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52.採取依頼
しおりを挟む「香りの強い葉っぱねえ・・」
ネイサンが、首をひねる。
「香りが強いというか、どちらかと言うと癖のある香りだな」
「これなんかどうですか?」
リンが、八百屋の商品棚の一つを指さす。
「あー、これもいい香りだけど違うなー」
それはシダの葉っぱの様な形をしていて、香りを嗅いでみると青のりの香りがした。
「まあ、一応買っておくか」
「じゃあ、こっちは?」
キースが別の葉っぱをつまむ。
「確かに癖は強いが、これも違うな」
一見、ホウレンソウのようなその野菜は、山椒の香りがした。
これも買っておこう。
「なかなかないですね」
ポールが、キョロキョロ見回しながらつぶやく。
「そうだなあ・・・別の店も覗いてみるか」
俺たちは会計を済ませると、ぞろぞろと移動していった。
「あれ?ここにも、葉っぱが置いてあるんだな」
俺は、とある店の前で立ち止まった。
その店は葉っぱに限らず、色々な実や根っこ、動物の骨のような物、乾燥した昆虫など、様々なものがガラスの容器に入れられて、商品棚に並んでいた。
「マモルさん、ここは薬屋ですよ」
立ち止まって、商品を見ていた俺に、ポールが声をかける。
「へーここが薬屋なんだ」
「ええ、一応ポーションの材料も揃うはずです。作れればの話ですけど」
あ~、この村には薬師はいないんだっけか?
「置いてあるのは、簡単な傷薬とか、頭痛薬とかの代りになるものがほとんどです」
「なるほどな・・あれ?」
俺はサンプル用に、容器の外に出してあった葉っぱの一つを何気に匂っていると、その中の一つに嗅ぎ覚えのある香りを見つけた。
「どうした?」
ネイサンが聞いてくる。
「これだ・・」
こんな所にあった、・・バジル。
「「え?」」
リンとポールが振り返る。
「あったの?」
キースが目を瞬かせる。
「ああ、あった。バジルがあった」
「なに言ってんだよ、それはビジルの葉だよ」
店のおばさんが、俺の言葉を訂正する。
なんでも、この葉っぱは様々な薬効がある便利な薬草らしい。
その効能はほんの僅かに身体強化の作用があって、状態異常も少しだけ回復してくれるらしい。
さらには、腹痛や吐き気、胃痙攣といった症状を鎮めてくれ、偏頭痛にも効果があるとのことだ。
一部を除き、ほぼバジルの効能と一緒だけど。
「すいません、これをあるだけ欲しいんですけど!」
俺は勢いよく、店のおばさんに言った。
「すまないねえ。その通り、今は在庫が無いんだよ」
おばさんが、容器を指さす。
言われてそのガラス容器を見ると、空っぽだった。
「うわっ!ほんとだ」
「冒険者ギルドには依頼を出してあるんだけどね、まだ入ってこないんだよ」
聞くところによると、この薬草は畑で栽培できるものではないらしく、冒険者ギルドに採取依頼を出して仕入れるのが普通らしい。
「そうなんですか、困ったな・・」
「だったら、俺たちが採ってきてやろうか?」
俺が腕を組んで考え込んでいると、ネイサンが身を乗り出して言ってきた。
「でもネイサン、これって冒険者ギルド案件だから、勝手に採取に行っちゃだめなんですよ?」
すると、ポールが注意してくる。
「そんなもん、ついでだしギルドに登録して、クエスト受注すりゃあいいだろ?」
「えっ!ま、まあ、薬草採取はEランクのクエストだから、大丈夫でしょうけど・・・」
「だろ?じゃあこれから登録に行こうぜ!」
ネイサンが、他の3人を引き連れていこうとする。
「で、でも。いま採ってきても、薬屋さんのクエストだから・・」
リンが立ち止まって、小声で言った。
「あ。そうか・・」
ネイサンも言われて立ち止まる。
「それは大丈夫です。マモルさんにクエストを発注してもらえばいいんです」
ポールが眼鏡の端を指先でくいっと上げて、どや顔をしていた。
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