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70.泣く子に勝てず

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「おはようございまーす」

俺は、冒険者ギルドを後にすると、村長の家を訪ねた.

「ハーイ!」

家の奥から『タタタタタ』と、駆け寄ってくる足音がして、扉が開いた。

「あ、マモルお兄さん!」

ミミが顔を出した。

「やあ、おはよう!」

「おや、マモル殿。朝からどうしたかの?」

ミミの後ろから、ハサンさんが出てきた。
「ちょっと、ご相談がありまして」

「相談?また何か問題でも起きたのかの?」

って・・。

「ま、そんなところではなんじゃて、お入んなさい」

「ありがとうございます」

「はやく、はやく!」

ミミに手を引かれて、中に入った。


「で、相談というのは何かの?」

リビングのテーブルにつくと、ハサンさんが聞いてくる。

「ええ、それが・・「あれっ!マモルお兄さん、これなあに?」」

俺が答えようとするのを、ミミが横から割り込んで、足元に置いた篭バックにとりついた。

「キャン」

すると、それに呼応する様に、中から鳴き声がした。

「オヨ?!」

ミミが、目を丸くして篭バックを見つめる。

「キャンキャン!」

「その中に、何かおるのかの?」

「えー!何がいるの?」

途端に、ミミが目を輝かせる。

「ええ、じつはこいつのことでご相談がありまして」

そう言って、俺は篭バックをテーブルの上に上げて、蓋を開けた。

「わー!わんこだーー!」

俺の身体をよじ登って、覗き込んだミミが叫ぶ。

「あら」

「おや」

お茶を用意して持ってきたミーナさんとハンナさんが、驚きの声を上げる。

「マモル殿、これは?」

「昨夜、帰り道で出会いまして、ついてこられちゃったんですよね」

俺は苦笑しつつ、仔犬の頭を撫でる。

「ミミも撫でていい?」

ミミが、俺とミーナさんの顔を交互に見て聞いてくる。

俺は笑ってうなずき、ミーナさんも微笑いながらミミと一緒に仔犬の頭を撫でる。

「商業ギルドと冒険者ギルドをまわって、飼い主を探したんですけど、見つからなかったんですよ」

「それで、ワシに心当たりがないか聞きに来たというわけか・・」

「ええ」

ハサンさんが、腕を組んで首を捻る。

「犬を飼っている家というのは、そう多くは無いんじゃが・・」

「やっぱりそうですか・・ギルドに登録されている以外はありませんかね?」

「そうじゃな・・」

「じゃあ、こいつの飼い主はいないということですね」

「ああ」

「こういう場合は、どうすればいいんですかね?」

「放せば、野生化していずれは魔獣化するかもしれんしな」

「ということは・・?」

「飼い主がいないのであれば、処分するしか・・」

「ダメ!」

ミミが、目に涙を溜めて、仔犬を抱きしめる。

「ミミ!」

ミーナさんが、そんなミミに声をあげる。

「フム」

それを見たハサンさんが、眉毛を下げる。

「うちで飼う!」

「それは出来んのう・・」

「なんで?!」

「なんでと言われてもの・・村長たる者、そのような獣を飼う訳にはいかんのじゃ・・」

「イヤ!わんこをいじめちゃイヤッ!」

ミミが涙を溢れさせて、なおさらすがり付く。

「うちで飼います」

俺は、見かねて言ってしまった。

「ほんと?」

ミミが、目を真っ赤にして俺を見る。

「ああ」

「やったー!!」

「マモル殿、良いのかの?それなりに責任重大ですぞ」

「ええ、分かってます」

「そうか・・では、これから商業ギルドに登録に行ってもらえるかの?」

「はい」

それから、俺は言われた通りギルドに行って登録したのだが、その後が大変だった。

ミミが、今晩は一緒に寝ると言って聞かなかったのだ。

やれやれ、である・・。

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