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28. 川遊びとバーベキュー(前編)
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いろいろあった終業式が終わり夏休みだ。
といっても夏休み入ってすぐに予定が入っている。
[川遊びとBBQするので参加者求む]
先生の自作のプリントだ。
頑張って手書きの絵も描いてある。
楽しそうな企画なのに参加者は多くなかった。
「面倒だ」とか「夏休みにまで先生と一緒とか嫌」とか言ってたな。
結局乗り気だったのは俺たちと佐々木さんのグループと他数名だけ。
それでも先生達は喜んでくれて、
夏休み入ってすぐに実施することになった。
そして今日がその日だ。
着替えと小物を持って準備完了。
費用は無料なので小銭程度あれば十分だ。
移動もバーベキューの準備も全て先生達がやってくれる。
(改めて考えるとこれってかなりすごいことだよな)
あのころは何も感じてなかったけど、
社会人の経験と照らし合わせるとあり得ない企画だ。
食事代やバスのレンタル代など費用はかかるし、
何らかの事故があれば全て責任は先生が取ることになる。
正直先生達の負担が大きすぎると思う。
そろそろ出発しないと間に合わないか。
集合場所は学校なので特に苦労しない。
到着するとみんなもう揃っていた。
主なメンバーはカラオケの時と同じだ。
西野がいなかったり丸井の彼女(真鍋さん)とか参加してたりするのが違うかな。
見渡してみてもみんな私服なので新鮮だ。
佐々木さんはブラウスにズボンと動きやすい服装で、
ズボンによって足の細さと長さが強調されている。
(露出は少ないのに人の目は惹きつけるってすごい)
みんな佐々木さんに釘付けだけど俺は真紀に釘付けだった。
隣りにいる真紀は白いワンピースで麦わら帽子を被っている。
この格好は俺の好みのど真ん中。
特に麦わら帽子は珍しい。
ちなみに麦わらでワンピースというと漫画の方を思い出すけど、
この時代にはまだ連載が始まっていない。
なので漫画の影響という訳ではないと思う。
真紀に見とれているとこちらに気づいたようで駆け寄ってきた。
帽子を抑えながら小走りで来るのがとても良い。
「哲也くんは格好決まってるね」
真紀が褒めてくれたけどこれはほとんど丸井のおかげ。
「島村さんが来るんだからきっちりした格好していけよ」と言って、
服屋に連れていかれて買い揃えられた。
「真紀の服も似合ってるね」
「ありがとう♪」
俺が褒めると花のような笑顔でお礼を言ってくれた。
ただその笑顔が初めて告白した相手の笑顔と重なる。
(本当に喜んでくれたのだろうか?)
やり直し前に初めて告白した相手のことを思い出す。
当時は彼女の気を引きたくて、
いろいろ褒めたり積極的に話しかけたりしていた。
彼女もその場では喜んでいるように見えた。
けど実態は違っていた。
「馴れ馴れしく話しかけてきたり変に褒めたりするのがちょっとキモチワルイ」
と友達に話していたと人づてに聞いた。
(真紀もそうなんじゃないか?)
どうしても不安が拭えなかった。
「順番に入れよー」
「はーい」
とりあえずバスの準備が出来たようなので移動しよう。
最初は女子が入る。
まあ別にレディーファーストとかではなく、
単に佐々木さんが仕切っていただけなんだけど。
「はい、哲也くんはこっちね」
「え? なんで真紀の隣に?」
バスに乗り込むと佐々木さんに席を指定される。
みんな男子と女子で別れて座っているのに、
なぜか俺だけ真紀の隣に案内された。
「一緒にカラオケ歌う仲でしょ?」
「邪魔しちゃ悪い」
「そうだよな」
「そこは仕方ない」
みんな口々に言う。まるで恋人扱いだ。
(俺は嬉しいけど真紀が嫌なんじゃないかな?)
「よ、よろしくお願いします」
「よろしくね、哲也くん♪」
怒っているかと思ったけど、
ご機嫌な様子なのでよかった。
(もしかして本当に嬉しいとか?)
