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1章
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「ん…」
眩しさを感じて目を開ける。
ベッド…だけど自分のじゃない。
昨日エディと会ったところまでは覚えている。
この世界に来てから気絶でしか眠れていない。
2日連続で気絶睡眠。
もはや睡眠と言っていいのかも疑問だが。
ゆっくりと辺りを観察する。
広い部屋だ。
きちんと整理されていて花まで飾られている。
周りを見渡してぎょっとした。
「エディさん…?」
なんでソファで眠ってるんだろう。
…まさかここエディさんの部屋?
そう考えればしっくりくる。
気絶した自分を運んでここに寝かせた。
そして寝る場所がなくなったのでソファへ。
状況を理解したと同時に申し訳なさが募る。
もしかしたら昨日のアレはエディの知るところではなかったのかもしれない。
偶然だったかもしれないのに勝手に決めつけてしまった。
その上ベッドまで占領してしまった。
「エディさん」
そっとエディを揺らす。
「んん…?」
眉間に皺を寄せながら薄っすらと目を開ける。
もしかして朝が苦手なんだろうか。
少しの間ぼやっとしていたエディだったがはっと目を開く。
「ケイ、具合はどう?気分は?」
がしっと肩を掴み眉を下げて言う。
その顔には心配だと大々的に書いてあるようだった。
そんな様子に少し心が温まる。
「大丈夫です。ベッド占領してすみませんでした。あと、おはようございます、エディさん」
「あ、ええ、おはよう。具合が悪くなったらすぐに言うのよ?」
「はい」
何事もなかったかのようなケイの態度にほっと息をつく。
とりあえずはこれでいいのだ。
エディはケイの肩を掴んでいた手を離す。
「ケイ、今日アタシ非番なの」
「お休みなんですね」
「だから一緒にギルドカードを作りに行きましょう?」
「身分証の代わりですよね。わかりました。お願いします」
せっかくの休みなのに申し訳ない…とも思うが身分証は必須なのでありがたく受け入れる。
その返事にエディはうんうんと頷くとそういえば、と思い出したように言った。
「ケイ、ステータスは知ってるわよね?」
「すてーたす?えっと…」
ステータス。
確か兄さんがゲームをしている時にそんな単語を言っていたような?
ステ振りに気をつけろとか。
ステ振りってなに?と聞けばステータス振り分けのことだと言っていた。
ええと?それでステータスっていうのは能力値みたいなものだっけ?
「ううん…?」
駄目だ…全然わからない…
ステータスってなんだ。
「ケイ?…わからないならいいのよ?なんでもアタシに聞きなさいって言ったでしょう?」
「エディさん…はい。あの、ステータスってなんですか?」
その質問にエディは満足したように頷いた。
ステータスとはいわゆる個人情報の塊だった。
名前、性別、年齢、体力、魔力、保持スキル、加護、称号等がわかるらしい。
らしい、というのも自分で見ることができなかったからだ。
基本的には自分のみが見れるらしいのでこればっかりはどうしようもない。
他人のステータスを見ることができるのは教会にいる神官だけらしい。
ギルドの前に教会に行くということで今日の予定が決まった。
昨日カイから渡された服に着替えてエディにもオッケーをもらったら部屋を出る。
部屋を出たと同時にどどどどどと何かが近づいて来る音が聞こえた。
なんだろう、とエディの方を向こうとしたがその原因により阻まれる。
「ケイー!」
「っ!?」
どーんっと効果音が聞こえて来そうな勢いで後ろから衝撃を受けた。
声からして人物は特定できた。
それにしたって抱きついてくるとは、まるで…いや、なんでもない。
「シモンさん、おはようございます」
「おはようございます!ケイ!今日も副団長と一緒なんですね!」
ぱっと身体を離しケイの前に回り込む。
にっこにこの笑顔で感情がだだ漏れだ。
…うん、やっぱりアレだ。
「エディさんがお休みなので俺に付き合ってくれるそうです」
「そうよ。今日1日ケイはアタシのものなの。シモンはさっさとどっか行きなさい!」
「えっ!俺もケイと一緒がいいです副団長~!」
「あんたは仕事でしょ!今日は有給休暇も受け入れないわよ!アタシ権限でね!!」
「ええ!ひどいです副団長!ケイ、ケイも副団長にお願いしてくださいよ~!…ケイ?」
下を向き肩を震わせているケイ。
そんなケイに気づき慌て始めるシモンとエディ。
「ケイ、どうしたの?具合悪くなった?」
「ケイ、大丈夫ですか?」
2人揃って心配をしてくれる。
うん、2人ともいい人だ。
いい人なんだけど…とシモンを見る。
「っ、ふふ……」
「ケイ?」
「すみません…シモンさん、っ、犬みたい…っ」
そう言いながらも笑いが止まらない。
だって本当に犬みたいなんだ。
思わず笑みが溢れる。
「そっ、えっ、う…」
「あら…」
何か言いたいけど言えないシモンと驚いたようなエディ。
ふぅ、とひとつ息を吐き落ち着く。
「よかった。ちゃんと笑えるのね」
「ケイ…犬みたいってひどいです…いやでもケイが笑ってくれたのは嬉しい…」
「すみません、シモンさん。俺、犬好きなので思わず…」
「そっ、ケイが好きならいいです!へへ…」
「ケイは動物が好きなの?それとも犬だけ?」
「動物ですね。動物は基本的に好きです」
「ふぅん。ふふ、そう」
そしてまたエディとシモンによる言い合いが始まるのだった。
眩しさを感じて目を開ける。
ベッド…だけど自分のじゃない。
昨日エディと会ったところまでは覚えている。
この世界に来てから気絶でしか眠れていない。
2日連続で気絶睡眠。
もはや睡眠と言っていいのかも疑問だが。
ゆっくりと辺りを観察する。
広い部屋だ。
きちんと整理されていて花まで飾られている。
周りを見渡してぎょっとした。
「エディさん…?」
なんでソファで眠ってるんだろう。
…まさかここエディさんの部屋?
