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59.武器屋 杖と弓
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「次は・・」
「私でお願いします」
ポールが進み出る。
「お前さんは、杖だったかな?」
「はい!」
「杖の在庫はなあ・・あったかな?」
「ええー!」
店の隅の方をゴソゴソしている店主の独り言に、ポールが声を上げる。
「おおー、あったあった!」
店主が、何やらやたらとクネクネしている古ぼけた杖を手に戻ってくる。
「杖の在庫はこれだけだな。いつ仕入れたのかも分からん売れ残りだし、安くしとくよ」
「売れ残りって・・・」
ポールが嫌そうに顔をしかめながら、杖を受け取る。
するとその瞬間、杖がボワッと光り、すぐに元に戻った。
「「えっ?!」」
受け取った本人のポールと、それを見ていたリンが驚きの声を上げる。
「どうした?」
リンの弓を探すために、後ろを向いていた店主が振り向いて聞いてくる。
「いま、杖がボワッと・・」
「ぼわ?なんだそれは」
ポールの言葉にうんうんと頷くリン、その二人の様子に、店主が首をかしげる。
「なんか、掴んだ瞬間に杖が光ったんです」
「光った?その杖に、そんな力があったかな?」
「リンも持って見て」
ポールが、リンに杖を手渡す。
しかし、杖はなんの変化も無かった。
「「あれ?」」
「光らんようだな・・」
「ですね」
3人で首をひねる。
「まあ、それは追々確かめて見てくれ。もしかすると、掘り出し物かもしれんぞ」
「はあ・・」
「それから最後は、嬢ちゃんの弓だな。ほれ」
杖を見つめてポーッとしているポールを放って置いて、店主はリンに奥から出してきた弓を手渡した。
「きれい・・」
弓を手にしたリンは、それを見つめて感嘆の声を漏らす。
「その弓はな、北島のエルフが使っていた物らしい。知っての通り、ノーザン王国にはエルフが少ない。だから、エルフの弓なんて、滅多なことでは流通していない。だが、北島はエルフ族の国があると言われている。それは、偶然巡り巡って、ウチが仕入れた物だ」
「そんな貴重な物を、ボクが貰ってもいいんですか?」
リンが目を見開いて聞き返した。
「ああ、実はそれも長いこと買い手がなくてな。どうやら、人族にはその弓は扱いが難しいらしい。だが、なんとなく嬢ちゃんなら使いこなせるような気がしてな」
そう言って、店主が柔和な顔で笑った。
「試し撃ちしてもいい?」
「ああ。店の裏に的があるからやってみるといい」
「ありがとう!」
自分の武器を振り回して満足したネイサンとキース、ようやく我に返ったポールら3人も一緒に、店の裏手にまわる。
「試し撃ち用の矢を貸してやろう」
店主が、矢を3本ほど渡してくれる。
リンは頷いて受け取ると、弓につがえる。
『ヒュッ』
いつもの様に、的を狙って矢を放った。
しかし、矢は的から1mも外れて飛んで行ってしまった。
「普通に撃っても駄目らしいぞ。確か、当たるところを頭に描いて魔力を込めるらしい」
店主が助言をしてくれる。
リンはまた頷いて、矢をつがえ的を狙う。
『ヒュン』
「「「惜しい!」」」
他の3人が声を上げる。
今度は、的には当たったが、中心からは10cmほどズレていた。
「しっかり頭に描かんと駄目だぞ!」
店主の言葉に、リンがうなずく。
最後の矢を的へ向けた。
『シュッ』
今までで、最もスピードに乗った矢が飛んで行った。
「「「当たった!」」」
3人が飛び上がって、お互いにハイタッチを交わす。
「おお!よくやった!やはり思った通り、嬢ちゃんは使いこなせたな」
「頭の中に絵を描いたら、うまくいきました!」
「ほう!絵をねえ・・・」
「はい!」
リンは嬉しそうに目を輝かせ、エルフの弓を胸に抱き寄せた。
