東京人、大阪へ行く。

星野 万太郎

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大阪への転勤

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大阪という場所は怖い場所だった。


私は社会人5年目になる時、会社から転勤を命じられた。
その時の勤務地は主に東京で関東に取引先があるという状態。

東京23区で生まれ、高校・大学も東京。最初の配属も東京。
旅行でも関東外に行ったのは片手どころか3回くらい。
一人暮らしをする理由もなく、20代半ばまで実家暮らし。

これほどまでに江戸っ子という男はいるのかというくらいの生粋の東京人だったのだ。


そんな私が会社から突然の転勤命令。
転勤が頻繁に起こる会社なので気持ちの準備はしていたが、
「ついにきたか」という感じ。


行先は「 大 阪 」 


一瞬頭が真っ白になり、「OOSAKA?」「オオサカ?」??

私のようなごりごりの東京弁野郎が向こうで受け入れてもらえるのか???
そんな不安ばかりが押し寄せる中、
それでも嫌ですなんて言うことはできず、
命じられた2週間後には物件探しに行くことに。


事前に大阪で勤務したことがある人たちに聞いたところ
候補はどうやら
「タイショウ」「タニロク」「アワジ」「タマツクリ」「エサカ」
という聞きなれないワードばかり。


「ミドウスジセン?」「ナガホリセン?ツルミセン?え?ナガホリツルミリョクチセン?ながッ!」
なんてことを思いながら説明を聞いていた。


そんなよくわからない状態で気づいたら新幹線に乗った。
新大阪駅に到着。そのまま乗り換え案内に指示されるままに会社近くの四ツ橋にある不動産屋に到着。


「いらっしゃいませ!」
ややロン毛で体格の良いの担当営業が大きな声で挨拶してくる。

雑談もそこそこに条件と予算を伝える。

いくつか候補を出してもらった。

第一候補は会社からも近い谷町六丁目の物件。
タニマチロクチョウメ…ああ、これがタニロクか。

どうやら大阪はJRよりも地下鉄が幅を利かせているらしく、
特に大阪メトロ御堂筋線という電車が大阪の大動脈と言われているらしい。


停車駅も難波、心斎橋、梅田、新大阪等々…。
私でも聞いたことがある駅名ばかり。
さらにはその線路。大阪の中心部を見事に縦断している。たしかに大動脈と呼ぶにふさわしい。




話を不動産屋に戻そう。


チャラめの不動産屋の営業車に乗せられ、いくつか物件をまわった。
その中で言われたのは

・御堂筋線は混む。とにかく混む。でも東京のJRに比べればそこまででもない。
・淡路駅は下町。そういうのが大丈夫な人であれば良いが、ややハードルは高いかも。
・大阪は南北で治安が大きく異なる。北に行けば行くほど落ち着いた街になる。

こんなことだった。


不動産屋とルームミラー越しで視線を合わせながら必死に会話をつなぎ、
とりあえずの物件は見た。納得というわけではないが、
まあ妥協点というところでタニロクところに決めるかどうかというところで、
最後に「御堂筋線江坂駅」という物件が目に入った。

会社からはドアツードアで45分ほど。正直もっと近くにするために候補から外していたのだが、
時間も余っているということでとりあえず見てみることにした。

結果的にこの判断がこの後の大阪人生をより良いものにした。


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