日高見の空舞う鷹と天翔る龍 異界転生編

西八萩 鐸磨

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2.神界

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 ・・・・・・・・・・・。


 ・・・・・。


 ・・。

 

「久しぶりじゃのう、遍照金剛へんじょうこんごう。」

 声をかけられて、かたくつむっていた目を薄っすらと開けると、まばゆい光を背景に、ぼんやりと人影らしきものが見えてきた。

「だ、誰ですか?」

 目の前には、白絹のように光沢のある着物をまとった白髪、白髭の爺さんが立っていた。

「1091年ぶりじゃからな、忘れてしまったかな?遍照金剛ーーーいや、空海くうかい。」

「え?」

 いまなんて言った??は?なんで?

「あの、人違いじゃ?」

「い~や、人違いではない。わしが間違えるわけなかろう。お主は、遍照金剛 弘法大師こうぼうだいし 空海じゃ。」

 いやいやいや、この爺さんボケてるのか?この俺がなんで、空海なんだよ。弘法大師?ありえねえ。

「わたしの名前は、安倍真名あべまなと言いまして、しがない会社員なんですが?」

「ほっ、ほっ、ほっ、ほ。ああ、今世こんせではそんな名じゃったな。まあ良い、とりあえずこれからのことを話そう。」

 良くない、良くない。なに勝手に話を進めているんだよ!だいたい、ここはどこなんだよ?

「あのー。おじいさん?長老?先輩?ここ、どこですか?」

「ん?おお、わしのことは天之御中主あめのみなかぬし、『あめみな』と呼んで良いぞ。ここはな、高天原たかまがはらの最上階。いわゆる神界じゃな。」

「なんですかそのアイドルの名前を縮めて呼ぶみたいなノリは。『いわゆる神界』って、どうゆうことですか!たしか俺は、神護寺の清麻呂の墓の前に居たはず・・・。」

「わしが呼んだんじゃよ。」

「『呼んだんじゃよ』じゃないですよ!さっぱり訳がわからない。ちゃんと説明してください。だいたい、天之御中主って言ったら、天地開闢てんちかいびゃくの時の造化三神ぞうかさんしん一柱ひとはしらじゃないですか。」

「ちょっと、頼みごとがあってな。」

「頼みごとーーー?あの、その造化三神の神様が実在するとか、しないとかいうことは、この際とりあえず置いておきますけど、このしがないサラリーマンに、いったい何を頼むっていうんですか?」

 その目の前の神様---天之御中主神---は、俺の勢いに少しも動じる素振りも見せずに、ニコニコと微笑いながら、話を続けた。


「じつはな、10個予備で創った内の10番目の地球でな、お前さんが出現しないことが分かってな、これはまずいな、ということになったんじゃよ。」

「は?地球に10個予備があるというのも置いておいて・・・俺(安倍真名)が出現しようが、しまいが、地球の歴史になんの問題も無いんじゃないですか?」

「いやいや、お前さん(安倍真名)ではなくて、弘法大師 空海が出現しないとまずいんじゃよ。」

「あの、さっきから微妙に話が噛み合わないんですけど、・・・もしかして、輪廻転生りんねてんしょうとか、あれですか?」

「すこし違うが、まあそんなもんじゃ。お前さんはこの地球では、前世は空海じゃった。いちおう、高野山こうやさんでは入定にゅうじょう後も、禅定ぜんじょうし続けて、復活の時を待っていると言われているが、そもそも器はともかく、御魂みたまは、分けた物じゃからな。」

「分けた?・・・よくわかりませんが、要するにその予備10の地球で、この俺にもう一回空海をやれと、こういうわけですか?」

「そうじゃ、そうじゃ、よく分かっておるではないか。」

「いや、分かってませんよ。一つ質問なんですが、予備を同時に創ったんなら、そっちの地球でも千年経過しているんじゃないんですか?」

「それはじゃな、100年くらいずつずらして創ったから、ちょうど向こうでは奈良時代が終わりそうな頃なんじゃよ。」

「・・・・そうですか。でもあれですよ、俺、親が密教そっち系の専門だからって、詳しいことはよくわかりませんよ?般若心経はんにゃしんきょうぐらいは唱えられますけど。」

「大丈夫じゃ、御魂が憶えておる。それに加護もあるしの。」

?まさかこれって、そういう系の本はあんまり読まないんで、ゲームとかもしなし、わからないんですけど、向こうの地球せかいって、よくある転生ものと同じで、加護とか、魔法とかあっちゃったりするわけですか?」

「魔法は無いが、似たようなものはあるな。行けば分かる。では、そろそろ時間じゃ。よろしく頼むぞ。」

 また、目の前の空間が歪み始め、まばゆい光に包まれていく。

「ちょ、ちょっと待って下さい。そもそも俺は、行くなんてひとことも言っていないんですけど!こっちの世界はどうなっちゃうんですか!家族は?」

 どんどんあたりは白くなっていく。

「器は残る。問題はない!----あぁ、そう言えば言い忘れていたが、転生と同じじゃから向こうでは赤ん坊じゃからな!よろしくな!!」

「えぇ~~ーーー・・・・・・・。」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

転生ものって、こんな感じでしたっけ?

とりあえず、続けます。

よろしくお願いします。
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