「私でお願いします」
ポールが進み出る。
「お前さんは、杖だったかな?」
「はい!」
「杖の在庫はなあ・・あったかな?」
「ええー!」
店の隅の方をゴソゴソしている店主の独り言に、ポールが声を上げる。
「おおー、あったあった!」
店主が、何やらやたらとクネクネしている古ぼけた杖を手に戻ってくる。
「杖の在庫はこれだけだな。いつ仕入れたのかも分からん売れ残りだし、安くしとくよ」
「売れ残りって・・・」
ポールが嫌そうに顔をしかめながら、杖を受け取る。
するとその瞬間、杖がボワッと光り、すぐに元に戻った。
「「えっ?!」」
受け取った本人のポールと、それを見ていたリンが驚きの声を上げる。
「どうした?」
リンの弓を探すために、後ろを向いていた店主が振り向いて聞いてくる。
「いま、杖がボワッと・・」
「ぼわ?なんだそれは」
ポールの言葉にうんうんと頷くリン、その二人の様子に、店主が首をかしげる。
「なんか、掴んだ瞬間に杖が光ったんです」
「光った?その杖に、そんな力があったかな?」
「リンも持って見て」
ポールが、リンに杖を手渡す。
しかし、杖はなんの変化も無かった。
「「あれ?」」
「光らんようだな・・」
「ですね」
3人で首をひねる。
「まあ、それは追々確かめて見てくれ。もしかすると、掘り出し物かもしれんぞ」
「はあ・・」
「それから最後は、嬢ちゃんの弓だな。ほれ」
杖を見つめてポーッとしているポールを放って置いて、店主はリンに奥から出してきた弓を手渡した。
「きれい・・」
弓を手にしたリンは、それを見つめて感嘆の声を漏らす。
「その弓はな、北島のエルフが使っていた物らしい。知っての通り、ノーザン王国にはエルフが少ない。だから、エルフの弓なんて、滅多なことでは流通していない。だが、北島はエルフ族の国があると言われている。それは、偶然巡り巡って、ウチが仕入れた物だ」
「そんな貴重な物を、ボクが貰ってもいいんですか?」
リンが目を見開いて聞き返した。
「ああ、実はそれも長いこと買い手がなくてな。どうやら、人族にはその弓は扱いが難しいらしい。だが、なんとなく嬢ちゃんなら使いこなせるような気がしてな」
そう言って、店主が柔和な顔で笑った。
「試し撃ちしてもいい?」
「ああ。店の裏に的があるからやってみるといい」
「ありがとう!」
自分の武器を振り回して満足したネイサンとキース、ようやく我に返ったポールら3人も一緒に、店の裏手にまわる。
「試し撃ち用の矢を貸してやろう」
店主が、矢を3本ほど渡してくれる。
リンは頷いて受け取ると、弓につがえる。
『ヒュッ』
いつもの様に、的を狙って矢を放った。
しかし、矢は的から1mも外れて飛んで行ってしまった。
「普通に撃っても駄目らしいぞ。確か、当たるところを頭に描いて魔力を込めるらしい」
店主が助言をしてくれる。
リンはまた頷いて、矢をつがえ的を狙う。
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「「「惜しい!」」」
他の3人が声を上げる。
今度は、的には当たったが、中心からは10cmほどズレていた。
「しっかり頭に描かんと駄目だぞ!」
店主の言葉に、リンがうなずく。
最後の矢を的へ向けた。
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「「「当たった!」」」
3人が飛び上がって、お互いにハイタッチを交わす。
「おお!よくやった!やはり思った通り、嬢ちゃんは使いこなせたな」
「頭の中に絵を描いたら、うまくいきました!」
「ほう!絵をねえ・・・」
「はい!」
リンは嬉しそうに目を輝かせ、エルフの弓を胸に抱き寄せた。
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