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2章
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空気が上手く喉を通らない。
あの細腕で引っ張られる度に苦しい。
彼女は脳筋ゴリラ集団に押さえつけられたケイを見下ろしながらこう言った。
『仮にもペットなんだからちゃぁんと首輪をつけてあげないとね?だってほら、誰の犬が死んだかわからないと困るでしょう?』
彼女に促されるまま歩を進める。
引きずられていると言っても差し支えない。
どこかへ向かっている彼女。
その表情は嬉々としていた。
「お兄様ったらわたくしが捨てたものを拾ってるのよ?それってわたくしのものが欲しいってことよね?」
彼女が捨てるのは壊れたものたち。
彼女が奪って壊したものすべて。
物だけでなく人も全部。
彼は彼女の壊れた玩具を拾う哀れな王子様。
「お兄様はわたくしの前では強がっているのかしら、ふふっ。それだけわたくしが特別ってことよね?」
嫌いだと知ってはいても信じてはいない彼女。
それを信じる必要がないからだ。
「おまえなんかよりもわたくの方がお兄様に愛されているってことよね?ねえ、そうでしょう?」
楽しい思い出を語るようにゆるりと微笑んだ頬。
表情からはまるで窺えないその狂気。
彼女は返事を必要としない。
他人の答えなど聞くつもりもない。
ただし彼の意見ならば考えてみてもいい。
「コーラ様ぁ~!」
ぱたぱたぱたっと駆け寄るツインテール。
ピンク!!リボン!!フリル!!なツインテっ子だ。
その子の登場により彼女の足が止まる。
できた隙間にほっと息を吐く。
「あれえ?わんちゃんのお散歩ですかぁ?」
「ロリも一緒にどう?」
「いいんですかあ!あっでもでもぉ、わたしコーラ様に用事があってぇ…」
お姫様な彼女はコーラ、ツインテな彼女はロリというらしい。
身分か立場かはわからないがコーラの方が上のようだ。
…炭酸飲みたい。
「アレの準備ができましたぁ!ってダーリン…じゃなくて、総帥様が言ってましたぁ」
「ちょうど向かっていたところよ。これはあなたが持ちなさい。逃がしたりしては駄目よ?」
「はぁい!」
「っけほ…!」
コーラが手慣れた上級者だとしたらロリは全くの初心者である。
コーラは一定の力を加え続けていたがロリは不規則。
しかも時折気まぐれに一際強く引く。
「このわんちゃんどうするんですかぁ?」
「わたくしの実験に使うのよ」
「じゃあじゃあ、使い終わったらわたしにください~!」
「こんなのが欲しいの?お兄様もあなたも変わってるのね」
コーラはロリに対して、というか女性に対しては悪意を向けない。
女性の頂点に立つような存在の彼女にとって女性は全て仲間であり手下だからだ。
「だってぇ、綺麗な顔してるじゃないですかぁ!見てるだけでも楽しめますよぉ?」
「その綺麗な顔が使い物にならなくなってもいいわよね?」
「いいですよぉ。欲しいのは身体だけですからぁ」
王都のとりわけ王城に住まう女性たちは実験を好む。
自分の好きなものを好きなようにすることがお気に入りらしい。
その犠牲者は数知れないが今日もまた、厄介な実験に巻き込まれる者がいるようだ。
あの細腕で引っ張られる度に苦しい。
彼女は脳筋ゴリラ集団に押さえつけられたケイを見下ろしながらこう言った。
『仮にもペットなんだからちゃぁんと首輪をつけてあげないとね?だってほら、誰の犬が死んだかわからないと困るでしょう?』
彼女に促されるまま歩を進める。
引きずられていると言っても差し支えない。
どこかへ向かっている彼女。
その表情は嬉々としていた。
「お兄様ったらわたくしが捨てたものを拾ってるのよ?それってわたくしのものが欲しいってことよね?」
彼女が捨てるのは壊れたものたち。
彼女が奪って壊したものすべて。
物だけでなく人も全部。
彼は彼女の壊れた玩具を拾う哀れな王子様。
「お兄様はわたくしの前では強がっているのかしら、ふふっ。それだけわたくしが特別ってことよね?」
嫌いだと知ってはいても信じてはいない彼女。
それを信じる必要がないからだ。
「おまえなんかよりもわたくの方がお兄様に愛されているってことよね?ねえ、そうでしょう?」
楽しい思い出を語るようにゆるりと微笑んだ頬。
表情からはまるで窺えないその狂気。
彼女は返事を必要としない。
他人の答えなど聞くつもりもない。
ただし彼の意見ならば考えてみてもいい。
「コーラ様ぁ~!」
ぱたぱたぱたっと駆け寄るツインテール。
ピンク!!リボン!!フリル!!なツインテっ子だ。
その子の登場により彼女の足が止まる。
できた隙間にほっと息を吐く。
「あれえ?わんちゃんのお散歩ですかぁ?」
「ロリも一緒にどう?」
「いいんですかあ!あっでもでもぉ、わたしコーラ様に用事があってぇ…」
お姫様な彼女はコーラ、ツインテな彼女はロリというらしい。
身分か立場かはわからないがコーラの方が上のようだ。
…炭酸飲みたい。
「アレの準備ができましたぁ!ってダーリン…じゃなくて、総帥様が言ってましたぁ」
「ちょうど向かっていたところよ。これはあなたが持ちなさい。逃がしたりしては駄目よ?」
「はぁい!」
「っけほ…!」
コーラが手慣れた上級者だとしたらロリは全くの初心者である。
コーラは一定の力を加え続けていたがロリは不規則。
しかも時折気まぐれに一際強く引く。
「このわんちゃんどうするんですかぁ?」
「わたくしの実験に使うのよ」
「じゃあじゃあ、使い終わったらわたしにください~!」
「こんなのが欲しいの?お兄様もあなたも変わってるのね」
コーラはロリに対して、というか女性に対しては悪意を向けない。
女性の頂点に立つような存在の彼女にとって女性は全て仲間であり手下だからだ。
「だってぇ、綺麗な顔してるじゃないですかぁ!見てるだけでも楽しめますよぉ?」
「その綺麗な顔が使い物にならなくなってもいいわよね?」
「いいですよぉ。欲しいのは身体だけですからぁ」
王都のとりわけ王城に住まう女性たちは実験を好む。
自分の好きなものを好きなようにすることがお気に入りらしい。
その犠牲者は数知れないが今日もまた、厄介な実験に巻き込まれる者がいるようだ。
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