いや、そんな夢みたいなこと考えちゃ駄目だ。
俺みたいな男が何もしていないのにモテるわけがない。
・・・
「気持ち悪い……」
忘れてた、やり直し前も車酔いしたんだった。
ただ今回は状況的にもっとまずい。
「大丈夫?」
隣が男子ではなく真紀だ。
こんなみっともない所を見せたくない。
「なんとか大丈夫」
そう答えたもののあまり状況は良くない。
がたがたと揺れるし左右に振られるからかなりつらい。
下手すると突然吐くかもしれない。
(そうだ、もし吐いたら……)
なんの準備もしていないこの状況では大惨事だ。
この前もこういうケースで迷惑をかけた。
自分のプライドを優先させては駄目だ。
「ごめん、やっぱりつらい」
「いいよ、無理しないで」
真紀が袋を渡してくれて背中をさすってくれる。
人の手の温かさで少し気が楽になる。
(本当に優しいよな、彼氏が羨ましい)
美人で性格が良いなんて最高だ。
元彼もそんなに悪い人間じゃなかったし……あっ。
あの件のお詫びがまだ出来ていなかった。
それなのにさらに迷惑をかけてしまった……。
「ゆっくり深呼吸してね、外見てたほうがいいよ」
「うん……」
お礼を言いたいけど酔いがひどくてそれ所じゃない。
背中をさすってもらって遠くを見て新鮮な空気を吸って、
ようやくギリギリのラインで吐かずにすんだ。
真紀がいなければとっくに限界を超えていたに違いない。
「頑張ったね、到着したよ」
「ありがとう」
ちょっとフラフラしてる。
といってもバスは止まったからもう降りるだけだ。
「ふー」
外に出ると一気に楽になる。
(山の中なので空気も綺麗な気がするな)
緑は心が落ち着くというけど本当にそう感じる。
「はい、お茶」
「ありがとう」
真紀がお茶を渡してくれた。
バスの中では吐きそうになるので水分取れなかったからありがたい。
あえてほどほどの冷たさにしてくれたみたいなので一気に飲み干す。
「酔い止め飲まないと駄目だよ」
「ごめん、すっかり忘れてた」
といっても持ってないのはどうしようもない。
ちょっとコンビニに、と言える時代じゃないのがつらい。
帰りは寝て凌ぐしかないか。
「もうみんな着替えに行ったみたい」
みんな近くのプールで着替えてるので俺達も行く。
着替え終わって戻ってくるとみんな川で遊んでいた。
先生達はパラソルと椅子を設置してくつろいでる。
(このころは全然警戒してないんだな)
川での水難事故が大きく取り沙汰されるのはもう少し後の時代だ。
ただそれは水難事故がなかったのではなく、
報道されなかっただけだと思う。
ここもたしか川の流れが二段になっていて、
遊んでいる時に一度足を取られてこけそうになったんだよな。
下手すればあのまま流されていた。
やり直し前に何もなかったとはいえ警戒は必要だと思う。
一応何かあった時のために少し下流で待機しておくか。
・・・
平和だなぁ。
川の水は程よく冷たいのでふとももから足元は気持ちいい。
ただそれより上は水に浸かっていないので暑い。
「哲也、何してんだ?」
「佐々木さん達を眺めてる」
「ああ、なるほど、不審者か」
「眺めてるだけなら紳士だろ!?」
「水着姿で遠巻きに女子を眺めてるとか変態だろ?」
返す言葉もない。
まあ何かあった時のために待機してるなんて言うと気になるだろうし、
甘んじて変態のそしりを受けよう。
「あっ」
ボールが逸れて佐々木さんがキャッチし損ねた。
ボールはそのまま川の流れに乗って流される。
(まあこういう時のために下流にいるんだけど)
そう思っていたら、
佐々木さんがボールを取るために、
こちらに向かって泳いできた。
しかもサンダルを脱ぎ捨ててる。
(まずいかもしれない)
下流に向かって泳ぐのは、
思っているよりかなり危険だ。
上半身だけで停止するのは難しいし、
足を着いて停止する場合も川底の状態次第でけがをする。
(一応警戒しておこう)
佐々木さんは普通にボールを確保して停止した。