そう考えればしっくりくる。
気絶した自分を運んでここに寝かせた。
そして寝る場所がなくなったのでソファへ。
状況を理解したと同時に申し訳なさが募る。
もしかしたら昨日のアレはエディの知るところではなかったのかもしれない。
偶然だったかもしれないのに勝手に決めつけてしまった。
その上ベッドまで占領してしまった。
「エディさん」
そっとエディを揺らす。
「んん…?」
眉間に皺を寄せながら薄っすらと目を開ける。
もしかして朝が苦手なんだろうか。
少しの間ぼやっとしていたエディだったがはっと目を開く。
「ケイ、具合はどう?気分は?」
がしっと肩を掴み眉を下げて言う。
その顔には心配だと大々的に書いてあるようだった。
そんな様子に少し心が温まる。
「大丈夫です。ベッド占領してすみませんでした。あと、おはようございます、エディさん」
「あ、ええ、おはよう。具合が悪くなったらすぐに言うのよ?」
「はい」
何事もなかったかのようなケイの態度にほっと息をつく。
とりあえずはこれでいいのだ。
エディはケイの肩を掴んでいた手を離す。
「ケイ、今日アタシ非番なの」
「お休みなんですね」
「だから一緒にギルドカードを作りに行きましょう?」
「身分証の代わりですよね。わかりました。お願いします」
せっかくの休みなのに申し訳ない…とも思うが身分証は必須なのでありがたく受け入れる。
その返事にエディはうんうんと頷くとそういえば、と思い出したように言った。
「ケイ、ステータスは知ってるわよね?」
「すてーたす?えっと…」
ステータス。
確か兄さんがゲームをしている時にそんな単語を言っていたような?
ステ振りに気をつけろとか。
ステ振りってなに?と聞けばステータス振り分けのことだと言っていた。
ええと?それでステータスっていうのは能力値みたいなものだっけ?
「ううん…?」
駄目だ…全然わからない…
ステータスってなんだ。
「ケイ?…わからないならいいのよ?なんでもアタシに聞きなさいって言ったでしょう?」
「エディさん…はい。あの、ステータスってなんですか?」
その質問にエディは満足したように頷いた。
ステータスとはいわゆる個人情報の塊だった。
名前、性別、年齢、体力、魔力、保持スキル、加護、称号等がわかるらしい。
らしい、というのも自分で見ることができなかったからだ。
基本的には自分のみが見れるらしいのでこればっかりはどうしようもない。
他人のステータスを見ることができるのは教会にいる神官だけらしい。
ギルドの前に教会に行くということで今日の予定が決まった。
昨日カイから渡された服に着替えてエディにもオッケーをもらったら部屋を出る。
部屋を出たと同時にどどどどどと何かが近づいて来る音が聞こえた。
なんだろう、とエディの方を向こうとしたがその原因により阻まれる。
「ケイー!」
「っ!?」
どーんっと効果音が聞こえて来そうな勢いで後ろから衝撃を受けた。
声からして人物は特定できた。
それにしたって抱きついてくるとは、まるで…いや、なんでもない。
「シモンさん、おはようございます」
「おはようございます!ケイ!今日も副団長と一緒なんですね!」
ぱっと身体を離しケイの前に回り込む。
にっこにこの笑顔で感情がだだ漏れだ。
…うん、やっぱりアレだ。
「エディさんがお休みなので俺に付き合ってくれるそうです」
「そうよ。今日1日ケイはアタシのものなの。シモンはさっさとどっか行きなさい!」
「えっ!俺もケイと一緒がいいです副団長~!」
「あんたは仕事でしょ!今日は有給休暇も受け入れないわよ!アタシ権限でね!!」
「ええ!ひどいです副団長!ケイ、ケイも副団長にお願いしてくださいよ~!…ケイ?」
下を向き肩を震わせているケイ。
そんなケイに気づき慌て始めるシモンとエディ。
「ケイ、どうしたの?具合悪くなった?」
「ケイ、大丈夫ですか?」
2人揃って心配をしてくれる。
うん、2人ともいい人だ。
いい人なんだけど…とシモンを見る。
「っ、ふふ……」
「ケイ?」
「すみません…シモンさん、っ、犬みたい…っ」
そう言いながらも笑いが止まらない。
だって本当に犬みたいなんだ。
思わず笑みが溢れる。
「そっ、えっ、う…」
「あら…」
何か言いたいけど言えないシモンと驚いたようなエディ。
ふぅ、とひとつ息を吐き落ち着く。
「よかった。ちゃんと笑えるのね」
「ケイ…犬みたいってひどいです…いやでもケイが笑ってくれたのは嬉しい…」
「すみません、シモンさん。俺、犬好きなので思わず…」
「そっ、ケイが好きならいいです!へへ…」
「ケイは動物が好きなの?それとも犬だけ?」
「動物ですね。動物は基本的に好きです」
「ふぅん。ふふ、そう」
そしてまたエディとシモンによる言い合いが始まるのだった。
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