開湯!異世界温泉『ふじの湯』 もらったスキルは『温泉』だった??!

西八萩 鐸磨

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34.世界の中心

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「ここに絵を?」

「ああ、全面にな」

「全面にって、こっちとあっちに2カ所ってことですか?」

リンが、目の前の壁と隣の男湯の方を指差して言った。

「そうじゃない。こっちとあっちには、仕切りが天井までつながっていないだろう?だから、壁は1面になっている」

「そう・・ですね」

「つまり、1面の壁として描いて欲しい」

「なるほど。でも、どんな絵を描けば?」

ようやく理解したらしいリンが、首を傾ける。

「それはだね、こんな感じの絵を描いて欲しいんだ」

そう言って、俺は1枚の羊皮紙を取り出した。

「・・・これって、山、ですか?」

羊皮紙に描かれた、絵を見てリンが聞いてくる。

「それと、こっちの手前のは・・湖、かな?」

「本当は海なんだけど、まあ、湖でもいいか・・」

この村は内陸にあって、ほとんどの人は海を見たことがない。

場合によっては、一生見れない人もいるらしい。

俺が見せたのは、そう、『富士山と三保の松原』の絵だ。

有名な、歌川広重の浮世絵を一生懸命に思い出して、俺が夜中までかかって描いた絵だった。

だって、銭湯といえば、富士山の絵で決まりでしょう!

だから、是非この世界初の銭湯の壁には、富士山の絵をバーンと飾りたかったんだ。

「この形の山って、アトラス山に似ていますね」

羊皮紙を覗き込んだポールが、言った。

「アトラス山?」

そんなポールに、俺は聞き返した。

「ええ、この大陸、パンタゲア大陸の中央にあるアトラス山です」

「へー、そういう山があるんだ・・」

俺が感心して他の3人を見ると、キョトンとした表情をしている。

「あー多分、みんな知らないと思います。私もたまたま、前に村に寄った冒険者に絵を見せて貰いながら、話を聞いただけですから」

「なんだよ、冒険者の話なら俺も知ってるぜ。大陸の東西南北の沖にある4つの島には、世界樹と呼ばれる巨木がそびえ立っているらしいぜ」

ネイサンが、ドヤ顔で言った。

ほう~世界樹ね・・ファンタジーあるあるだな。

「ネイサン、いま沖とか島とか言ってたけど、島ってなんだか知っているんですか?」

「ああん?・・よく知らん」

「はあ・・これだから、島っていうのはさっきこの人が言った、海に浮かんでいるんですよ。海っていうのは、湖なんかよりもずっと大きなものです」

ポールが、呆れたようにネイサンを見て言った。

「まあなんだ、リンはそのアトラス山は見たことは無いかもしれんが、山なら分かるだろ?」

「はい」

「で、海は分からなくても、湖は分かるんだろ?」

「そう、ですね」

「じゃあ、その辺を思い出しながら、この絵を参考に描いてみてくれないか?」

俺はそう言って、リンの目を覗き込む。

「・・・分かりました。やってみます」

しばらく黙考したあと、リンは頷いた。
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