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7.お願い
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ステータスを一通り見終わった俺は、なんかどっと疲れた気がして、その日はそのまま寝てしまった。
そういえば、『その他:加護による付加能力(***)』については、詳しいこと分からなかったな。
ま、その内分かるんだろう、今はとりあえずいいや。
宝亀九年、4歳になった。
あれから、自由に歩き回れるようになった俺は、館中を探検してみた。
うちの館は、結構広くて、このあたりでもそこそこの家柄であることが伺えた。
ただ、小耳にはさんだ話を総合すると、今はちょっと落ちぶれ気味で、玉ちゃんの実家の援助でなんとかやっていけてる状態みたいだ。
探検中に、書物がたくさん棚に置かれた部屋を見つけた。
結構すごいな。
讃岐は、都から結構離れているのに、意外とインテリな家系なのかな?
そうだ、ここにある書物で勉強できるように父親に頼んでみよう。
「父上、お願いがあるのですが。」
仕事を終えて帰宅した父親に切り出した。
「どうした?真魚。」
「昼間、書物がたくさんある部屋を見つけたのですが、あそこにある書物を見てもよろしいでしょうか?」
「ああ、あの部屋に入ったのか。だがお前は、まだ書き取りも始めておらぬではないか。あれらを見ても、字が読めぬであろう。・・・そうだな、まずは、せんに読み書きの基礎を教えてもらいなさい。」
「え?おせんは、読み書きができるの?」
「真魚さま、心外でございます。これでもわたくしは、阿刀氏の者でございます。読み書きぐらいはできます。」
「そうなんだ!ごめんよ、おせん。じゃあ、お願いするよ。」
「わかりました。お任せください。ビシビシ行かせていただきます!」
なんか、やたらと張りきってるなあ。まあいいか。
それにしても、今すぐにでもどんな本があるのか見てみたかったんだけどなあ。
仕方がないか・・・。
・・・でも、あとでこっそり覗いてみよう。
「ところで、真魚。つぎの晦日(その月の30日のこと)に、大麻神社と、雲気神社に参詣するぞ。」
父親が、とつぜん威厳のある声で言ってきた。
「わかりました!父上。そういえば、この近くですもんね。」
「ん?どうして近くだと知っているんだ?そもそも、なんで大麻神社や雲気神社のことを知っているんだ?まだ一度も行ったこともないだろう。」
「あ、いや。誰かが、近くに大きなお社があるって、言ってたのを聞いたことがあったような気がしたんです。」
「そうなのか?・・まあいいか。」
寺社めぐりが趣味だったから、雲気神社があの有名な金毘羅さんのことだって、知ってたなんて言えないしなあ。
そんなこんなで、次の日からおせんとのマンツーマン授業が始まった。
「さあ、真魚さま。この文字から書いてみてください。」
『以』
「”い”と読みます。この字をこう崩すと、ひらがなの”い”になります。」
「そうなんだ!わかった、書いてみるね・・・・どう?」
「す、すばらしい!なんてお上手なんでしょう!はじめから、こんなに上手に書ける人なんていませんよ!」
「そ、そうかな?」
自分でもよくわからないけど、なぜかものすごく達筆な感じで書けている。
安倍真名の時は、どんなに丁寧に書いても、ミミズがダンスを踊ってるみたいな字にしかならなかったんだけど。
「じゃあつぎは、『呂』です。”ろ”と読んで、崩すとひらがなの”ろ”になります。」
「ん。こう?」
「すごいお上手です!」
「あ、ありがとう・・・。」
こうして、当初恐れていたようなスパルタ授業にはならず、書く文字、書く文字、すべてが素晴らしい出来という、あり得ない状況が繰り返されていくのだった。
一体全体どういうことなんだろう?
その日の夜、俺が昼間書き取った書を見た父親は、最初は本当に俺が書いたかどうか疑っていたが、途中で授業を覗きに来た玉ちゃんが、確かに俺が書いたと証言をしてくれて、なんとか信じてくれたのだった。
すると信じた途端、手のひら返しでべた褒めしだし、家じゅうの者たちを集めて自慢したのだった。
ほとんどの者は、字が読めないだけどね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
というわけで、とりあえず更新です。
感想お待ちしています。
【解説】
金毘羅宮、金刀比羅宮、いわゆる「こんぴらさん」は、修験道の開祖「役小角」が開いた真言宗の松尾寺が、明治の廃仏毀釈で強制的に金刀比羅宮に改組されたとも、延喜式内神社の雲気神社のことだともいわれています。
祀られているのは、大物主神と崇徳天皇です。
大麻神社も延喜式内神社で、太玉命を祀っています。太玉命は、神別(天神)の古代氏族の忌部氏の遠祖です。
阿刀氏は、物部氏と同じ饒速日命を遠祖とする、神別(天神)の古代氏族です。
佐伯氏は、東国から連れてこられた人々で、天押日命を遠祖とする、神別(天神)の古代氏族といわれています。
そういえば、『その他:加護による付加能力(***)』については、詳しいこと分からなかったな。
ま、その内分かるんだろう、今はとりあえずいいや。
宝亀九年、4歳になった。
あれから、自由に歩き回れるようになった俺は、館中を探検してみた。
うちの館は、結構広くて、このあたりでもそこそこの家柄であることが伺えた。
ただ、小耳にはさんだ話を総合すると、今はちょっと落ちぶれ気味で、玉ちゃんの実家の援助でなんとかやっていけてる状態みたいだ。
探検中に、書物がたくさん棚に置かれた部屋を見つけた。
結構すごいな。
讃岐は、都から結構離れているのに、意外とインテリな家系なのかな?
