弟、異世界転移する。

ツキコ

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1章

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『こんの馬鹿犬があああああ!!!!』

『ウワア!ナンデ!?』

『人間を連れて来る阿呆がどこにいるこの駄犬!!』

『フォレストウルフダヨ!ボス!』

「…………」

目の前で繰り広げられる噛みつき合いの喧嘩(一方的)。
推定3mと5m強。
四足歩行でこの大きさなのだから立ち上がったらどこまで大きいのか。

森は奥に行くにつれて木々が巨大化していくかのようだった。
ボスと呼ばれるモンスターがいる場所には一際大きな木があった。
それがここ。

木々の間を縫うようにして進むものだからかなりスリリングだった。
時折現れた…というより不運にも通路にいた巨大カマキリはぺちゃんこに踏まれていた。
見てはいないけど。
ザッザッザッという音に混じってベシャ、ベチャと聞こえれば大体察する。

パトリックは必ず助けに来ると言っていたが来れるのだろうか。
森の奥地な上にここは狼の巣窟だ。
この大樹を中心として生活しているらしい。

自力で帰らないと無理かなあ…

どうやって帰ろうか、そう考え始めた時鈍い音が響いた。
それと同時にキャン!という鳴き声。

『次は容赦せんぞ』

『ウワーン!ゴメンナサイ、ボス!ステナイデー!!』

足下に縋りつくような動きのフォレストを一蹴してこちらに目を向けてきた。

『それで…そこの人間』

「はい」

『すまなかったな。元いた場所まで送ろう』

「あ…ありがとうございます」

『ふむ…このくらいならちょうどいいか?』

そう言うなり徐々に小さくなっていくボス。
巨大化ではなく縮小化ができるらしい。
ちょうどいいサイズというのはケイが乗るのに、ということのようだ。

『早く乗れ』

「し、失礼します」

ケイが乗ったのを確認するとゆっくり歩き出す。
先程のアトラクションなフォレストウルフと違い快適な乗り心地だ。
歩き始めてすぐ、横に先程のフォレストウルフがやって来た。

『ボスー』

置いて行かないで、というように周りをぐるぐるうろちょろし始める。
見ている分には可愛い。
ただ見ているだけならば。

しかしひしひしと苛立ちが下の方から伝わってくるわけで。
結果乗り心地の低下を招いている。

『…………………留守は任せた』

『!!ウン!マカセテ!』

ものすごく渋々という感じではあったがそう言うと、尻尾を千切れんばかりにぶんぶん振って大樹へと戻って行った。
やはり狼というよりも犬である。

『それで、人間。どこから来たんだ?』

「騎士団の方から…」

『うむ…あっちか?』

「えっわかんない」

『我もわからん。人間の匂いが近いのはあっちだ』

「とりあえず近くまでお願いします」

『任せておけ』
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