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6.ショック!

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「あのう・・もしかしたら治せるかもしれないです」

みんなの様子にいたたまれなくなり、俺は思わずそう言い出してしまった。

「どういうことじゃ?」

4人がいっせいに俺の方を見る中、ハサンさんが聞いてきた。

「俺、回復魔法が使えるんです。だから多分ミーナさんのこと治せるんじゃ無いかと・・」

「なんじゃと?回復魔法をじゃと!」

?」

「あらあら」

「あー!」

ハサンさん、ミーナさん、ハンナさん、ミミの4人が、四者四様の反応を示す。

「回復魔法なぞ、領都の治療士様でも使えるのは数人ーー「というのはどういう意味かしら?」」

ハサンさんの言葉を、ミーナさんが遮った。

「なんでも無いよー」

「ミミには聞いていません。マモルさんにお聞きしているんです」

ミミが、俺とミーナさんの間に入り、両手を振っているが、ミーナさんは全く取りあわない。

本当に病人なんだろうか?

ちょっとコワイ。

「森の中でミミちゃんに会った時にーー「あー!言っちゃダメー」」

ミミが俺の口を両手で塞ごうとする。



「はーい」

ミーナさんの低い声に、渋々ミミが引き下がる。

「ミミちゃんと会った時に、オオカミに襲われていたんですけど、その時にちょっと怪我をしていたんです」

俺は苦笑しながら、言った。

「なんじゃと!怪我をした!?それは聞いておらんかったぞ!」

ハサンさんが目を丸くする。

「だって・・言ったらお爺ちゃん心配するもん・・・」

「ミミ、心配するのは当たり前でしょう?」

ミーナさんが、ミミの頭を撫でる。

「言ったら、もう薬草を採りに行かせてもらえないもん・・」

「当たり前じゃ。そんな危険なことを二度とさせるわけにはいかんじゃろう」

「イヤ!薬草が無いと、お母さんが元気になれないもん」

ミミは手で目を擦りながら、首を振る。

「そう、ありがとうね。でもみんな、ミミのことが心配なのよ」

ミーナさんが、涙を優しく拭いてやりながら、ミミの目を覗き込んだ。

「でも、どこにも傷なんて無いようだけど?」

そしてミーナさんがそう言って、俺のことを見る。

「ええ、私が治しました。回復魔法で」

俺はうなずいて、そう答えた。

「そ、それは本当のことかの?」

「嘘じゃないよ、マモルおにいさんが、オオカミさんにひっ掻かれたところを、魔法で治してくれたの!」

覚悟を決めたのか、泣きやんだミミがハサンさんに言った。

「そうです。だから、ミーナさんの病気ももしかしたら治せるんじゃないかと」

今までの様子だと、そこまで重そうじゃないし、大丈夫じゃないのかな。

「治してくれるのならば、願ってもないことですじゃが・・よいのかの?」

「もちろんです!」

「すいません。娘ばかりか、私まで・・」

「いえいえ、そんな」

「「「ありがとうございます」」」

「ありがとう!マモルおにいさん!!」

大人3人が頭を下げたあと、ミミが抱きついてきた。



「ヒール!」

俺がミーナさんに向かって右手をかざすと、ミーナさんの身体が金色の光りに包まれた。

光りは一瞬で消え、元に戻る。

「何も変わらないように見えるのじゃが?」

ハサンさんが呟く。

いや、顔色が全然違う。

「・・・・大丈夫そうね」

ハンナさんが、ミーナさんのひたいに手をあてて言った。

「・・確かに。なんだか、とっても気分がいいわ!」

ミーナさんが、胸に手をあてて笑顔でそう言った。

「やったー!」

ミミが、今度はミーナさんの胸に飛び込む。

「良かった・・」

俺は、息を吐きだした。

なんとか上手くいったみたいだ。

「す、素晴らしい!」

固まっていたハサンさんが、そう言いながら俺の両手を取って、上下に勢いよく振った。



それからが、結構大変だった。

すっかり元気になったミーナさんが、ベッドから出ると、快気祝いの宴会が始まった。

宴会と言っても家族だけなのだが、それも一方的に騒いでいたのはハサンさんだけという・・・。

そこで発覚したのが、衝撃の事実だった。

なんと、ミーナさんが・・・。

「ええーー!!20才!?」

「そうだよー。お母さんは20才なの!」

ミミが、ソーセージを頬張りながら言い放った。

しかも、ミミが寝てから酔っぱらったハサンさんから聞いたところによると、ミーナさんは未亡人らしい。

「20才で未亡人・・」

夫が亡くなったのは3年前・・・って、17才?!

「わ、若!」

「なにを言うとる、結婚の適齢期は16才。ワシもあいつと一緒になったのは、ワシが17で向こうが16じゃった」

ハサンさんが、懐かしそうに目を細めた。


・・・・男の25才独身は結構問題ありってこと?

道理で、ミミにおじさん呼ばわりされた訳だ。

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