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二章 王都バッシュテン編

王都散策と港町への出立

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オーファスさんのオススメの宿は確かに良かった。食事も美味しかったし宿泊料も程々……何よりなんとお風呂があったのだ!お風呂なんて貴族様の入るもので平民である僕らは入るものではないと思っていた、だけど王都は違うようで、平民でも比較的裕福な人達は家にお風呂があるらしく、宿でも浴場がある事が多いそうだ。

人生初のお風呂を堪能した僕が部屋に戻ってくつろいでいると、長湯してきたミリスが戻ってきた。

「王都って凄いのね……騎士団に入団できたら毎日お風呂入るわ!」

「確かにお風呂は良かったね。村では川で水浴びか体を拭くだけだったし、村に帰っても何とかお風呂を作ってみたいなぁ」

「アルノはやっぱり村に帰っちゃうの?」

「王様の判断次第だけど、自由に行動できるなら村に帰って狩人をやろうとは思ってるよ。」

「それは、そうよね。だけど……もしアルノが王都にいてくれたらちょっとは心強いかなって思ったりもするんだけど……王都の近くだって狩猟の出来るところはあるらしいし……」

「うーん、確かに村一番の狩人になるって言う目標はあるけど、どうせなら国一番の狩人を目指すって言うのも悪くない気がするね。どっちにしてもまだ決められないよ。」

「そうね、王様が残れって言ったら残らないといけないもんね!」

「うん、とりあえず明日の予定をたてておこう。」

明日は王都散策をしてみる予定だ。僕が見てみたいのは魔道具屋で、ミリスはアクセサリーの店に行ってみたいらしい。魔道具屋は見た目よりも沢山水が入る水筒とか、少量の魔力を流すと火がつく小型の炉とかを扱っている店だ。大体高級品なので買えはしないだろうけど、ぜひ見てみたい。ミリスは髪留めとかが好きで、村祭りで出店があると良く眺めていた。僕らは孤児院育ちだったから自由に使えるようなお金はなかったし、今までは我慢していたけれど、今は成人式も終わり狩猟ギルドや自警団で少しはお金を稼げるようになった。ミリスは今回は奮発して何か買うつもりなのだそうだ。

「後は馬車の予約をしておかなくちゃね、眠くなったしそろそろ寝ようか。」

「うん。おやすみアルノ、また明日ね……」



宿屋で朝食を終えた僕らは早速お店を見に行く事にした。村はお店は一軒ずつしかなかったけど、王都は何件もあって色々見比べたりするらしい。例の観光地図に乗っていたお店を目指して道を行くと、魔道具屋が何件も並んでいる通りに着いた。

平民や商人、冒険者と言われる人達や、騎士に貴族らしい風体の人など、往来には人が多く活気に満ちている。
お店は人が沢山いる店もあれば、なんだか閑散としている店もある。僕らはなんとなく人が少ない……と言うかまったくいない店に入ってみた。村育ちだから人が多いところは苦手なのかもしれない……

「はーい!いらっしゃーい!今日は何をお求めで?音の出ない笛?いくらでも水が入るけど取り出せない壷?火がつかない薪?色々あるよー!」

なんだかテンションの高い店員さんが早口でまくし立ててきた。見た目は若い女の子だが耳が長い、エルフかハーフエルフのようだ。年齢は見たままではないだろうな……あれ?売ってるものって意味ないものばかりじゃない?

「何よそれ!意味ないものばかりじゃない!」

ミリスが突っ込みを入れている、やっぱりそうだよね。

「いやいや、そんな事ないんですよぅ~。商品名はアレですけど、『音の出ない笛』は人には聞こえない嫌な音を出して魔物を追い払う効果があるし、「いくらでも水が入る壷」は…まぁいくらでもは言い過ぎなんだけどかなりの量の水を入れることができてその分重くなるんですよ。川の氾濫とかで土嚢の代わりに使ったりできるんですよー」

「じゃあ『燃えない薪』は?」

「これは木なんだけど火がつかないから、家建てるのに使ったりすると便利なんですよ!まぁ家全体をこれで作っちゃうとお金がかかりすぎちゃうんですけどね……普通の木材の三倍くらい」

「び、微妙なのね。」

そんな二人の話を横にお店を眺めてみる。全体的に暗いのは雰囲気作りなのだろうか、それにしては店員さんのテンションとあっていない気がする。魔道具はなんだか雑に並べられていて、どれも一見したらガラクタにしか見えない。そんな中に指輪が二つ絡まりあって一つになっているものがあった。何だろうこれ?

「あーそれは『知恵の指輪』だねー。パズルになっていて二つに分けられるんだ。」

「……それだけ?どこが魔道具なの?」

「えーっとちょっとまって。『鑑定』!」

店員さんの両目が赤くなり指輪を凝視している。『鑑定』のスキルか!物の値打ちや効果を知る事が出来るスキルで、これだけで一生食いっぱぐれる事はないと言うレアスキルだ。

「鑑定によるとー『知恵の指輪。パズルになっていて2つに分けられる。青いラインが入っているのが男の子用、赤いラインが入っているのが女の子用、サイズは補正されます。』ってなってるね……それだけだね!」

それだけなのかー。指輪を受け取ってはずれないかいじってみる。カチャカチャ…なんか面白い、でもいらないな。

『それは買った方がいいわ』

何か聞こえた!今のは初めてユーフィリス王女を呼び出した時の感じに似ている……『買ったほうがいいの?』心の中で念じてみたが答えはない、錯覚だったのだろうか。

「そんなにたいした魔道具じゃないし、安くおまけするよ!金貨1枚でどう?」

金貨1枚……特に効果があるわけでもないのに高い気もするけど、2つの指輪だと思えば1つ銀貨5枚か。悩むな……カチャカチャ……パチン!あ、はずれた。

「買います。」

少し気になる事もあるし、思い切って買うことにした。

「まいどありー!」

お店から出て行く僕らを満面の笑顔の店員さんが手を振って見送ってくれる。あの感じ、ボラれたかもしれない……

「ミリス、赤いラインの方あげるね。僕は青いのつけるから。王都に来た記念という事で。」

指輪を渡すとなぜか真っ赤な顔をして受け取り、しばらく眺めた後満足したのか右手の薬指につけた。つける場所によって意味があったんだっけ?まぁいいか。僕も右手薬指につけておく。

「じゃあ次はアクセサリー屋にいこうか。」

「ううん、これ買ってもらっちゃったからいいわ!ありがとう、大事にするね!」

何気なくあげてしまったが、思ったより満足してくれたようだ。喜んでもらえて僕も嬉しくなったし、これからはちょくちょく何か贈り物をしてもいいかもしれないな。

その後馬車の予約や明日の用意をすませた僕らは宿に戻った。明日は港町ルプスポートへ向けて出発だ!






ステータス
名前 アルノ
種族 人間
職業 狩人
ユニークスキル 『思い出す』
        『魔法剣Lv1』

スキル     『腕力強化Lv2』
        『集中Lv2』
        『気配察知Lv1』
        『剣聖Lv1』
        『神速Lv1』
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