2 / 35
2.神界
しおりを挟む・・・・・・・・・・・。
・・・・・。
・・。
「久しぶりじゃのう、遍照金剛。」
声をかけられて、かたくつむっていた目を薄っすらと開けると、まばゆい光を背景に、ぼんやりと人影らしきものが見えてきた。
「だ、誰ですか?」
目の前には、白絹のように光沢のある着物をまとった白髪、白髭の爺さんが立っていた。
「1091年ぶりじゃからな、忘れてしまったかな?遍照金剛ーーーいや、空海。」
「え?」
いまなんて言った?空海?は?なんで?
「あの、人違いじゃ?」
「い~や、人違いではない。わしが間違えるわけなかろう。お主は、遍照金剛 弘法大師 空海じゃ。」
いやいやいや、この爺さんボケてるのか?この俺がなんで、空海なんだよ。弘法大師?ありえねえ。
「わたしの名前は、安倍真名と言いまして、しがない会社員なんですが?」
「ほっ、ほっ、ほっ、ほ。ああ、今世ではそんな名じゃったな。まあ良い、とりあえずこれからのことを話そう。」
良くない、良くない。なに勝手に話を進めているんだよ!だいたい、ここはどこなんだよ?
「あのー。おじいさん?長老?先輩?ここ、どこですか?」
「ん?おお、わしのことは天之御中主、『あめみな』と呼んで良いぞ。ここはな、高天原の最上階。いわゆる神界じゃな。」
「なんですかそのアイドルの名前を縮めて呼ぶみたいなノリは。『いわゆる神界』って、どうゆうことですか!たしか俺は、神護寺の清麻呂の墓の前に居たはず・・・。」
「わしが呼んだんじゃよ。」
「『呼んだんじゃよ』じゃないですよ!さっぱり訳がわからない。ちゃんと説明してください。だいたい、天之御中主って言ったら、天地開闢の時の造化三神の一柱じゃないですか。」
「ちょっと、頼みごとがあってな。」
「頼みごとーーー?あの、その造化三神の神様が実在するとか、しないとかいうことは、この際とりあえず置いておきますけど、このしがないサラリーマンに、いったい何を頼むっていうんですか?」
その目の前の神様---天之御中主神---は、俺の勢いに少しも動じる素振りも見せずに、ニコニコと微笑いながら、話を続けた。
「じつはな、10個予備で創った内の10番目の地球でな、お前さんが出現しないことが分かってな、これはまずいな、ということになったんじゃよ。」
「は?地球に10個予備があるというのも置いておいて・・・俺(安倍真名)が出現しようが、しまいが、地球の歴史になんの問題も無いんじゃないですか?」
「いやいや、お前さん(安倍真名)ではなくて、弘法大師 空海が出現しないとまずいんじゃよ。」
「あの、さっきから微妙に話が噛み合わないんですけど、・・・もしかして、輪廻転生とか、あれですか?」
「すこし違うが、まあそんなもんじゃ。お前さんはこの地球では、前世は空海じゃった。いちおう、高野山では入定後も、禅定し続けて、復活の時を待っていると言われているが、そもそも器はともかく、御魂は、分けた物じゃからな。」
「分けた?・・・よくわかりませんが、要するにその予備10の地球で、この俺にもう一回空海をやれと、こういうわけですか?」
「そうじゃ、そうじゃ、よく分かっておるではないか。」
「いや、分かってませんよ。一つ質問なんですが、予備を同時に創ったんなら、そっちの地球でも千年経過しているんじゃないんですか?」
「それはじゃな、100年くらいずつずらして創ったから、ちょうど向こうでは奈良時代が終わりそうな頃なんじゃよ。」
「・・・・そうですか。でもあれですよ、俺、親が密教系の専門だからって、詳しいことはよくわかりませんよ?般若心経ぐらいは唱えられますけど。」
「大丈夫じゃ、御魂が憶えておる。それに加護もあるしの。」
「加護?まさかこれって、そういう系の本はあんまり読まないんで、ゲームとかもしなし、わからないんですけど、向こうの地球って、よくある転生ものと同じで、加護とか、魔法とかあっちゃったりするわけですか?」
「魔法は無いが、似たようなものはあるな。行けば分かる。では、そろそろ時間じゃ。よろしく頼むぞ。」
また、目の前の空間が歪み始め、まばゆい光に包まれていく。
「ちょ、ちょっと待って下さい。そもそも俺は、行くなんてひとことも言っていないんですけど!こっちの世界はどうなっちゃうんですか!家族は?」
どんどんあたりは白くなっていく。
「器は残る。問題はない!----あぁ、そう言えば言い忘れていたが、転生と同じじゃから向こうでは赤ん坊じゃからな!よろしくな!!」
「えぇ~~ーーー・・・・・・・。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
転生ものって、こんな感じでしたっけ?
とりあえず、続けます。
よろしくお願いします。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。


Link's
黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。
人類に仇なす不死の生物、"魔属”
そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者”
人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている――
アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。
ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。
やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に――
猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!
転生少女、運の良さだけで生き抜きます!
足助右禄
ファンタジー
【9月10日を持ちまして完結致しました。特別編執筆中です】
ある日、災害に巻き込まれて命を落とした少女ミナは異世界の女神に出会い、転生をさせてもらう事になった。
女神はミナの体を創造して問う。
「要望はありますか?」
ミナは「運だけ良くしてほしい」と望んだ。
迂闊で残念な少女ミナが剣と魔法のファンタジー世界で様々な人に出会い、成長していく物語。

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。
なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。
王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる