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2章
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一方その頃王城では。
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
壊れたラジカセのように同じ言葉を繰り返す。
がりがりと首元を掻き毟り、首輪を取ろうとする。
その様子もまた壊れた玩具のようだった。
「コーラ様かわいそうですぅ…」
「ロリ。我々は今回の件に関わってはいない。賢い君なら言いたいことがわかるね?」
「うん…ダーリンの言いたいこと、ちゃんとわかるよ…」
ここは王城の中でも特別な牢獄。
罪を犯した王族が捕らえられる場所だ。
コーラは主犯としてそこに捕らえらた。
ロリ達はその場にいなかったこと等証拠不十分によりまだ捕まっていない。
本人達は捕まる気などないが時間の問題だろう。
そしてこちらは第一王子の執務室。
「ヴィルヘルム第一王子殿下。赤の騎士団、推参いたしました」
「ああ…。まずは謝罪を。ケイ・ミヨシを連れ去ってすまなかった」
「いえ、顔をお上げください」
室内にいるのはヴィーことヴィルヘルムと騎士団長のアランだ。
「それで、ケイはどちらに」
「…連れ去らわれてしまったんだ。相手は、恐らく魔王だろう」
「………またか…我々が呼ばれた理由とは何でしょうか」
顔に若干の落胆を浮かばせながら問う。
もともとはケイをヴィーから奪還する予定だったのだ。
それがさらに攫われたとなれば落胆するのも無理はない。
そしてこれでケイ的異世界誘拐歴は3度目になる。
「手がつけられなくて困っている相手がいる。身体能力がずば抜けていて王城の者では対応できなかった。諸君らの力を借りたい」
「はあ」
「一応伝えておくが、彼は勇者召喚の儀式でこちらへ来た異世界人だ」
「そうですか」
そんなこと言われても知らねーよ、と相手が相手ならば言っていただろう。
アランの中で異世界人代表はもちろんケイだ。
というよりも異世界人はケイしか知らない。
そのため新たに異世界から来たと言われてもぴんとこない。
「我々と全く会話をしてくれないので説得も頼みたい」
「は?」
「魔王の伝言は聞いたか?」
「いえ…」
「オマエの唯一はもらった、だ。それを聞いてからの彼は手がつけられない。どうにか宥めてほしい」
なんだそれと思うのは当然だろう。
伝言聞いたら暴れ出すってかなり危険だ。
聞いたところ、この世界のことを大まかに話し、最後に伝言を伝えたのだとか。
恐らくその伝言の意味を理解したのだろう。
その異世界人はすぐさま対人戦を要求したらしい。
そしてそこから始まる勇者によるちぎっては投げちぎっては投げの暴挙。
王城の軟弱な連中ではまるで相手にならなかったようだ。
それで最も実力のある赤の騎士団に白羽の矢が立ち、召集された次第だ。
きちんとした態度で執務室を出る。
真面目にするのはここまでだ。
「そんじゃ勇者サマの顔でも拝むとすっか」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
壊れたラジカセのように同じ言葉を繰り返す。
がりがりと首元を掻き毟り、首輪を取ろうとする。
その様子もまた壊れた玩具のようだった。
「コーラ様かわいそうですぅ…」
「ロリ。我々は今回の件に関わってはいない。賢い君なら言いたいことがわかるね?」
「うん…ダーリンの言いたいこと、ちゃんとわかるよ…」
ここは王城の中でも特別な牢獄。
罪を犯した王族が捕らえられる場所だ。
コーラは主犯としてそこに捕らえらた。
ロリ達はその場にいなかったこと等証拠不十分によりまだ捕まっていない。
本人達は捕まる気などないが時間の問題だろう。
そしてこちらは第一王子の執務室。
「ヴィルヘルム第一王子殿下。赤の騎士団、推参いたしました」
「ああ…。まずは謝罪を。ケイ・ミヨシを連れ去ってすまなかった」
「いえ、顔をお上げください」
室内にいるのはヴィーことヴィルヘルムと騎士団長のアランだ。
「それで、ケイはどちらに」
「…連れ去らわれてしまったんだ。相手は、恐らく魔王だろう」
「………またか…我々が呼ばれた理由とは何でしょうか」
顔に若干の落胆を浮かばせながら問う。
もともとはケイをヴィーから奪還する予定だったのだ。
それがさらに攫われたとなれば落胆するのも無理はない。
そしてこれでケイ的異世界誘拐歴は3度目になる。
「手がつけられなくて困っている相手がいる。身体能力がずば抜けていて王城の者では対応できなかった。諸君らの力を借りたい」
「はあ」
「一応伝えておくが、彼は勇者召喚の儀式でこちらへ来た異世界人だ」
「そうですか」
そんなこと言われても知らねーよ、と相手が相手ならば言っていただろう。
アランの中で異世界人代表はもちろんケイだ。
というよりも異世界人はケイしか知らない。
そのため新たに異世界から来たと言われてもぴんとこない。
「我々と全く会話をしてくれないので説得も頼みたい」
「は?」
「魔王の伝言は聞いたか?」
「いえ…」
「オマエの唯一はもらった、だ。それを聞いてからの彼は手がつけられない。どうにか宥めてほしい」
なんだそれと思うのは当然だろう。
伝言聞いたら暴れ出すってかなり危険だ。
聞いたところ、この世界のことを大まかに話し、最後に伝言を伝えたのだとか。
恐らくその伝言の意味を理解したのだろう。
その異世界人はすぐさま対人戦を要求したらしい。
そしてそこから始まる勇者によるちぎっては投げちぎっては投げの暴挙。
王城の軟弱な連中ではまるで相手にならなかったようだ。
それで最も実力のある赤の騎士団に白羽の矢が立ち、召集された次第だ。
きちんとした態度で執務室を出る。
真面目にするのはここまでだ。
「そんじゃ勇者サマの顔でも拝むとすっか」
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