「あれ? 哲也くんどうしたの?」
「むしろ佐々木さんがこっちに来たんだよ」
「あ、ほんとだね」
そう言って女子たちの元に戻っていった。
(よかった、何事もなかった)
まあ警戒しすぎなだけか。
・・・
その後特に問題は起きずお昼になった。
といっても夏休み入ってすぐに予定が入っている。
[川遊びとBBQするので参加者求む]
先生の自作のプリントだ。
頑張って手書きの絵も描いてある。
楽しそうな企画なのに参加者は多くなかった。
「面倒だ」とか「夏休みにまで先生と一緒とか嫌」とか言ってたな。
結局乗り気だったのは俺たちと佐々木さんのグループと他数名だけ。
それでも先生達は喜んでくれて、
夏休み入ってすぐに実施することになった。
そして今日がその日だ。
着替えと小物を持って準備完了。
費用は無料なので小銭程度あれば十分だ。
移動もバーベキューの準備も全て先生達がやってくれる。
(改めて考えるとこれってかなりすごいことだよな)
あのころは何も感じてなかったけど、
社会人の経験と照らし合わせるとあり得ない企画だ。
食事代やバスのレンタル代など費用はかかるし、
何らかの事故があれば全て責任は先生が取ることになる。
正直先生達の負担が大きすぎると思う。
そろそろ出発しないと間に合わないか。
集合場所は学校なので特に苦労しない。
到着するとみんなもう揃っていた。
主なメンバーはカラオケの時と同じだ。
西野がいなかったり丸井の彼女(真鍋さん)とか参加してたりするのが違うかな。
見渡してみてもみんな私服なので新鮮だ。
佐々木さんはブラウスにズボンと動きやすい服装で、
ズボンによって足の細さと長さが強調されている。
(露出は少ないのに人の目は惹きつけるってすごい)
みんな佐々木さんに釘付けだけど俺は真紀に釘付けだった。
隣りにいる真紀は白いワンピースで麦わら帽子を被っている。
この格好は俺の好みのど真ん中。
特に麦わら帽子は珍しい。
ちなみに麦わらでワンピースというと漫画の方を思い出すけど、
この時代にはまだ連載が始まっていない。
なので漫画の影響という訳ではないと思う。
真紀に見とれているとこちらに気づいたようで駆け寄ってきた。
帽子を抑えながら小走りで来るのがとても良い。
「哲也くんは格好決まってるね」
真紀が褒めてくれたけどこれはほとんど丸井のおかげ。
「島村さんが来るんだからきっちりした格好していけよ」と言って、
服屋に連れていかれて買い揃えられた。
「真紀の服も似合ってるね」
「ありがとう♪」
俺が褒めると花のような笑顔でお礼を言ってくれた。
ただその笑顔が初めて告白した相手の笑顔と重なる。
(本当に喜んでくれたのだろうか?)
やり直し前に初めて告白した相手のことを思い出す。
当時は彼女の気を引きたくて、
いろいろ褒めたり積極的に話しかけたりしていた。
彼女もその場では喜んでいるように見えた。
けど実態は違っていた。
「馴れ馴れしく話しかけてきたり変に褒めたりするのがちょっとキモチワルイ」
と友達に話していたと人づてに聞いた。
(真紀もそうなんじゃないか?)
どうしても不安が拭えなかった。
「順番に入れよー」
「はーい」
とりあえずバスの準備が出来たようなので移動しよう。
最初は女子が入る。
まあ別にレディーファーストとかではなく、
単に佐々木さんが仕切っていただけなんだけど。
「はい、哲也くんはこっちね」
「え? なんで真紀の隣に?」
バスに乗り込むと佐々木さんに席を指定される。
みんな男子と女子で別れて座っているのに、
なぜか俺だけ真紀の隣に案内された。
「一緒にカラオケ歌う仲でしょ?」
「邪魔しちゃ悪い」
「そうだよな」
「そこは仕方ない」
みんな口々に言う。まるで恋人扱いだ。
(俺は嬉しいけど真紀が嫌なんじゃないかな?)
「よ、よろしくお願いします」
「よろしくね、哲也くん♪」
怒っているかと思ったけど、
ご機嫌な様子なのでよかった。
(もしかして本当に嬉しいとか?)
