日高見の空舞う鷹と天翔る龍 異界転生編

西八萩 鐸磨

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17.最澄登場!

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 薄暗い金堂の中央で、二つの人影が相対して座っていた。

 御仏みほとけを背に入口の方を向いているのは、大国師行表。

 御仏みほとけの方へ向いて行表に対するのは、広野。

 この時、宝亀11年11月12日。

 広野は15歳になっていた。

 色白のおもては変わらず、少年と青年の狭間はざまに差し掛かろうとしていた広野は、ひときわ大きく伸びた背丈に反して、まだどこかに幼さを残していた。


「広野よ、出家以来よく修行に励んできた。」

「まだまだでございます。」

「うむ。ところで、先ごろ、最寂さいじゃく涅槃ねはんへ旅立ったのは知っておるな。」

「はい。」

「そこで、お前の得度とくど太政官だじょうかん様に奏上をした。」

「身に余る光栄、有難きことでございます。」


 広野は、深くこうべを垂れた。


「太政官様からは、『得度するものは法華経ほけきょうと、最勝王経さいしょうおうきょう暗誦あんしょうしていて、礼仏れいふつの方法を身につけ、浄行じょうぎょうを三年以上つんだものでなければならない。』とのお触れが出ている。お前は、どこまで修めたか?」

「はい、法華経一部、最勝王経一部、薬師経やくしきょう一巻、金剛般若経一巻を既に修め、今は、方広経ほうこうきょう金蔵経きんぞうきょう三宝経さんぽきょうを修めつつあります。」

「うむ。では、得度を受ける資格は十分に備わっているな。これより、得度の儀式を執り行おう。ただし、正式な度牒どちょうが与えられるのは、それらの残りを修めてのちになるであろう。」

「心得ました。」




「・・・・・俗名ぞくみょう広野、ここに戒を授け、名を最澄とする。」


 それは・・・・この世界に、のちの伝教大師、最澄が誕生した瞬間であった。



********************************


 あれから俺は、たびたび書庫に忍び込んでは、書物を読み漁っていた。

 最勝王経、薬師経、金剛般若経、方広経、金蔵経、三宝経・・・各種経典をはじめ、古事記、日本書紀まであった。

 こんなの普通は、手に入るわけ無いんだけどな。

 玉ちゃんの実家の方に、つてがあるんだろうな。


「ん?物部・・・旧事・・・紀?なんだこれ?」

 奥から3番目の棚の壁際の最下段に、かなり古びていて、ところどころ虫食いや汚れで読めない箇所がある巻物を見つけた。

 慎重に、広げてみる。


 『ズカーン!!』


「うっ。」


 『ンーーースバーン!』


「はっ!!」


 こ、これは・・・。

 古事記とも、日本書紀とも違う、天地開闢てんちかいびゃく以来の歴史・・・・。

 水戸光圀みとみつくに、あの有名な水戸の御老公から偽書と断定された、『先代旧事本紀せんだいくじほんぎ』の原本か?!


「やべえの見つけちまった・・・。」


 うちの書庫って、なんでこんなにヤバイのばっかりあるんだ?


「・・・まっ、いっか。」


 でもこう、いちいち忍び込んでは読むっていうのもめんどいなあ・・。


「そうだ!」


 あそこに行こう。


「あそこだったら妙に落ち着くし、ジャマも入らないだろう。」


 ・・でも、どうやって持って行こう?

 せっかくだから、そこそこの数を一ぺんに持って行きたいんだけど・・・。


「例えばさ、まとめて持てて、重さを感じないような・・・。」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



もうおわかりでしょう!(笑)


ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。


 ぜひ、感想をお願いしますだ~~!!



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