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8.きっかけ
しおりを挟む「今日は、大麻神社に参詣したあとに、雲気神社に行くぞ。」
晦日の当日の朝、父親は一緒に行くみんなを見まわして言った。
牛車なんて良いものは持っていないわが家は、みんなでゾロゾロと歩いて神社へと向かった。
やがて小高い丘に向かってのびる参道の、鳥居をいくつかくぐり、階段を登っていくと、拝殿が見えてくる。
家族4人--じつは、俺には兄がいた。5歳年上で真彦といった。父親に似て真面目な性格の人だった。--で、並んで柏手を打つ。そして一礼。
その瞬間、脳天に雷が落ちたような衝撃を感じて、目の前が真っ白になった。
一礼したまま動けない。
「・・・お。・・ま、お。・・まお。真魚!」
遠くから自分の名前を呼ぶ声がする。
「真魚、真魚。」
「あ、兄上。」
隣りにいた兄の真彦が、俺の肩を揺さぶっている。
「どうしたんだ。大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。」
「頭を下げたまま、全然動かないからびっくりしたぞ。」
「うん、なんでもないです。ありがとうございます。」
そう言って、俺は笑みを返した。
「真魚、本当に大丈夫か?具合が悪いなら、遠慮なく言うんだぞ。」
父親が、心配そうに言ってきた。
「そうよ、我慢してはだめよ。」
玉ちゃんも言ってくる。
「はい、全然大丈夫です!あんまり一生懸命お祈りしすぎたのかもしれません。」
「はは。何をそんなにお願いしたんだ?欲張りは良くないぞ。」
どうやらなんともない様子に安心したのか、兄の真彦は、すこしからかうように言ってきた。
「べ、別に欲張ってなんかいません。」
「ははははは。」
「ふふふふふ。」
父親と玉ちゃんに、笑われてしまった。
みんなのところに戻ると、様子をずっと見ていたおせんが駆け寄ってきて、俺の体中を触りまくって、『大丈夫ですか?』を連発してきた。
心配してくれるのは嬉しいけれど、いい加減鬱陶しくなってきたので、腕をブンブン振り回して見せて、なんとか納得させてやった。
そのあと、雲気神社まで歩き、同じ様に参拝をすると、またしてもあの衝撃に見舞われた。
さすがに心配した両親は、俺を男の奴婢に背負わせて、すぐに館へと帰ったのだった。
館へ戻って、しばらく自分の部屋で横になっていた俺は、ぼーっと天井を見上げながら、さっきのことを思い返していた。
あれは何だったのだろう?
そういえば、前にも似たような経験をしたような・・・。
・・・ああ。
もうすっかり忘れかけていたが、たしか転生する時も、あたりが真っ白になったよなあ・・・。
・・・もしかして、ステータスになんか変化があったのだろうか?
ここんとこ、全然確認していなかったから、久しぶりに見てみるか。
「ステータス!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さあ、ここで問題です。
どんな風に変わったのでしょう?
・・・なんて、分かるわけないか。(笑)
今回も、お読みいただき、ありがとうございました。
ご感想お待ちしております。
今後ともよろしくお願いします。
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