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三章 陰謀のトライアド王国編
パルシュ神父
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「あなたは、パルシュ神父!」
私の目の前には、あの時絶望へと誘ってしまったパルシュ神父がいました。
しかし気の良い青年であった神父からは、言い知れぬ魔族の気配が漂っています。
「やはり、君で間違いなさそうですね。」
「パルシュ神父!生きていたのですね!あの時の事はずっとあやまりたいと……」
神父は手のひらをこちらに向けて私の話をさえぎると、そんな事はどうでもいいという風に話だしました。
「聖女オーリン、あの後色々調べましたよ。別に貴方が悪かったわけではない、むしろ中途半端だった私が完全に魔族へと覚醒できたのですから感謝したいくらいですよ。」
「あなたは本当は人として正しく生きていけていたはずなのです……あんな事がなければ!」
「君達人間はまるで自分達が正しく生きているのだと思い込んでいる、正しく生きていこうとしている者もいるだろうさ、だがそれ以上に負にまみれている者が多いのが人間と言うものだ。我々魔族とてそう、基準が違うだけの存在だ。種族に善も悪もない、正も負もない、では何が大事か……それは自分の意見を押し通せるだけの力だ。」
「そういう面があることは否定しません、ですが魔族の基準で語られてしまうと人間は生きていけないのです。」
「君も自分の意見を通す事ができなかったから神殿から出られなかったのだろう?君に力があれば自由にできたはずだ。自分に力がないのだとしたら、力あるものを味方にして自由になるべきなのだ。」
「……自分が力ないものになった時に同じ事が言えるとは思えません。」
私達は一体何を話しているのでしょうか、私は彼にあやまりたかっただけなのに、何故問答のような事をしているのでしょうか。パルシュ神父もそう思ったのか、話題を変えてきました。
「とにかく、私への謝罪など不要です。それよりも、私に協力してはくれませんか?」
「アルノを攫っておいて協力して欲しいとはおかしいと思いませんか?」
「魔族という立場では正面からお願いをしにいっても無駄でしょう。人間からすると悪なのでしょうから。それに協力して欲しいとはいいましたが、アルノ君にとっても良い話のはずです。」
「どういう事ですか?」
「此方が調べたところによると……彼の中のダンテリオという獣人は勇者によって封印がかけられているそうですね?」
私がアルノの中で目覚めてからは、アルノの記憶が共有されているのでダンテリオの事も知っています。確かに幼い頃にスキルを封印されてスキルレスとして生きていました。
「その封印をといてさしあげようというのです。」
「……なんの為に?」
「本来ダンテリオと言う獣人が覚えるはずだったスキルに興味があるのです。」
「勇者が何か理由があって封印したスキルなのでしょうから、とく必要はないと私は思いますが?」
「オーリン。君はそういうかもしれないけれど、ダンテリオはなんていうだろうね?幼い頃にスキルを封印されてしまい、その生涯を終えるまでスキルレスとさげすまれた獣人……」
その時扉からデクルズが入ってきました、パルシュ神父と私を見ると怪訝そうな顔をして話し出しました。
「神父、アルノという人間はどうした、逃がしたのではあるまいな?」
「丁度いいところに来ましたデクルズ、例の能力でアルノが彼女になっているのです。彼女の両手を押さえていてくれませんか?」
デクルズは私の両手を左右に広げた形で押さえつけました。デクルズは確か魔公爵といわれる幹部クラスの魔族のはずですが、パルシェ神父をまるで同格のように扱っています、彼も幹部と言う事なのでしょうか……
「オーリン、懐かしき聖女よ。しかし今は貴方は必要としていません。ダンテリオに代ってもらいますよ。」
パルシェ神父は右手を私の頭にかざし、何かスキルを使い出しました。昔の彼にはこんなスキルはなかったはずです、魔族に覚醒した影響なのでしょうか……私の力が弱まり別の人格が引きずりだされていきます……
「パルシェ神父……魔族でもいいのです、正しき道を……」
「オーリン。もう遅いのです……」
意識が途切れる瞬間に見た神父はどこか悲しそうな顔をしていました。
ステータス
名前 オーリン・リュカーオ
種族 人間
職業 聖女
ユニークスキル 『神眼Lv7』
スキル 『神聖魔法Lv8』
私の目の前には、あの時絶望へと誘ってしまったパルシュ神父がいました。
しかし気の良い青年であった神父からは、言い知れぬ魔族の気配が漂っています。
