開湯!異世界温泉『ふじの湯』 もらったスキルは『温泉』だった??!

西八萩 鐸磨

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72.あれも食べたい!

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「これはこれで、旨いんだけれどな・・」

俺は、テーブルの上に並べられた、肉を焼いて塩と香草で味付けされている料理と、野菜の煮込み料理を見ながらつぶやいた。

「うん、美味しいよ!このお料理」

向かいの席では手と口の周りを、肉の脂でテカテカにしたミミが、満面の笑みで座っている。

俺たちは今、ミミにおねだりされて、昼食を『シンちゃん食堂』でとっているところだ。

ちなみにタロは、店のおばさんにパンを浸したミルクを貰って満足していたのだった。

注文した料理は、この間来た時とは肉の種類が違ったが、基本的に調理法や味付けは同じだった。

この店でも権利料を払ったらしく、ピザがメニューに並んでいたが、値段はうちの1.5倍ほどと高く、他の客が頼んでいたのを見ても、微妙にいまいちな見た目だった(味は食べてないから分からないが・・)。

「やっぱり、ひと味物足りないんだよなあ・・」

「そうかな」

「それにパンばっかりというのもな」

「パン美味しいじゃん!」

「まあな。でも、コメも食べたいし・・麺類も久しく食べてないなあ・・・ああ・・うどんに蕎麦、ラーメン、パスタ・・・パスタ!!?」

「マモルお兄さん、なに独りでぶつぶつ言っているの?」

そうだ!

パスタだよ!

材料はあるじゃないか!

でも作れるかな?

「よし、ネイサンに聞いてみよう!」

独りで興奮する俺を、ミミはポカ~ンとして見つめていた。

「ミミ、行くぞ!」

「ほよ?」

キョトンとするミミにお構いなしに席を立つと、足元で丸まっていたタロと彼女を連れて『ふじの湯』へ急いだ。



「ネイサン!」

『ふじの湯』に着くと、真っ先に『おやすみ処』へ向かい、ピザの仕込みをしていたネイサンに声をかけた。

「あれ?マモルさん随分早いお帰りで」

ポールが振り向いて言ってきた。

「ミミちゃんもいるじゃん」

キースが笑って言った。

リンはさっそくタロとじゃれあっている。

「どうしたんです?そんなに慌てて」

ネイサンが、チーズを刻みながら聞いてきた。

「パスタを作ろうと思ってさ」

「「「「「パスタ?」」」」」

5人が一斉に、顔にクエッションマークを浮かべる。

「ああ!」

「それって食べ物?」

リンが、首をかしげる。

「ああ」

「今から?」

ポールが、眼鏡を指で押し上げる。

「ああ」

「うまいのか?」

キースが、目を輝かせる。

「ああ」

「俺に作れと?」

ネイサンが、驚き半分、やる気半分の顔を向ける。

「ああ」

「わくわく」

ミミが、握りこぶしを小さな両手で作っている。

「ふりふり」

タロが、しっぽを振っている。



「じゃあ、説明するぞ」

そんな5人と1匹を見回して、俺は言った。





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