまらん。なんのために連れて来たんだ」
年の功か、魔王の牽制にもまるで動じない。
それどころか手土産の1つもないのかと言いそうな勢いだ。
「んー…種族紹介とか?ケイくんてば人間のとこにしかいなかったからねぇ」
「ほう?またそちらに落ちたのか」
迷い人が現れるのは9割の確率で人間のいる土地。
こちらのように魔族やら妖精族やらがいる場所に現れることはまずない。
ちなみに残り1割は誰もいない寂れた土地に現れる。
「あーあとねぇ、ケイくんに効くのなにかないかなーって思ったんだけどぉ」
「俺は知らん。人間のことを研究するようなやつはここに残ったりしない。フェイの下へ行く方が有益だろう」
フェイとはエルフと同じ妖精族である。
森に棲む背丈の小さな妖精だ。
ケイの世界では妖精らしい妖精だろう。
ある種小人のような妖精なのだから。
「そっかぁ。じゃあ今度また来るねぇ」
「うむ。今度はその子どもが元気な時に来るといい。多少のもてなしはしてやろう」
エルフが王様かな?となるが態度が大きいだけなので気にしないでほしい。
魔王とは言うが実力が最も上というだけで何か命令をしたら動くとかそういう形態があるわけではない。
むしろ拒否られるだろう。
人間のいない土地に住む者は人間から逃げて来た者が半数を占める。
そのためこの土地で羽を伸ばすことが多く、自由を求める傾向にある。
嫌なことは嫌と言わなくてはいけないことを学んでいるためだ。
「ケイくん?ほら、挨拶してあげて」
「ん…?ん、また、きます…」
「いつでも来るといい。研究材料は大歓迎だ!」
「はいはい。次のとこ着くまで寝てていいからねぇ」
「ん……」
車がない。
馬は乗らせてくれない。
乗り物がない。
徒歩で行くしか移動手段はないのだ。
再び歩き出したその背中でゆっくりと瞳を閉じた。
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