そうだ、ここにある書物で勉強できるように父親に頼んでみよう。
「父上、お願いがあるのですが。」
仕事を終えて帰宅した父親に切り出した。
「どうした?真魚。」
「昼間、書物がたくさんある部屋を見つけたのですが、あそこにある書物を見てもよろしいでしょうか?」
「ああ、あの部屋に入ったのか。だがお前は、まだ書き取りも始めておらぬではないか。あれらを見ても、字が読めぬであろう。・・・そうだな、まずは、せんに読み書きの基礎を教えてもらいなさい。」
「え?おせんは、読み書きができるの?」
「真魚さま、心外でございます。これでもわたくしは、阿刀氏の者でございます。読み書きぐらいはできます。」
「そうなんだ!ごめんよ、おせん。じゃあ、お願いするよ。」
「わかりました。お任せください。ビシビシ行かせていただきます!」
なんか、やたらと張りきってるなあ。まあいいか。
それにしても、今すぐにでもどんな本があるのか見てみたかったんだけどなあ。
仕方がないか・・・。
・・・でも、あとでこっそり覗いてみよう。
「ところで、真魚。つぎの晦日(その月の30日のこと)に、大麻神社と、雲気神社に参詣するぞ。」
父親が、とつぜん威厳のある声で言ってきた。
「わかりました!父上。そういえば、この近くですもんね。」
「ん?どうして近くだと知っているんだ?そもそも、なんで大麻神社や雲気神社のことを知っているんだ?まだ一度も行ったこともないだろう。」
「あ、いや。誰かが、近くに大きなお社があるって、言ってたのを聞いたことがあったような気がしたんです。」
「そうなのか?・・まあいいか。」
寺社めぐりが趣味だったから、雲気神社があの有名な金毘羅さんのことだって、知ってたなんて言えないしなあ。
そんなこんなで、次の日からおせんとのマンツーマン授業が始まった。
「さあ、真魚さま。この文字から書いてみてください。」
『以』
「”い”と読みます。この字をこう崩すと、ひらがなの”い”になります。」
「そうなんだ!わかった、書いてみるね・・・・どう?」
「す、すばらしい!なんてお上手なんでしょう!はじめから、こんなに上手に書ける人なんていませんよ!」
「そ、そうかな?」
自分でもよくわからないけど、なぜかものすごく達筆な感じで書けている。
安倍真名の時は、どんなに丁寧に書いても、ミミズがダンスを踊ってるみたいな字にしかならなかったんだけど。
「じゃあつぎは、『呂』です。”ろ”と読んで、崩すとひらがなの”ろ”になります。」
「ん。こう?」
「すごいお上手です!」
「あ、ありがとう・・・。」
こうして、当初恐れていたようなスパルタ授業にはならず、書く文字、書く文字、すべてが素晴らしい出来という、あり得ない状況が繰り返されていくのだった。
一体全体どういうことなんだろう?
その日の夜、俺が昼間書き取った書を見た父親は、最初は本当に俺が書いたかどうか疑っていたが、途中で授業を覗きに来た玉ちゃんが、確かに俺が書いたと証言をしてくれて、なんとか信じてくれたのだった。
すると信じた途端、手のひら返しでべた褒めしだし、家じゅうの者たちを集めて自慢したのだった。
ほとんどの者は、字が読めないだけどね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
というわけで、とりあえず更新です。
感想お待ちしています。
【解説】
金毘羅宮、金刀比羅宮、いわゆる「こんぴらさん」は、修験道の開祖「役小角」が開いた真言宗の松尾寺が、明治の廃仏毀釈で強制的に金刀比羅宮に改組されたとも、延喜式内神社の雲気神社のことだともいわれています。
祀られているのは、大物主神と崇徳天皇です。
大麻神社も延喜式内神社で、太玉命を祀っています。太玉命は、神別(天神)の古代氏族の忌部氏の遠祖です。
阿刀氏は、物部氏と同じ饒速日命を遠祖とする、神別(天神)の古代氏族です。
佐伯氏は、東国から連れてこられた人々で、天押日命を遠祖とする、神別(天神)の古代氏族といわれています。
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