「やはり、君で間違いなさそうですね。」
「パルシュ神父!生きていたのですね!あの時の事はずっとあやまりたいと……」
神父は手のひらをこちらに向けて私の話をさえぎると、そんな事はどうでもいいという風に話だしました。
「聖女オーリン、あの後色々調べましたよ。別に貴方が悪かったわけではない、むしろ中途半端だった私が完全に魔族へと覚醒できたのですから感謝したいくらいですよ。」
「あなたは本当は人として正しく生きていけていたはずなのです……あんな事がなければ!」
「君達人間はまるで自分達が正しく生きているのだと思い込んでいる、正しく生きていこうとしている者もいるだろうさ、だがそれ以上に負にまみれている者が多いのが人間と言うものだ。我々魔族とてそう、基準が違うだけの存在だ。種族に善も悪もない、正も負もない、では何が大事か……それは自分の意見を押し通せるだけの力だ。」
「そういう面があることは否定しません、ですが魔族の基準で語られてしまうと人間は生きていけないのです。」
「君も自分の意見を通す事ができなかったから神殿から出られなかったのだろう?君に力があれば自由にできたはずだ。自分に力がないのだとしたら、力あるものを味方にして自由になるべきなのだ。」
「……自分が力ないものになった時に同じ事が言えるとは思えません。」
私達は一体何を話しているのでしょうか、私は彼にあやまりたかっただけなのに、何故問答のような事をしているのでしょうか。パルシュ神父もそう思ったのか、話題を変えてきました。
「とにかく、私への謝罪など不要です。それよりも、私に協力してはくれませんか?」
「アルノを攫っておいて協力して欲しいとはおかしいと思いませんか?」
「魔族という立場では正面からお願いをしにいっても無駄でしょう。人間からすると悪なのでしょうから。それに協力して欲しいとはいいましたが、アルノ君にとっても良い話のはずです。」
「どういう事ですか?」
「此方が調べたところによると……彼の中のダンテリオという獣人は勇者によって封印がかけられているそうですね?」
私がアルノの中で目覚めてからは、アルノの記憶が共有されているのでダンテリオの事も知っています。確かに幼い頃にスキルを封印されてスキルレスとして生きていました。
「その封印をといてさしあげようというのです。」
「……なんの為に?」
「本来ダンテリオと言う獣人が覚えるはずだったスキルに興味があるのです。」
「勇者が何か理由があって封印したスキルなのでしょうから、とく必要はないと私は思いますが?」
「オーリン。君はそういうかもしれないけれど、ダンテリオはなんていうだろうね?幼い頃にスキルを封印されてしまい、その生涯を終えるまでスキルレスとさげすまれた獣人……」
その時扉からデクルズが入ってきました、パルシュ神父と私を見ると怪訝そうな顔をして話し出しました。
「神父、アルノという人間はどうした、逃がしたのではあるまいな?」
「丁度いいところに来ましたデクルズ、例の能力でアルノが彼女になっているのです。彼女の両手を押さえていてくれませんか?」
デクルズは私の両手を左右に広げた形で押さえつけました。デクルズは確か魔公爵といわれる幹部クラスの魔族のはずですが、パルシェ神父をまるで同格のように扱っています、彼も幹部と言う事なのでしょうか……
「オーリン、懐かしき聖女よ。しかし今は貴方は必要としていません。ダンテリオに代ってもらいますよ。」
パルシェ神父は右手を私の頭にかざし、何かスキルを使い出しました。昔の彼にはこんなスキルはなかったはずです、魔族に覚醒した影響なのでしょうか……私の力が弱まり別の人格が引きずりだされていきます……
「パルシェ神父……魔族でもいいのです、正しき道を……」
「オーリン。もう遅いのです……」
意識が途切れる瞬間に見た神父はどこか悲しそうな顔をしていました。
ステータス
名前 オーリン・リュカーオ
種族 人間
職業 聖女
ユニークスキル 『神眼Lv7』
スキル 『神聖魔法Lv8』
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面白かったです。
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ありがとうございます!
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ありがとうございますm(_ _)m
これからも頑張ってください!
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