弟、異世界転移する。

ツキコ

文字の大きさ
上 下
62 / 107
2章

19

しおりを挟む
ケイ曰く、

“兄さん”はなんでもできるらしい。
勉強や運動はもちろん、料理や裁縫などの家事全般。
とにかくなんでもできる。
ケイは知らないがこっそり特訓していたりする。

そんな兄さんが最も得意なのは喧嘩である。
才能があったというしかないぐらいだ。

ケイにカツアゲをしてきた男数名を捩じ伏せたのが始まり。
特にケイと2人暮らしを始めてからは父からの追っ手やチンピラがぐっと増えた。
家賃の安さをとったので周辺の治安が少々悪いというのもある。

そんなこんなでどういうわけか有名になっていたのである。
結果マヤの強さに惚れ込む不良が続出。
ケイ至上主義なマヤを天辺とする、ある種宗教のような集団になったのだった。

それが今こちらでも行われようとしている。

「うわっ!!」

「もっぺん言ってみろや…恵を、なんだって?」

はい、教育的指導入りました!
宗教染みた原因がこれだ。
その雰囲気、その圧迫感、その威圧に恐縮してしまう。

「えっえーと、えーとっそう!ケイは鬼ごっこって呼んでました!!」

頓珍漢な返事をするシモン。
シモンとしてはケイを虐めていたわけではない、ということを伝えたいようだ。

「…そうか。遊んでいただけならいい…が、そうじゃなかったら殺す」

「っっっっっっ!!!」

これほどまでに高速な頷きを見たことがあるだろうか。
尋常じゃないほど首ががっくがくだがそれは大丈夫なのか。

多少は冷静になったのか姿勢を正すマヤ。

「説得がどうとか言っていたが俺になにか用か?」

「ええ、そうなの。アタシはエディ・ネルソン。そっちがカイ・リンドであれがアラン・ブレンドレルよ」

自己紹介は手短かに。
さっと流し進める。

「まず、あなたはケイのお兄さんでいいのよね?」

「ああ。三好真矢、恵の兄だ」

説得、交渉はエディの仕事。
カイとアランはシモンを含めた死屍累々を片づけている。

「ケイが魔王に攫われたのは聞いたかしら?」

「伝言を聞いた。恵のことなんだろ?」

「そうよ。それであなたに協力してほしいの」

「ああ…なるほど。だから勇者なのか」

「魔王討伐にはアタシ達が同行するわ。もちろんあなたに選ぶ権利があるのだけど」

「俺はアンタらがどれだけ強いのか知らない」

「…そう言うと思ったわ。まずはあなたが無意識に使ってる魔法の無効化をどうにかしないと危険で訓練できないわ」

「…………。魔法あったのか…」

兄さん異世界に魔法があることをご存知でなかった。
魔物がどうたら魔王がどうたらしか説明を受けていなかった。

「……。あ、アタシが1から…0から教えるから大丈夫よ!ケイにもアタシが教えたんだから」

「そうか…。うん。じゃあお願いします、エディさん」

三好真矢、尊敬できる相手には敬意を払います。
その後カイ達も混ざり魔法の訓練が始まるのだがこれがなかなかに大変だった。

天は万物を与えず。
正確には天は人に二物を与えず。

まあ要するに兄さん、シモン同様に壊滅的な魔法センスでありました。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

無自覚主人公の物語

裏道
BL
トラックにひかれて異世界転生!無自覚主人公の話

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話

人生イージーモードになるはずだった俺!!

抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。 前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!! これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。 何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!? 本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...