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98.聞いてみた
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「こんばんわ~」
その日の夕方、風呂に入りに来た村長のハサンさんを、ふじの湯の前で見つけて声をかけた。
「おお、マモル殿。きょうは何湯かの?」
「今日は『食塩泉』です」
「『ショクエンセン』?」
「ええ、簡単に言うと塩がたくさん混じっているお湯ですね」
「塩とな?!海の水と同じということかの?」
「そうですね。厳密に言うと違うんですが、そんな感じです」
現代日本における温泉の泉質については、地中から湧き出してくる温泉に、溶け込んでいる様々な物質のうち、温泉法によって定められた18種類の物質の温泉1kgあたりの溶存量により決められている。
その泉質には主に掲示用泉質名、旧泉質名、新泉質名の3種類があって、温泉の紹介等で用いられるのは基本的に新泉質名なんだけど、旧泉質名のほうが分かりやすいこともあって、実際には両方が併用されている。
俺みたいに昔からの温泉好きには、この旧温泉名の方がやっぱりしくっりくる。
(とはいえ、新旧交代がした1979年には、まだ生まれてないんだけどね。俺)
ちなみに11種類ある泉質を旧泉質名で言うと、「1.単 純 温 泉、2.単純炭酸泉、3.重炭酸土類泉、4.重曹泉、5.食 塩 泉、6.硫 酸 塩 泉、7.鉄 泉、8.緑礬泉、9.硫 黄 泉、10.酸性泉、11.放 射 能 泉」となる。
今日は、この中の食塩泉をチョイスしたんだけど・・・
「ホウ!海か・・・。若い頃に一度だけ、王都に行った時に見たが、また入ることが出来るとは。長生きをするものだの!」
「ハア・・・」
だから、違うって言っているんだけれどなあ。
「ハサンさん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
なぜかハリキリだしたハサンさんに苦笑しながら、話を続ける。
「なにかの?」
「この近くに山・・・火山てありますかね?」
「はて、旅をしてきたということは、山を越えて来られたのではないのかの?」
ハサンさんが、キョトンとした表情で聞いてくる。
「いえ、森は通って来ましたけど、山というかその・・・」
「ふむ。イーサン皇国との国境はほとんどが山脈地帯のはずだがのう・・・?」
えっ。
そうなの?
どうしよう。
「あっ!いえ、だいぶ海岸部に近い方の国境というか、あんまり山が険しくないところを越えてきたというか」
「なるほど!アッペア街道か。じゃが、あそこを通って、なぜこの村に・・・?」
良かった。
そういう街道もあるんだ。
「え?その・・だいぶ道に迷いまして・・あの、魔獣や山賊に襲われた時に必死に逃げたらいつの間にかこの近くに・・・」
「おお!それでお金を落としたと?それは大変じゃったのう」
「ええ!ほんとに。ミミちゃんに出会って良かったです」
ほっ。
なんとか納得してくれたか?
「それで、山・・火山なんですけど・・」
「おお、そうじゃった。火山のう・・・この村はノーザン王国の東寄りに位置するので、東に向かえば山脈地帯に至るが、火山はないのう。あるとすれば、南に向かってサウザン共和国との国境・・・アトラス山脈の方じゃろうな」
「南ですか・・・」
俺は、以前にポール達から聞いたこの世界の地理について思い出しながら頷いた。
「この村からだと、どれくらい離れていますかね?」
「うーむ・・・歩きで3日、馬車で1日といったところかの。もっとも、この村からは馬車は出ていないがの」
「そうなんですか?じゃあ、みんな基本徒歩でということですか」
「領都からだったら、サウザン共和国との国境の都市まで定期馬車が出ているはずだがの」
徒歩で3日か・・意外と近いような気もするが、道がそんなに良くなくて、魔獣や獣なんかの危険がある中の3日だからな。
目一杯頑張って普通は徒歩だと40kmくらいだけど、半分としてだいたい20km、3日で60km・・・いや、50kmといったところか。
近くはないな。
まあ、その前に当たるかもしれないけど・・・現状ではちょっと無理かな。
「そうですか、ありがとうございます。参考になりました」
「マモル殿。もしかしてこの村を出る気かの?」
ハサンさんが戸惑い気味に聞いてきた。
「いえ!まだそういうわけではないんですが、この国のことをよく分かっていないもので、参考までに聞いてみただけです」
「そうですかの?何か悩み事ならば、言ってくだされよ?」
「え?ええ。ありがとうございます!別に悩みっていうわけでもないので大丈夫です」
