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93.盛況!
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「ポール!キース!」
俺は『ふじの湯』の表へ出ると、汗だくになりながらお客さんを誘導している二人に声をかけた。
ざっと見たところ、建物の外には150人は並んでいる。
しかも、『キッチンおやすみ処』の方の列が9割方だ。
「「マモルさん!!」」
二人がすがる様な目で、俺の方を振り向いてくる。
「ごめんごめん、だいぶ大変そうだな」
「タイヘンどころの騒ぎじゃないよ!」
キースが、顔を真っ赤にして叫びながら、列からはみ出そうとするお客さんを引き戻している。
「中に入っている人も含めたら、たぶん村人の3分の2くらいは来ていますよ!?」
ポールも額の汗をふきふき、奮闘している。
3分の2って・・300人以上かよ!
そりゃあ、こういう状態になるよなあ・・・。
「二人に任せっきりで悪かったな。ちょっと列を調整するから、手伝ってくれるか?」
俺は苦笑しながら、二人に頼んだ。
「「どうするんですか?」」
「そうだな・・列を3つに分けようと思う。一つは、これ以上待つよりは先に風呂の方に入っても良い人・・」
俺は、右手を挙げて親指を折った。
「次に、エールだけ飲みに来た人・・」
人差し指を折る。
「三つ目が、どうしても『キッチンおやすみ処』の中で食事もしたい人。この3種類の列に分けようと思う。・・まあ、最初の人たちはそっちの風呂の列に移ってもらうだけだけどな」
中指を折って、俺は言った。
「分かった!でも・・」
「エールだけ飲みたい人って、そんなにいるのかな?それに、それじゃあ列が増えて長さがちょっと短くなるだけで、ここに人が溢れるのは変わらない様な・・・」
二人は納得半分、疑問半分といったところの様子だ。
「たぶん俺の予想では、2番目のエールだけ飲みたい人が半分はいると思っているんだけどな」
「「そうかなあ・・」」
「まあいいさ、やってみれば判るよ」
「「はーい」」
二人は首を傾げながらも、並んでいる村人達に声をかけるべく走り出していった。
俺もこうしちゃいられないな。
「えーみなさん!大変お待たせしまして申し訳ございません!少しでも待ち時間を短縮するために、ちょっと列の整理をしますので、ご協力をお願いします!」
俺は目の前の人たちに向かって、声を張り上げる。
「なんだなんだ?」
「どうでもいいけど、早くなるなら何とかしてくれや!」
「お兄さんも大変ねえ」
すると、待っていた人たちが一斉に俺の方を注目する。
「ええとですね。お席の方にも限りがありますのでもう少しお時間がかかると思います。ですので、もしよろしければなのですが、お風呂の方に先に入っても良いという方がおられましたら、そちらの列に移動していただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ?!そうなのかい?じゃあしょうがないわねえ・・」
「にいちゃんも、こんなになるとは思ってなかったから困ってんだろ?よし分かった。そっちへ並んでやる!」
俺の説明に、30人ほどが移ってくれる。
「ありがとうございます!」
俺はそんなお客さん達に頭を下げる。
「次に、食事はともかくエールだけでも良いから飲みたいという方はいらっしゃいますか?」
顔を上げた俺は、右手を上げて残った人たちに大声で聞いてみる。
「ナニ?!エールだと?もちろんエールが飲みたいんだ!あのキンキンに冷えた奴がな!!」
「ハイハイハイハイ!!俺もエールが目当てだ!早く飲ませてくれ!」
「うーん。我慢できないわ!もうこうなったらエールだけでも早くお願い!!」
次々に手が上がり、ゾロゾロと列が分かれていく。
しばらくすると、だいたい70人くらいがエールのみの列に移動した。
「よし、こんな感じかな?だいたい予想通りだな。ポール、キース!ちょっと戻ってきてくれ」
俺は、三つに分かれた列を整理していた二人に声をかける。
「「呼んだ?」」
「ああ。ここはだいたい良いから、中に戻ってエールをどんどん持ってきてもらってくれないか?」
「僕たちが?」
「いいの?ここをはなれて」
「ああ、大丈夫だ。それよりも、大至急エールを頼む!あの列を早いとこ減らさなきゃならないからな」
「「わかった!」」
二人はうなずくと、建物の中へ駆け込んでいった。
「これでなんとかこの場は凌げるだろう・・・」
俺は『ふじの湯』の表へ出ると、汗だくになりながらお客さんを誘導している二人に声をかけた。
ざっと見たところ、建物の外には150人は並んでいる。
しかも、『キッチンおやすみ処』の方の列が9割方だ。
「「マモルさん!!」」
二人がすがる様な目で、俺の方を振り向いてくる。
「ごめんごめん、だいぶ大変そうだな」
「タイヘンどころの騒ぎじゃないよ!」
キースが、顔を真っ赤にして叫びながら、列からはみ出そうとするお客さんを引き戻している。
「中に入っている人も含めたら、たぶん村人の3分の2くらいは来ていますよ!?」
ポールも額の汗をふきふき、奮闘している。
3分の2って・・300人以上かよ!
