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第二章 冒険者

その九 ルルティアの悩み

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――あの日、師匠テイルに勝ってしまったその日に、ボクはテイルの弟子ではなくなった。

 強くなれば、認めてもらえると思ったのに。

 子供扱いされなくなると思ったのに。
 
 ボクはテイルに勝てたことが嬉しかった。

 これでテイルと一緒に戦える。そう思ったから。

 けれど、ボクが勝った時、テイルの目には喜びは写っていなかった。

 その目に、ボクは一瞬怯えてしまった。もしかしたらボクは失敗したんじゃないか。卑怯な方法を使ってしまったんじゃないか。そしてテイルはそれを怒っているんじゃないか。そう思ったから。

 だけどテイルは怒ることも、注意することもなかった。
 その後にテイルが浮かべた笑顔は、どこか悲しそうな、虚しさを隠した笑顔だった。
 
――ああ、そっか。テイルはずっとレベルを上げたがってた。
――けれど、テイルは既に40歳を超え、100レベルに到達することは難しい。

 テイルがレベル99になったのは4年前。
 ボクがテイルの弟子になってから一年が経った頃だった。

 テイルは今まで必死に修行をしてきたって言ってた。
 自分には才能がない、ともよく言ってたんだ。


 それなのに、ボクは5年でレベル99まで上がったんだ。
 
――なんでボクはテイルと同じじゃないんだろう。
――テイルと同じだったら、ずっと一緒にいられたかもしれないのに。




 弟子を辞めてしばらく経った頃、テイルと一緒に住んでいた小屋・・・というと怒られるから家、に行った。
 けれど、そこにはいつもの様に修行に励むテイルの姿はなかった。

 
 きっと、テイルは修行の為に家を出たんだ。
 それなら、もしかしたら帰ってきたテイルはボクより強くなっているかもしれない。



 ・・・それなら良いのに。
 だけど、もしかしたらテイルは無茶をして怪我を負って、戦えないようになってるかもしれない。
 それなら・・・・・・ボクは、テイルを守れる力が欲しい。




◇◇◇◇


「はぁ……」

 ボクは今、憂鬱な気分だ。
 外に出て走り回りたい。
 修行もしたいのに。

 立場がそれを許さない。

 出来るのは訓練場での鍛錬だけ。
 それも、たまにだけだ。


 テイルと一緒に魔獣を狩っていたころが懐かしいよ・・・

 何でこんなことになっちゃったんだろう・・・


「あら、ルルティア様、如何しました?」
「ああ、ごめん、何でもないよ……」
「何でもないというお顔をしてませんよ」

 うう・・・勉強なんか嫌いだ・・・
 一年ほど前、ボクは王城に連れ戻された。
 

 母様にこっぴどく叱られたのは嫌な思い出。
 5年・・・長いようで短かったなぁ。テイルとの生活は・・・
 いや、修行に出てた期間も入れれば3年か。
 テイル、今何してるんだろう・・・
 
 奥さんとか出来てたりして・・・
 うぅ・・・嫌だなぁ・・・

「ルルティア様?聞いていますか?」
「……聞いてるよ」
「聞いていませんでしたね」

「…リーナは彼氏とか作らないのー?」
「なっ、何を……ハッ!ルルティア様!話を変えようとしないでください!!」
「ちぇー」

 リーナはボクに勉強を教えてばかりだから恋人も出来ないんじゃないの?
 

 テイルに会いたい・・・
 また抜け出そうかなぁ・・・
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