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13.神技 土木操作!
しおりを挟むさすがに、1200年前の海はめちゃくちゃキレイだった。
しかも空気もきれいだから、瀬戸内海に浮かぶ島々や、対岸の備前や備後の国(広島県と岡山県の県境)まで見渡せた。
素潜りをすると、目の前には色とりどりの魚や海藻がひらひらと舞っていて、まさに『鯛や平目の舞い踊り』状態だった。
さんざん泳いで身体が冷たくなってくると、今度は砂浜で瓜割りをして遊んだ。
ただ、俺には加護があるからか、ちょっと集中するだけで瓜の在りかが分かってしまい、勝負にならなかった。
どうやら、気配察知の特殊技能(スキル)を獲得したみたいだ。
さんざん遊んで、体感的に午後16時くらいになった頃、俺たちは帰ることにした。
広田川沿いに、来た道を上っていくと、朝に寄った例の村に通りかかった。
するとそこには、真新しい祠が建っていて、朝いた村人たちが集まっていた。
「真魚様、お待ちしておりました。」
「お待たせ~、すごい立派な祠が出来ましたね。」
「ええ、せっかくですから皆で頑張りました。」
やりきった感全開の村人たちの笑顔が、まぶしい。
「そうですか、じゃあ仏様を作りますねえ。」
「ここでですか?」
「うん、そうだよ。ちょっと危ないので、そこを開けてくださいね。」
祠の前にたむろしていた人たちに、声をかける。
村人たちといつものメンバーが、半信半疑~いや、疑い半分、期待半分の眼差しで俺を見つめている。
俺は、祠に向かって手をかざし、土木操作の能力(スキル)に意識を集中して昔見た菩薩像を思い浮かべる。
たしか大学の時に旅行で行った、奈良県大和郡山市の額安寺で、日本最古の虚空蔵菩薩像を見たんだ。
集中すると、不思議と冠の細部まで思い出してきた。
すると、祠の前にあった土が祠の中に集まっていき、ひとかたまりになるとモコモコとうごめきながら、人型になっていく。
人形は胡座をかいて、右手を挙げて掌を正面を向けている。
10分ほどで、頭に浮かんだ虚空蔵菩薩像が遂に出来上がった。
まだ能力の使い方に慣れていないせいか、思っていたより時間がかかった。
「出来ましたよ~。」
俺がみんなの方を見渡して、そう告げると・・・そこには、目と鼻の穴と口を同時にぽか~んと開けたまま固まっている姿があった。
やっぱり、やりすぎだったか?
「ど、どうです?なかなかなものが出来たと思いますけど?」
「はっ!い、いつの間に!!ど、どうやって?!」
「え?今の見てなかったんですか?」
「い、いえ、見ていたんですけど、真魚様が手をかざして何かまばゆい光が見えて・・・気がついたら仏様があそこに・・・。」
「お、おらも光のあとに気づいたら、こうなっていましただ。」
「オイラは土のかたまりがウニョウニョしていたのを見たよ。」
「オイラも!」
どうやらあまりの衝撃的な光景に、大人たちは途中から記憶が飛んでいるらしい。
いつものメンバーたちは、見えてたみたいだけど、むしろ面白がっている。
「それにしても、こんなたいそう立派な仏様を造っていただけるなんて、なんとお礼をして良いのやら。」
「わしらには、なにもお礼に差し上げられるようなものがありませんので・・・。」
村人たちが、嬉しさの半面とても申し訳ない表情をしてくる。
「大丈夫ですよ、別に何もいりませんから。それよりも、大切にしてくださいね。」
「そうですか・・・ありがとうございます。」
「ところで、この仏様のお名前はなんというのですか?見たこともないような神々しさで・・・。」
そりゃあ、都の方にしか無いような像だものな。
「虚空蔵菩薩さまと言います。この世の無限の広がりを表す「虚空」と、すべての人々に恵みを与える宝を持つことを表す「蔵」。尽きることのない恵みをお与えになる仏様です。」
「ああ、ありがたい。ありがたい。」
「まこと、ありがたい。」
「ありがたや、ありがたや。」
いつまでも祠と俺に手を合わせ続ける村人たちに、なんとか別れを告げて、1時間後、俺たちはようやく帰ることができた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
土木操作とは、いわゆる土魔法的なものですね。
今回も、ここまでお読みくださいましてありがとうございます。
ご感想、ドシドシ!お待ちしております!!。
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