いや、そんな夢みたいなこと考えちゃ駄目だ。
俺みたいな男が何もしていないのにモテるわけがない。
・・・
「気持ち悪い……」
忘れてた、やり直し前も車酔いしたんだった。
ただ今回は状況的にもっとまずい。
「大丈夫?」
隣が男子ではなく真紀だ。
こんなみっともない所を見せたくない。
「なんとか大丈夫」
そう答えたもののあまり状況は良くない。
がたがたと揺れるし左右に振られるからかなりつらい。
下手すると突然吐くかもしれない。
(そうだ、もし吐いたら……)
なんの準備もしていないこの状況では大惨事だ。
この前もこういうケースで迷惑をかけた。
自分のプライドを優先させては駄目だ。
「ごめん、やっぱりつらい」
「いいよ、無理しないで」
真紀が袋を渡してくれて背中をさすってくれる。
人の手の温かさで少し気が楽になる。
(本当に優しいよな、彼氏が羨ましい)
美人で性格が良いなんて最高だ。
元彼もそんなに悪い人間じゃなかったし……あっ。
あの件のお詫びがまだ出来ていなかった。
それなのにさらに迷惑をかけてしまった……。
「ゆっくり深呼吸してね、外見てたほうがいいよ」
「うん……」
お礼を言いたいけど酔いがひどくてそれ所じゃない。
背中をさすってもらって遠くを見て新鮮な空気を吸って、
ようやくギリギリのラインで吐かずにすんだ。
真紀がいなければとっくに限界を超えていたに違いない。
「頑張ったね、到着したよ」
「ありがとう」
ちょっとフラフラしてる。
といってもバスは止まったからもう降りるだけだ。
「ふー」
外に出ると一気に楽になる。
(山の中なので空気も綺麗な気がするな)
緑は心が落ち着くというけど本当にそう感じる。
「はい、お茶」
「ありがとう」
真紀がお茶を渡してくれた。
バスの中では吐きそうになるので水分取れなかったからありがたい。
あえてほどほどの冷たさにしてくれたみたいなので一気に飲み干す。
「酔い止め飲まないと駄目だよ」
「ごめん、すっかり忘れてた」
といっても持ってないのはどうしようもない。
ちょっとコンビニに、と言える時代じゃないのがつらい。
帰りは寝て凌ぐしかないか。
「もうみんな着替えに行ったみたい」
みんな近くのプールで着替えてるので俺達も行く。
着替え終わって戻ってくるとみんな川で遊んでいた。
先生達はパラソルと椅子を設置してくつろいでる。
(このころは全然警戒してないんだな)
川での水難事故が大きく取り沙汰されるのはもう少し後の時代だ。
ただそれは水難事故がなかったのではなく、
報道されなかっただけだと思う。
ここもたしか川の流れが二段になっていて、
遊んでいる時に一度足を取られてこけそうになったんだよな。
下手すればあのまま流されていた。
やり直し前に何もなかったとはいえ警戒は必要だと思う。
一応何かあった時のために少し下流で待機しておくか。
・・・
平和だなぁ。
川の水は程よく冷たいのでふとももから足元は気持ちいい。
ただそれより上は水に浸かっていないので暑い。
「哲也、何してんだ?」
「佐々木さん達を眺めてる」
「ああ、なるほど、不審者か」
「眺めてるだけなら紳士だろ!?」
「水着姿で遠巻きに女子を眺めてるとか変態だろ?」
返す言葉もない。
まあ何かあった時のために待機してるなんて言うと気になるだろうし、
甘んじて変態のそしりを受けよう。
「あっ」
ボールが逸れて佐々木さんがキャッチし損ねた。
ボールはそのまま川の流れに乗って流される。
(まあこういう時のために下流にいるんだけど)
そう思っていたら、
佐々木さんがボールを取るために、
こちらに向かって泳いできた。
しかもサンダルを脱ぎ捨ててる。
(まずいかもしれない)
下流に向かって泳ぐのは、
思っているよりかなり危険だ。
上半身だけで停止するのは難しいし、
足を着いて停止する場合も川底の状態次第でけがをする。
(一応警戒しておこう)
佐々木さんは普通にボールを確保して停止した。
「あれ? 哲也くんどうしたの?」
「むしろ佐々木さんがこっちに来たんだよ」
「あ、ほんとだね」
そう言って女子たちの元に戻っていった。
(よかった、何事もなかった)
まあ警戒しすぎなだけか。
・・・
その後特に問題は起きずお昼になった。
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