開湯!異世界温泉『ふじの湯』 もらったスキルは『温泉』だった??!

西八萩 鐸磨

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57.忘れ物

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冒険者ギルドの前で俺と別れた、リンたち『アトラスの牙』は、ネイサンを先頭に西門へと向けて歩いていた。

「ちょっと、ちょっと!ネイサン!!」

「なんだ?ポール」

「イタっ!ちょっとネイサン、突然止まるなよ!」

「なんだじゃないですよ!このまま門の外へ出るつもりですか?!」

ポールに呼び止められて振り向いたネイサンに、ポールが言った。

その横でリンも、うなずいている。

キースは、目の前を歩いていたネイサンが唐突に立ち止まったため、その広い背中にぶつかっている。

「このまま出たらダメなのか?」

「当たり前じゃないですか!私たち、いま普段着のかっこうをしているんですよ。こんなかっこうで、門の外に行けるとでも?」

リンもコクコクと、首を縦に振っている。

「ん?た、たしかに・・」

言われたネイサンが、自分のかっこうを見直してつぶやく。

「じゃあ、いっかいウチに戻って準備してくる?」

キースが、走り出そうとする。

「それもそうなんですが。せっかくだから、マモルさんのところで稼いだお金で、装備を新調しませんか?」

「いいかも!」

「え?」

ポールの提案に、リンが顔を輝かせ、キースが急ブレーキをかける。

「いいな!よし、みんな自分たちの家にいっかい戻って、準備をしたら武器屋の前に集合だ!」

「「「おう!」」」


1時間後・・・。

「みんな揃ったな」

村に唯一の武器屋の前に、『アトラスの牙』の4人が集まっていた。

「じゃあ、入るぞ」

ネイサンはメンバーの顔を確認すると、そう言って武器屋の扉を押し開いた。

実は、彼らの今まで使っていた装備は、親や知り合いから譲られた中古と言うにも憚られるような、オンボロなものだった。

そもそも、まともに仕事で稼ぎがあったわけではない4人なので、新品の装備を買えるはずが無かったのだ。

しかし、『ふじの湯』で毎日働いていた結果、現在の懐具合は劇的に変わっている。

まー、俺が相場より少し高い労賃を払っているからというのもあるが・・。

だから、4人とも武器屋に入るのは初めてに近かった。

「「「「こんにちは~」」」」

「またお前たちか。前にも言ったろう?買わねえなら帰った、かえった!」

「今日は違わい!金ならあるんだ!」

キースが懐の銭袋を叩く。

「そうです。ちゃんと冒険者登録もしてきました!」

ポールの言葉に、ネイサンがギルドカードを取り出して、店主に見せた。

「・・ほう、『アトラスの牙』さんね。いいだろう。で、今日は何を入用だい?」

店主は4人の顔を見回して、表情を和らげる。

「えーとですね、まずネイサンが剣で、キースがダガー、それからリンが弓、私が杖です」

ポールが代表して、メンバーを指差しながら言っていく。

「ふむ。ではまず剣からだな・・・・これなんかどうだ?」

店主はうなずくと、店の奥から片手剣を取り出してきた。

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