「そうかの?それならば良いがの」
俺は、ハサンさんに頭を下げてその場を離れた。
その日の夕方、風呂に入りに来た村長のハサンさんを、ふじの湯の前で見つけて声をかけた。
「おお、マモル殿。きょうは何湯かの?」
「今日は『食塩泉』です」
「『ショクエンセン』?」
「ええ、簡単に言うと塩がたくさん混じっているお湯ですね」
「塩とな?!海の水と同じということかの?」
「そうですね。厳密に言うと違うんですが、そんな感じです」
現代日本における温泉の泉質については、地中から湧き出してくる温泉に、溶け込んでいる様々な物質のうち、温泉法によって定められた18種類の物質の温泉1kgあたりの溶存量により決められている。
その泉質には主に掲示用泉質名、旧泉質名、新泉質名の3種類があって、温泉の紹介等で用いられるのは基本的に新泉質名なんだけど、旧泉質名のほうが分かりやすいこともあって、実際には両方が併用されている。
俺みたいに昔からの温泉好きには、この旧温泉名の方がやっぱりしくっりくる。
(とはいえ、新旧交代がした1979年には、まだ生まれてないんだけどね。俺)
ちなみに11種類ある泉質を旧泉質名で言うと、「1.単 純 温 泉、2.単純炭酸泉、3.重炭酸土類泉、4.重曹泉、5.食 塩 泉、6.硫 酸 塩 泉、7.鉄 泉、8.緑礬泉、9.硫 黄 泉、10.酸性泉、11.放 射 能 泉」となる。
今日は、この中の食塩泉をチョイスしたんだけど・・・
「ホウ!海か・・・。若い頃に一度だけ、王都に行った時に見たが、また入ることが出来るとは。長生きをするものだの!」
「ハア・・・」
だから、違うって言っているんだけれどなあ。
「ハサンさん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
なぜかハリキリだしたハサンさんに苦笑しながら、話を続ける。
「なにかの?」
「この近くに山・・・火山てありますかね?」
「はて、旅をしてきたということは、山を越えて来られたのではないのかの?」
ハサンさんが、キョトンとした表情で聞いてくる。
「いえ、森は通って来ましたけど、山というかその・・・」
「ふむ。イーサン皇国との国境はほとんどが山脈地帯のはずだがのう・・・?」
えっ。
そうなの?
どうしよう。
「あっ!いえ、だいぶ海岸部に近い方の国境というか、あんまり山が険しくないところを越えてきたというか」
「なるほど!アッペア街道か。じゃが、あそこを通って、なぜこの村に・・・?」
良かった。
そういう街道もあるんだ。
「え?その・・だいぶ道に迷いまして・・あの、魔獣や山賊に襲われた時に必死に逃げたらいつの間にかこの近くに・・・」
「おお!それでお金を落としたと?それは大変じゃったのう」
「ええ!ほんとに。ミミちゃんに出会って良かったです」
ほっ。
なんとか納得してくれたか?
「それで、山・・火山なんですけど・・」
「おお、そうじゃった。火山のう・・・この村はノーザン王国の東寄りに位置するので、東に向かえば山脈地帯に至るが、火山はないのう。あるとすれば、南に向かってサウザン共和国との国境・・・アトラス山脈の方じゃろうな」
「南ですか・・・」
俺は、以前にポール達から聞いたこの世界の地理について思い出しながら頷いた。
「この村からだと、どれくらい離れていますかね?」
「うーむ・・・歩きで3日、馬車で1日といったところかの。もっとも、この村からは馬車は出ていないがの」
「そうなんですか?じゃあ、みんな基本徒歩でということですか」
「領都からだったら、サウザン共和国との国境の都市まで定期馬車が出ているはずだがの」
徒歩で3日か・・意外と近いような気もするが、道がそんなに良くなくて、魔獣や獣なんかの危険がある中の3日だからな。
目一杯頑張って普通は徒歩だと40kmくらいだけど、半分としてだいたい20km、3日で60km・・・いや、50kmといったところか。
近くはないな。
まあ、その前に当たるかもしれないけど・・・現状ではちょっと無理かな。
「そうですか、ありがとうございます。参考になりました」
「マモル殿。もしかしてこの村を出る気かの?」
ハサンさんが戸惑い気味に聞いてきた。
「いえ!まだそういうわけではないんですが、この国のことをよく分かっていないもので、参考までに聞いてみただけです」
「そうですかの?何か悩み事ならば、言ってくだされよ?」
「え?ええ。ありがとうございます!別に悩みっていうわけでもないので大丈夫です」
「そうかの?それならば良いがの」
俺は、ハサンさんに頭を下げてその場を離れた。
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