そりゃあ、こういう状態になるよなあ・・・。
「二人に任せっきりで悪かったな。ちょっと列を調整するから、手伝ってくれるか?」
俺は苦笑しながら、二人に頼んだ。
「「どうするんですか?」」
「そうだな・・列を3つに分けようと思う。一つは、これ以上待つよりは先に風呂の方に入っても良い人・・」
俺は、右手を挙げて親指を折った。
「次に、エールだけ飲みに来た人・・」
人差し指を折る。
「三つ目が、どうしても『キッチンおやすみ処』の中で食事もしたい人。この3種類の列に分けようと思う。・・まあ、最初の人たちはそっちの風呂の列に移ってもらうだけだけどな」
中指を折って、俺は言った。
「分かった!でも・・」
「エールだけ飲みたい人って、そんなにいるのかな?それに、それじゃあ列が増えて長さがちょっと短くなるだけで、ここに人が溢れるのは変わらない様な・・・」
二人は納得半分、疑問半分といったところの様子だ。
「たぶん俺の予想では、2番目のエールだけ飲みたい人が半分はいると思っているんだけどな」
「「そうかなあ・・」」
「まあいいさ、やってみれば判るよ」
「「はーい」」
二人は首を傾げながらも、並んでいる村人達に声をかけるべく走り出していった。
俺もこうしちゃいられないな。
「えーみなさん!大変お待たせしまして申し訳ございません!少しでも待ち時間を短縮するために、ちょっと列の整理をしますので、ご協力をお願いします!」
俺は目の前の人たちに向かって、声を張り上げる。
「なんだなんだ?」
「どうでもいいけど、早くなるなら何とかしてくれや!」
「お兄さんも大変ねえ」
すると、待っていた人たちが一斉に俺の方を注目する。
「ええとですね。お席の方にも限りがありますのでもう少しお時間がかかると思います。ですので、もしよろしければなのですが、お風呂の方に先に入っても良いという方がおられましたら、そちらの列に移動していただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ?!そうなのかい?じゃあしょうがないわねえ・・」
「にいちゃんも、こんなになるとは思ってなかったから困ってんだろ?よし分かった。そっちへ並んでやる!」
俺の説明に、30人ほどが移ってくれる。
「ありがとうございます!」
俺はそんなお客さん達に頭を下げる。
「次に、食事はともかくエールだけでも良いから飲みたいという方はいらっしゃいますか?」
顔を上げた俺は、右手を上げて残った人たちに大声で聞いてみる。
「ナニ?!エールだと?もちろんエールが飲みたいんだ!あのキンキンに冷えた奴がな!!」
「ハイハイハイハイ!!俺もエールが目当てだ!早く飲ませてくれ!」
「うーん。我慢できないわ!もうこうなったらエールだけでも早くお願い!!」
次々に手が上がり、ゾロゾロと列が分かれていく。
しばらくすると、だいたい70人くらいがエールのみの列に移動した。
「よし、こんな感じかな?だいたい予想通りだな。ポール、キース!ちょっと戻ってきてくれ」
俺は、三つに分かれた列を整理していた二人に声をかける。
「「呼んだ?」」
「ああ。ここはだいたい良いから、中に戻ってエールをどんどん持ってきてもらってくれないか?」
「僕たちが?」
「いいの?ここをはなれて」
「ああ、大丈夫だ。それよりも、大至急エールを頼む!あの列を早いとこ減らさなきゃならないからな」
「「わかった!」」
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「これでなんとかこの場は凌げるだろう・・・」
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