上 下
33 / 33
三章 陰謀のトライアド王国編

パルシュ神父

しおりを挟む
「あなたは、パルシュ神父!」

私の目の前には、あの時絶望へと誘ってしまったパルシュ神父がいました。
しかし気の良い青年であった神父からは、言い知れぬ魔族の気配が漂っています。

「やはり、君で間違いなさそうですね。」

「パルシュ神父!生きていたのですね!あの時の事はずっとあやまりたいと……」

神父は手のひらをこちらに向けて私の話をさえぎると、そんな事はどうでもいいという風に話だしました。

「聖女オーリン、あの後色々調べましたよ。別に貴方が悪かったわけではない、むしろ中途半端だった私が完全に魔族へと覚醒できたのですから感謝したいくらいですよ。」

「あなたは本当は人として正しく生きていけていたはずなのです……あんな事がなければ!」

「君達人間はまるで自分達が正しく生きているのだと思い込んでいる、正しく生きていこうとしている者もいるだろうさ、だがそれ以上に負にまみれている者が多いのが人間と言うものだ。我々魔族とてそう、基準が違うだけの存在だ。種族に善も悪もない、正も負もない、では何が大事か……それは自分の意見を押し通せるだけの力だ。」

「そういう面があることは否定しません、ですが魔族の基準で語られてしまうと人間は生きていけないのです。」

「君も自分の意見を通す事ができなかったから神殿から出られなかったのだろう?君に力があれば自由にできたはずだ。自分に力がないのだとしたら、力あるものを味方にして自由になるべきなのだ。」

「……自分が力ないものになった時に同じ事が言えるとは思えません。」

私達は一体何を話しているのでしょうか、私は彼にあやまりたかっただけなのに、何故問答のような事をしているのでしょうか。パルシュ神父もそう思ったのか、話題を変えてきました。

「とにかく、私への謝罪など不要です。それよりも、私に協力してはくれませんか?」

「アルノを攫っておいて協力して欲しいとはおかしいと思いませんか?」

「魔族という立場では正面からお願いをしにいっても無駄でしょう。人間からすると悪なのでしょうから。それに協力して欲しいとはいいましたが、アルノ君にとっても良い話のはずです。」

「どういう事ですか?」

「此方が調べたところによると……彼の中のダンテリオという獣人は勇者によって封印がかけられているそうですね?」

私がアルノの中で目覚めてからは、アルノの記憶が共有されているのでダンテリオの事も知っています。確かに幼い頃にスキルを封印されてスキルレスとして生きていました。

「その封印をといてさしあげようというのです。」

「……なんの為に?」

「本来ダンテリオと言う獣人が覚えるはずだったスキルに興味があるのです。」

「勇者が何か理由があって封印したスキルなのでしょうから、とく必要はないと私は思いますが?」

「オーリン。君はそういうかもしれないけれど、ダンテリオはなんていうだろうね?幼い頃にスキルを封印されてしまい、その生涯を終えるまでスキルレスとさげすまれた獣人……」

その時扉からデクルズが入ってきました、パルシュ神父と私を見ると怪訝そうな顔をして話し出しました。

「神父、アルノという人間はどうした、逃がしたのではあるまいな?」

「丁度いいところに来ましたデクルズ、例の能力でアルノが彼女になっているのです。彼女の両手を押さえていてくれませんか?」

デクルズは私の両手を左右に広げた形で押さえつけました。デクルズは確か魔公爵といわれる幹部クラスの魔族のはずですが、パルシェ神父をまるで同格のように扱っています、彼も幹部と言う事なのでしょうか……

「オーリン、懐かしき聖女よ。しかし今は貴方は必要としていません。ダンテリオに代ってもらいますよ。」

パルシェ神父は右手を私の頭にかざし、何かスキルを使い出しました。昔の彼にはこんなスキルはなかったはずです、魔族に覚醒した影響なのでしょうか……私の力が弱まり別の人格が引きずりだされていきます……

「パルシェ神父……魔族でもいいのです、正しき道を……」

「オーリン。もう遅いのです……」

意識が途切れる瞬間に見た神父はどこか悲しそうな顔をしていました。



ステータス
名前 オーリン・リュカーオ
種族 人間
職業 聖女
ユニークスキル 『神眼Lv7』
スキル     『神聖魔法Lv8』
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

いちごチョコ

面白くて一気に読んでしまいました♪
アルノの元々の性格というか狩人志望というのもあるのでしょうが
物事に対して慎重で冷静なのがいいですね(*・∀・*)
更新を楽しみにしています♪(ノ≧▽≦)ノ

魔法仕掛けのにゃんこ
2017.07.17 魔法仕掛けのにゃんこ

ありがとうございます!

あんまり狩人っぽい事ができてないんですけど……最終的には狩人にしたいです!本人希望ですし。

解除
モリモ
2017.07.08 モリモ

面白かったです。
これからも頑張ってください。

魔法仕掛けのにゃんこ
2017.07.09 魔法仕掛けのにゃんこ

ありがとうございます!

読んでくださる方がいると思うだけで筆がすすみます!
また来てくださいね!

解除
憂鬱
2017.07.01 憂鬱

結構特殊な設定?なんですかね?
こういった作品を読むのは初めて
でしたが楽しく読めました
ありがとうございますm(_ _)m
これからも頑張ってください!

魔法仕掛けのにゃんこ
2017.07.01 魔法仕掛けのにゃんこ

感想ありがとうございます!
初めての感想でとてもテンションが上がっています!
最終的に上手くまとまるように頑張りますので
また読みに来てくださいね。

解除

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。