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58.武器屋 剣とダガー
しおりを挟む「ど、どうも」
ネイサンは、差し出された剣を受け取った。
「あれ?これって・・新品じゃ無い?」
横から、興味深げに覗き込んでいたリンがつぶやいた。
「え?そういえば、結構細かい傷があるな。オヤジさん、どうして中古なんかをよこすんだ?」
「理由はいくつかある。まず、お前さんたちは冒険者になったばかりだ」
店主は、かけていた鼻メガネの奥から、ネイサンを見上げて言った。
「ということは、最初からバンバン稼げると思うな。いま、懐具合に余裕があるからと言って、ここで使い切ってしまっては、後々立ちいかなくなってしまうぞ」
「どうしてですか?」
ポールが尋ねる。
「初心者というのは、技量が未熟だから武器をすぐに痛めてしまう。そうすると、メンテナンス代が必要になるだろう?メンテナンスを十分にしていない武器を持って、次のクエストに行けると思うか?そんなことをしたら、あっという間に命を落としてしまうぞ。だから、その分の金はとっておく方がいいだろう」
「・・たしかに」
ネイサンは少々不満げではあったが、うなずく。
「それに武器というのはな、新品だからっていいってもんじゃない。十分に実戦を積んだ武器は、こなれていて使い勝手がいい。そして、今も現役で使えるということは、耐久性も保証済みということだ」
「おっしゃっていることは、理にかなっていますね」
ポールが、メガネを指先で押し上げてうなずく。
「もちろん、メンテナンスは完璧だ。中古だからって馬鹿にするもんじゃない」
「分かった。じゃあちょっと素振りをさせて見させてくれ」
ネイサンは、店主から片手剣を受け取ると、少し広くなってスペースのあるところへ移動する。
「次は誰かな?」
「オレオレ!」
キースが、手をあげて飛び跳ねる。
「お前さんは、ダガーだったな」
「そうそう!」
「・・・なら、これだな」
店主が差し出したダガーには、柄のところに緑色に光る石がはめ込まれていた。
「これってもしかして、魔石?」
またも、横から覗いたリンがつぶやく。
「そうだ、それは風の魔力が封じられた魔石がはめ込まれている。魔力を流せば、風の魔法が使えるぞ」
「こ、こんないい物、高いんじゃないのか?」
キースが、恐るおそる聞き返す。
「大丈夫だ。それは、あるBランクの冒険者が、事情があって置いていった物だが、ダガーの使い手なぞ、この村ではなかなかいなくてな、おまえさんが使ってくれるなら丁度いい。安くしとくさ」
「そうなんだ。ありがとう!」
キースはお礼を言うと、ダガーを掲げて満面の笑みで魔石を見上げていた。
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